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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
時越えの詠嘆曲《アリア》
188/209

聖女候補捜索・III

「いよ~し、捕まえた!!」


マリスが魔力の残滓らしき緑のもやとにらめっこを始めてから数分後

突然そう叫ぶと同時にもやの中に手を突っ込み、何かを引きずり

出す様な仕草をする。


「んっふっふ~、や~っと見つけたよ

 日数が経ち過ぎてるから殆ど霧散しかかってるけど、恐らくコイツだね」


そう言って何かを握り締めた手をずいっと私達に向ける。


「……何も無いじゃない」


それを見たフィルが不審そうに言う、確かにマリスの握りこぶしだけで

その中に何かあるような感じはない。

と言うかそもそも魔力って掴んだりできるものなの?


「ん~、フィルミールお姉ちゃんなら分かるかなと思ったんだけど

 流石に微か過ぎて無理の様だね、んじゃリーゼ」


マリスは私達に向けた握りこぶしをリーゼに向ける、リーゼはそれに

顔を近づけ目を潜める。


「……確かに微かながらに魔力の残滓が見えますね

 しかもこれは、ただの人間の魔力では無い様な……」


マリスの握りこぶしを見ながら言うリーゼ、さっき魔力が視えるって言ってたし

ドラゴンになら何とか見えるものなんだろう。


「よしよしっと、リーゼが見えるなら何とかなりそうだね」

「マリス嬢ちゃん、お主は一体何をしとるんじゃ?」


何か1人で話を進めてるマリスにゼーレンさんが問いかける。

私達を驚かせようと自分のやってる事の説明をあまりしないのは

マリスの悪い癖だね。


「決まってるじゃん、ここでいなくなっちゃった聖女候補の手掛かりだよ

 今マリスの手の中にある魔力の残滓、これがおそらくその

 聖女候補の魔力だよ」


マリスがニカッと笑いながら言ってくる。

うん、多分そうじゃないかとは思ってたけどね。


「アンタ、そんなのを探し出したの!?」

「いや~苦労したよ、思ってたより日数が経ってて魔力が霧散してたから

 正直見つかるかどうか賭けに近かったんだよね~」


驚くフィルにカラカラと笑うマリス。

……良く分かんないけど、またマリスが常識はずれな事をしでかしたんだろう。


「そんなモノを探しておったのか……

 じゃがそれを見つけてどうする、それがあったところで聖女候補が

 ここにおったという証明にしかなるまい」


ゼーレンさんが驚きつつもマリスに疑問をぶつける。

確かにここに聖女候補が来ていたんだからその魔力の残滓があるのは当然だ。

そんなモノを見つけてもあまり意味の無い様な……


「ま、確かにマリス達だけならそうだね

 けど、ここに魔力が知覚できるリーゼがいるじゃん

 リーゼならこの魔力がどういう風に流れているか見ることが

 出来るんじゃないかな」


……成程そう言う事か。

言うなれば犬に臭いを覚えさせて追跡する感じかな、その臭いの元を

マリスは探してたって事なんだろう、リーゼを犬扱いはちょっと可哀そうだけど。


「リーゼ、出来るの?」

「この魔力を辿っていけ、と言われれば可能です

 流石にマリスが見せてくれた魔力の残滓が無ければ無理でしたでしょうが」


私の質問にリーゼが淡々と答える。

それならば話は早い、リーゼにその魔力を追跡して貰えば

聖女候補のいる場所が分かる可能性が高い、その魔力が途切れてなければだけど。


「ちなみにその魔力って途中で途切れたりはするの?」

「日数が経てば霧散はしますが、対象が魔力を全て失わない限りは

 放出が止まる事はありません

 意図的に放出を止める事も不可能です、魔力放出は生命活動の一環で

 それを止めるという事は心臓を止めるという事と同義になりますから」


私の質問にリーゼが丁寧に答えてくれる、いわゆる無意識呼吸の様なものだね。

どういう理論かは分かんないけど、この世界では生物の生命維持に

必要な行為という事だ、となれば途切れて分からなくなる心配も

ほぼ考えなくてよさそうかな、対象が死んでなければだけど……


「説明ありがとリーゼ、なら早速だけど

 その魔力とやらを辿って行って貰えるかな?」

「承知しました、ですが見えるとは言えかなり薄いので

 移動速度はかなり遅くなる上に、恐らく集中を切らされると

 見失う可能性があります、その辺りはご留意下さい」


ふむ、目を凝らしながら歩いてるって感じかな。

ならば極力リーゼの集中を切らさない様にしないといけないね

外に出る可能性が高そうだしリーゼを護衛する形になりそうかな。


「分かった、ならリーゼは魔力の追跡に集中して

 他のみんなはリーゼの護衛、外に出る可能性も在るから

 魔物とかに襲撃されてもリーゼの護衛が最優先、それでいいかな?」


ざっとこの後の行動を支持を押する私、仲間達に異議は無いようで

みんな一様に頷いて返す。


「よし、それじゃリーゼお願い」

「了解しました、追跡を開始します」


リーゼの表情がしかめっ面になる、本当に目を凝らさないと見えないみたいだね。

そしてゆっくりと歩き始めるリーゼ、私達はリーゼの歩調に合わせ

後について行った。



………




………………




………………………



「……結構歩くわね、何処まで行くのかしら」


リーゼが魔力追跡を始めてから約1時間、ゆっくり目のペースだから

大体3キロぐらいかな? とうに村の敷地内からは出て村に繋がっていた

街道を王都とは逆の方向に歩いていた。

流石に街道という事で心配していた魔物の襲撃も無く、また王都から

離れて行っている影響か旅人とすれ違う事も無かった。

リーゼは相変わらずしかめっ面のまま街道をまっすぐ歩いて行き

私達はその後ろについて行っている状態だ。


「……これは、拉致されたという可能性が薄くなってきたのう」


最後尾で魔物を警戒しながら歩いていたゼーレンさんが呟く。


「どういう事?」


その呟きが聞こえていたのかフィルがゼーレンさんに問いかける。


「……拉致に限らず、悪事を働こうとするものは基本目立つことを嫌うからの

 仮に聖女候補を拉致したとして、その移送には出来る限り人目がつかない

 経路を通るのがまぁ基本じゃな」

「そだね~、でもこの辺りはあまり人通りが少ないっぽいし

 夜になら通る可能性も在るんじゃない?」


ゼーレンさんの返答にマリスが横槍を入れる。

まぁ普通に考えればゼーレンさんの言う通りだけどマリスの言う事も一理あるね。


「そうじゃな、じゃが街道とは言えこの辺りまで来ると夜には

 魔物と鉢合わせする可能性がある

 人1人を移送しながら魔物を警戒、もしくは撃退しながらの移動は

 正直リスクが高い上に誰かに目撃される可能性も無い訳では無い

 まぁ、それを言ったら街道を避けて移送するのも同様のリスクはあるんじゃが」


ゼーレンさんが街道の外れを眺めながら言う。


「つまり、街道をまっすぐ進んでるって事は

 拉致されて何処かに連れて行かれていた訳じゃなくて

 自分の足で歩いていたって可能性が高いって事?」

「そう言う事じゃな、まぁ断定は出来んが」


フィルの答えにゼーレンさんが頷く。

その考えには同意かな、それに……


「私もゼーレンさんと同じ考えかな、恐らくこの聖女候補は

 拉致されたって訳じゃなく自分の足でこの街道を歩いて行ってる様だね

 その証拠に……ほら」


私はそう言いながら前方の地面に指を差す。

リーゼ以外がその方向に視線を向けると、そこに……


「……これは足跡か?」


目のいいゼーレンさんがいち早く見つける。

そう、人通りが少ない事が幸いしてこの街道には

1人分の足跡が残っていたんだよね。


「そう、しかも大きさと踏み込んだ形、そしてつま先の向きからから見て

 恐らくは私と同年代か少し上の女性っぽいね

 確か、聖女候補になれるのってその位の女の子なんだよね?」

「え、ええ……ギルドに寄せられた情報だとその様だし

 何より今までの聖女も10台後半の女性信者だったみたい」


私の質問にフィルが答える。

ちなみに聖教から聖女候補の外見や身体的特徴などの情報は貰ってなかったりする。

秘密主義これ極まりだねぇ、正直そんなんでどうやって探せって感じだけど

悲しい事にこれってよくある事なんだよね……探索対象が排除目的って

パターンだけど。


「そっか、ならこの先に行けば遭遇できるかな」

「どうなんだろうね~、ま、楽しみにしてようよ」


そんな会話をしながら、私達は追跡を続けた。

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