表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
時越えの詠嘆曲《アリア》
200/209

情報交換

明けましておめでとう御座います。

今年も頑張っていきますのでよろしくお願いします。

「ふぅん、そうなんだ

 私達の方にも依頼が来てたけど、生憎別件を抱えちゃって

 断ったんだよね」


イメルダさんはリアを抱っこしたまま神妙そうに頷く。




聖教の依頼を断ると決めてから次の日、聖教への説明はゼーレンさんに任せ

私達はギルドへ顔を出すと、そこにはユージスさんとイメルダさんが

机を挟んで何やら話しているのを見かけた。

一先ず挨拶でもと2人に声をかけようとした瞬間、私達に気付いた

イメルダさんがくるっとこちらを向き、リアの姿を見るな否や

ぱぁっと顔を綻ばせて


「リアちゃんおはよう~~~♪、今日も可愛くて嬉しい

 それに抱き心地も相変わらず最高だし、ん~~~~~っ♪」


目にも止まらぬ速さでリアの元へ駆けよると速攻で抱き締めるイメルダさん。

……今の動き何?あまりの早業に反応すらできなかったんだけど。


「朝っぱらから何やってんだイメルダ……

 レン達が呆気に取られちまってるじゃねぇか」


相棒の奇行にユージスさん呆れ顔をしつつも、私達の方を向き


「よう、朝っぱらから変なもの見せて悪いな」


片手を上げて挨拶をしてくるユージスさん。


「いえ、リアも嫌がってる訳では無いですし

 それにお2人共元気そうで何よりです」


ユージスさんの挨拶にそう返す私。


「そっちも元気そうで何よりだ、噂じゃ聖教絡みの依頼を受けたって聞いたんだが

 奴らの事だ、どうせ妙な事を言い出して引っ掻き回してきたんだろ?」


おやま、既にユージスさん達にも知られてたんだ。

それなら丁度いい、その件に関して情報を集めようと思ってたところだ。


「ええ、妙な事に巻き込まれはしましたけど

 戦闘自体は無かったので御覧の通りです

 まぁ、ユージスさんの言う通り引っ掻き回されはしましたが」

「……ほう? なかなか面白そうな話じゃねぇか」


私の返しにユージスさんは興味深そうに食いついてくる。

ふむ、この様子だとユージスさん達にも聖教から依頼は行ってるみたいだね。

なら情報交換をしておくのも悪くないかも。


「うん、すっごく面白かったよ♪

 けど、タダで話すのはちょ~っと勿体ないかな~」


すかさずマリスが横槍を入れてくる。

……マリス、ホント抜け目ないね。


「分かってる、メシ位なら奢らせて貰うさ

 丁度昨日生きのいい(コクーン・)蜘蛛(スパイダー)が手に入って……」

「「いえ、ギルドの食事でいいですから!!」」


恐ろしい事を言い出してるユージスさんの声を遮り、私とフィルが同時に叫ぶ。


「そうか? まぁそっちなら俺らとしても安上がりで助かるんだが……

 内臓が美味いだけどなぁアレ」


ユージスさんが少しだけ残念そうに答える。

つーか蜘蛛の内臓って……想像しただけでも吐き気がこみ上げてくる。

フィルも同様で速攻青い顔してる、アレは暫くご飯食べられないかも知れないなぁ。



………




………………




………………………



「何とまぁ、こないだのドラゴンの件と言い

 珍しい事ばかり引き当てるな」


数十分後、注文した料理を食べつつ私達は情報交換をした。

と言っても殆ど私達が前回の依頼内容を言っただけだったけど。


「聖女候補が途中で逃げるってのも初耳だが

 それを追って『聖騎士(クルセイダー)』が姿を見せるなんてな

 こりゃ気軽に依頼を受けなくて正解だったようだな」


ユージスさんは私達の話を聞いて溜息を吐きつつそう吐き捨てる。


「という事は私達が帰ってくる頃にはギルドに依頼は来てたんですよね」

「そうだよ、聖教が大々的に冒険者に依頼なんて滅多に無いから

 ちょっとしたお祭り騒ぎだったかな」


イメルダさんはリアを抱き抱えたまま答える。

ずっと放してくれないイメルダさんにリアは少しだけ戸惑ってる様だけど

嫌がってる様子は無いのでそのままにしておいたほうがいいかな。


「聖教が冒険者を嫌ってるってのは知ってましたが

 そんな騒ぎになるような程だったんですね」

「まぁな、正直数年に1度あるかなってくらいだ

 魔王討伐の時ですら国の依頼を受けてる冒険者(俺達)

 聖教は邪魔者扱いしてたしな」


そうなんだ、魔王討伐って人間やドラゴンが一丸になって

戦ってたみたいな事を聞いてたけど、やっぱりその手の足の引っ張り合いは

あったみたいだね、まぁ人間としては至極当たり前なんだろうけど。


「それに前回は聖女候補が皆殺しにされて

 結局は勇者とその従者のみで魔王を倒したから

 聖教の面子は完全に丸つぶれだったみたいなんだよね

 だからこそ今回は形振り構って無いんじゃないかな」


ユージスさんの言葉をイメルダさんが補足する。

組織の面子を取り戻すって……これ完全に面倒事のパターンだよね、これ。

知らなかった事とは言え良くもこんな事に巻き込まれて

綺麗に依頼を終われたよね、普通なら絶対いちゃもんつけられてたと思うけど

それが分かってたからこそフィルが相手の面子を保つような

交渉を仕掛けたんだろうね。

……これはほんとにフィルに感謝かな。


「兎に角、そんな話なら俺達も聖教から距離を置かせて貰うとするか

 正直報酬は破格なんだが捨て石にされるのが目に見えてるしな」


ユージスさんはそう言うと掌を上にあげて首をすくめる。


「それが正解ですよ、私達もそう思ったんで残りの依頼を

 断る事にしたんですから

 リアにはもう少し我慢してもらう事になりそうですが」


私はそう返してイメルダさんの腕の中にいるリアを見つめると

リアは「何?」って感じで視線を返してくれる。

……イメルダさんじゃないけど一々可愛いな、もう。


「まぁそれが無難だよね~

 聖教(あそこ)は目をつけられると厄介だから

 早々に離れた方がいいよね、あはははは」


マリスが高らかに笑いながら軽めにそんな事を言って来る。

……これは過去に聖教関係で何かやらかした様だねマリス。

フィルも同じことを思ったのかジト目でマリスを睨んでる。

そんな視線も気にせずにマリスは言葉を続けていく。


「ところでさ、ユージス兄ちゃん達は『オルテナウスの街』に関して

 何か知ってる事ある~?

 例の聖女候補失踪の件でそこも候補になっちゃってるんだよね~」


まるで世間話の様に軽い口調でユージスさん達に質問するマリス。

だけど、それを聞いた瞬間にユージスさん達の顔が険しくなり


「……レン、もしかしてあそこに行くつもりなのか?」


静かな口調だけどまるで咎めるような声色で私に問いかけてくる。


「いえ、不穏な噂しか無いですし好き好んであんなとこ行く訳ないですよ

 ただ、情報は持っていた方がいいかなと思いまして」


そんなユージスさんに私は紛れもない本音で返す。

一瞬だけ見つめ合う私とユージスさん、けど直ぐに

ユージスさんは表情を緩めて


「ならいい、顔も知らない奴らがいくら死のうと知ったこっちゃないが

 流石にアンタ達に死なれたら寝覚めが悪いからな」


軽い口調でそう言ってくるユージスさん。

うん、ホントいい人だねこの人も。


「という事は、やっぱりあそこはろくでもない場所なの?」


私達のやり取りを横で聞いてきたフィルが口を開く。


「ああ、俺達もそこまで詳しい話を聞いた訳じゃねぇが

 あそこに行って帰ってきた奴はどころか『何も戻ってこない』って話だ」

「何も戻ってこない?」


ユージスさんの言葉に思わず聞き返す。


「いくら冒険者(俺達)が命知らずっつっても、んなトコに前準備もなしに行くことはしねぇよ

 事前に道具や魔法生物とかを使って周囲の下調べは当然やるんだが……」


そう言ってユージスさんは小さく息を吐き、再び顔を顰め


「そう言った物も一切『戻ってこない』んだよ

 後、冒険者の遺品や足跡なども全くな

 ギルド証とかは冒険者ギルドが管理してて現在位置とかが見えるらしいが

 それらも全く消えちまうらしいぜ

 マジであそこで何が起こってやがるんだか」


そう言って深く溜息を吐くユージスさん。

……聞けば聞くほどヤバいとこだね、オルテナナウスの街って。

人が消えるだけならまだしも所有物すら全消失は流石に普通じゃ無さすぎる。

まるでそこにブラックホールでも空いたような異質さだ。

私はその異質さに改めて『時越えのセレナ』が言った

「あそこへ近づくな」と言う忠告を頭の中に響かせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ