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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
少女達の輪舞曲《ロンド》
21/209

追放された竜

「うわ~、大きいと思ってたけど近くで見るとさらに大きいね」


私は近くで見るドラゴンに思わず感嘆する。


「【古代竜(エンシェントドラゴン)】は若くても20メートル近くあるからね、

 1000年以上生きた個体ならその数倍は成長するって話だよ」


数倍って、規模が大きすぎて想像が出来ない。

改めて私達こんな巨大な生物と戦ってたんだよね、怪獣映画もビックリだよ。


「しかし見事に気絶してるわね、これ本当にまた暴れたりしないのかしら」


フィルがドラゴンの体を触りながら呟く。


「だいじょぶだよ~、フィルお姉ちゃんの近くにある逆鱗に

 触ったりしなければだけど」

「えっ!?」


フィルが思わず手を放す、よく見るとその傍に宝石のように輝いてる鱗がある

あれが逆鱗って奴かな?


「あ、アンタそれなら早く言いなさいよ!!」

「いや~まさか知らないと思わなかったからちょっと焦ったよ

 あははははは」


笑い飛ばすマリスにフィルが恨みがましい視線を向ける。

なんだかんだ言って仲良くない?あの2人


「で、話すはいいけどこのまま起きるの待ってるの?」

「ん~、フィルミールお姉ちゃん【気付け(リストラティヴ)】の魔法使える?」

「それなら見た事あるからできるわ、こうよね?」


フィルがドラゴンに向かって手をかざし詠唱する。

するとドラゴンは淡い光に包まれた後、目を開け始める。


「グ、オ………ァ」


仰向けに倒れていたドラゴンがゆっくりと体を起こす、近くにいたフィルは

慌てて私の後ろまで退避する。

体を起こしたドラゴンは状況がつかめてないのか周囲を見回している。


Доброе(おは) утро(よう), дракон(ドラゴン), какое(さん) у тебя(お目) про(覚め)буждение(は如何かな)?」


マリスが唐突に異なる言語でドラゴンに話しかける、その様子に

フィルが驚きぎょっとする。


「あ、アンタそれって………」

「趣味で覚えた古代ドラゴン語だよ、いや~こんなとこで

 役立つとは思わなかったねぇ」

「アンタホントに何者なのよ………」


フィルの驚き様を見るとマリスが喋ってる言葉は結構レアものっぽいみたい。

………けど、何でか会話内容が分かるんだよね私。

となるとフィル達みたいに私が日本語で話しかけても通じるとは思うけど

何かややこしくなりそうだしここはマリスに任せとこう。


Ну(えっと) вы ребята(貴方達は)………?」


突然話しかけられ、多少驚いた様子だけどドラゴンが答える。

思ったよりも声色が落ち着いていて理知的な話し方だ、どうやら

正気に戻ったのは間違いないようだね。

けど、図体に似合わず結構声が高い、もしかして雌なのかな?


Вдруг(いきなりで) плохо(悪いけど)по-японски(共通人語は) говоришь(話せるかな)?

 Мне(私は) сложно(この) говорить(言葉だと) и объяснять эт(説明が)им словом(難しいんだ)

Ах()………はい、話せます」


ドラゴンの言葉が聞きなれた言語になる。

状況が分からないのに人の言葉に素直に従うなんて

随分と穏やかな性格なんだねこのドラゴン。


「あんがと、いや~古代ドラゴン語って人間には喉の負担が凄くってさ

 あんまり複雑で長い言葉は難しいんだよ」

「そうですか………(われ)としてはどちらでも構わないのでお気になさらず」


なんかすごい礼儀正しいねこのドラゴン。

ファンタジー映画じゃ人を見下してたりしてたけどこの世界じゃ

そうでもないのかな


「んじゃ貴方に起こった事と今の状況を話すね、まずは………」


マリスの状況説明に真剣な様子で聞き入るドラゴン。

なんか傍から見ると凄い絵面だよね、これ。


「………と言う訳なんだ、何と言うか災難だったね貴方も」

「そう………ですか」


マリスが状況を説明を終える。するとドラゴンの雰囲気が重苦しくなっていく。

これって悲しんでるのかな?


「情けない………睡眠中だったとは言え人間に逆鱗を許し

 なおかつ暴走を人間に止められるなんて………」


ありゃ、何かプライドに触れたっぽい?

もしかして私達が止めたらマズかったとか。


「え~っと、何かゴメンね。余計な事をしたみたいで」

「い、いえ、暴走を止めて貰えた事には感謝しています

 あのままだと我は一族に粛清されていたでしょうから」


うわ~お、何かいきなり重い単語が出て来たよ。

ドラゴンの間じゃ逆鱗に触られて暴走って重罪みたいだね。


「でもそれじゃ、貴方は何故こんな人里近くにいるの?

 竜族の巣にいればこんな事にはならなかったでしょうに」


フィルが尤もな疑問を投げかける。

確かにそこにいれば少なくとも人間に逆鱗を触られる事態には

ならなかっただろう。


「それは………我は竜族から追放された身ですので」

「追放!?」


これまた重めな単語が出て来たね、追放って事はこのドラゴン

何かやらかしたのかな?


「成程ね、貴方竜族から【弱者の烙印】を押されたんだ」


マリスが納得したように呟き、ドラゴンが肯定するかの様に頷く。


「【弱者の烙印】?アンタ何か知ってるの?」

「簡単に言えば『お前はレベルが低いから一族じゃない』って言われて

 追い出されたんだよ。ドラゴンって強烈なレベル主義だからね」

「そうなんだ………ってこの世界ドラゴンにもレベルあるの?」

「基本生き物には全部レベルが存在するのがこの世界だよ、異世界人も含めてね

 何故かレンお姉ちゃんには実質無いみたいだけど」


その辺りはずっと疑問だけど、今の話に関係ないからスルーかな。


「レベルって基本()()()()()()()経験値は手に入らずに上がらないんだよね。

 けど、ドラゴンさんのレベルを見るに、恐らく仲間内での戦闘に

 1回も勝った事ないんじゃないかな」

「………その通りです」


マリスの推察にドラゴンが悲しそうに肯定する。

と言うかそんなにレベル低いんだ、気絶させるの無茶苦茶苦労したんだけど。


「成程ね、貴方の状況が分かって来たわ

 村人が『竜神様が魔物を追い払ってくれた』って言ったけど実際は

 この辺りで勝てそうな魔物と戦って経験値を稼いでいたのね」

「………はい、ですが100年ほど続けてきましたが経験値は微々たるもので

 一向にレベルが上がっていないのが現状です」

「ここの魔物ってそんなに経験値低かったかしら?

 私、ここまで来るだけでレベル2上がったんだけど」

「多分、種族特性やステータス差で経験値が大分削られちゃってるんだと思うよ

 基本自分より弱い相手と戦っても経験値はあんま手に入んないしね」


そうなんだ、まぁ強い相手と戦う事は強くなるのは元の世界も同じだね。

だけど、聞けば聞くほど可哀そうになって来たかも。

ドラゴン的には罪かもしれないけど逆鱗に触られたのは

このドラゴンのせいじゃないし、強くなれなかったのも確実に

()()()()()()()に過ぎないね。


「それで、貴方はこれからどうするの?まだここに留まってレベル上げをする?」


フィルの問いにドラゴンは首を振り


「いえ、逆鱗に触れられたことはもう一族には知られているでしょう

 なら、もうここには居られません。

 今回の事に踏まえ、100年経ってもレベルが上がっていない事を知られれば

 我はおそらく掟に則り処刑されるでしょう、その前に他の地へ渡り

 レベル上げを行います。レベルさえある程度あれば罪は軽くなりますので」


ふむむ、一度は逃げるけど状況打破は諦めてない訳で、その為の努力もすると

個人的にはこういう性格は好感を持てるね、応援してあげたい気持ちになる。


「かと言って、ドラゴンが十分に経験値を得られる場所ってこの近辺

 と言うか恐らくこのエルシェーダ全域を探しても殆どないよ。

 可能性があるとすれば東の魔族領域だけど………あそこでレベル上げ

 するならまだドラゴン同士で喧嘩してた方がマシだと思う」


けど、ドラゴンの考えにマリスが待ったをかける。


「レべル至上主義のドラゴンが巣から出て外で経験値稼ぎしないのは

 多分それが理由だろうね、外で魔物と戦うより自分達の戦いで

 経験値稼いだ方がずっと効率的なんだと思うよ」

「それは………」


マリスの言葉にドラゴンは言葉を無くし項垂(うなだ)れる。

恐らくそれが事実なんだろう、となるとこのドラゴンが現状打破するのは

ほぼ絶望的って事になる。

何か状況的に詰んでるね、流石に何とかしてあげたいけど………

そんな事を漠然と考えてると項垂れていたドラゴンが首を持ち上げ


「けれど、貴方ならばもしかしたら………」


と呟き、私の方へ向く。


「な、何かな?」


いきなり視線を向けられた私は若干驚きながらも問いかける。


「お尋ねします。

 暴走した我と対峙し、止めてくれたのは貴方ですね?」


ドラゴンは私に問いかける。その質問にどんな意味があるのか

分からないけど、その答えは否だ。


「いや、私だけじゃないよ。フィルとマリス、そこの2人も一緒に戦ってたから

 あの2人の支援があったからこそ、貴方を止めることが出来たんだ」


私の答えに、それが真実かどうかを聞く様に

ドラゴンは2人の方へ向く。


「私はレンの傷を治して強化しただけ、支援って言っても

 大したことはしてないわ」

「マリスも同じかな~、私の魔法なんて全然効かなかったし

 レンお姉ちゃんの『ブレスを吐く寸前に突っ込んで自爆させる』って

 無茶苦茶な戦法マリスには思いつかないよ、あはははは」


いやいやいや、2人がいなかったら私はブレスで丸焦げだし

ブレスで自爆を誘う事も無理だったって。

そう否定しようとした瞬間、ドラゴンがこちらに向き直し

私に視線を合わせる。


「どうやら、貴方で間違い無い様ですね

 我も朧気ながら武器も持たぬ貴方と戦った記憶があります

 自らの肉体のみで竜族と対峙し、支援があるとは言え我を打倒し得た

 そんな力ある方ならば、むしろ願ってもない事」


ドラゴンはそう言うと、まるで私に跪く様に頭を下げ


「強き方………願わくば我を従者とし、ドラゴンマスターへと

 相なって頂けないでしょうか?」





「………………はいぃ!?」


いきなりとんでもない事を言われ私は素っ頓狂な声を上げる。

って言うかドラゴンマスターって、何!?

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