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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
時越えの詠嘆曲《アリア》
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聖教の依頼

「行方不明の信徒の捜索、ですか……」


ゼーレンさんの言葉に続けて呟く。

冒険者への依頼内容としてはギルドでよく見る手合いのモノだ。

特に町から出ればモンスターが跋扈してる世界だ、襲われて

行方不明なんて話はザラにある、まぁ大抵が依頼が出た時点で

手遅れの事が多いみたいなんだけど……


「そうじゃ、じゃがこの行方不明になった信徒と言うのが

 少々特殊な人物でな、所謂『聖女候補』らしいんじゃ」


聖女候補?また知らない単語が出て来たね。

けど聖女って単語自体には聞き覚えがある、確か『勇者』に関係する

みたいな事をフィルとマリスが言ってたっけ。


「ふむむ、聖女候補が失踪ねぇ

 という事は聖教は聖女の選定を行ってるって言う事になるけど

 それって聖教は()()()()()()()()()()が近々起こると

 踏んでるって事だよね」

「恐らくはの、法皇からの託宣が無いから確定とは言えんが」


マリスの言葉にゼーレンさんが頷く。

えっと、どういう事かな?

確か前に『聖女は勇者が召喚されないと選定されない』とか

言ってた気がするけど。


「おっと、レンお姉ちゃんの置いてけぼりにしちゃってるね

 と言ってもこの手の説明はマリスじゃざっくばらんにしか出来ないから

 フィルミールお姉ちゃんに任せたいんだけど……」


マリスはそう言ってフィルミールを見る、それに合わせて私も視線を向けると

フィルは少しだけ溜息を吐き


「……そうね、正直気は進まないけど

 レンには必要な事だしね

 ちょっと長くなるけど我慢して聞いてね」


そう言って私を見据える。

長くなるかぁ……まぁこの世界において大事な事みたいだし

頑張って覚えておかないと。


「先ずは『聖女』について説明するわね

 簡単に言えば『勇者』に付き従い、その身を守るために

 聖教から派遣される信徒の事を言うの

 まぁ、『聖女』って名前からして女性信徒しかなれないんだけど」


ふむ、勇者に付き従う聖女ね……

漫画とかでよくあるパターンだね、お約束ならその2人が恋仲になって

愛の力で魔王を倒す……って感じみたいだけど。


「その『聖女』になる為には『神器』による選定を受けなければならないの

 その選定にも資格があって、その資格がある女性信徒を

『聖女候補』って言うの」


成程、言うなれば聖女になる為には資格が必要で

その資格を受ける為にもさらに資格が必要で、それを持ってる信徒が

聖女候補って訳だね。

ん?でもそれって……


「えっとさ、その『聖女』とやらは『勇者』の為に用意される人だよね

 だったら…『勇者』がこの世界に召喚されたって事?」


ふと頭に浮かんだ考えを皆に聞いてみる。

フィルの話だと『勇者』がいなければ『聖女』も選定はされない

なら『勇者』が召喚されたと考えるのが自然なんだけど……


「いえ、前にも言ったけど『勇者』が召喚されたら法皇が宣言なさって

 聖教の総力を挙げて勇者探索が始まるわ

 それが無いって事は、まだ召喚はされていない筈よ」

「そうなんだ……と言う事は聖女候補って『勇者』が来て直ぐに

『聖女』を選定出来る様にする為ものって事なのかな?」

「……そうね、その認識で正しいわ」


成程ね、確か勇者って魔王が復活したら召喚されるって話だから

その時にバタバタしない様にあらかじめ候補者を選定しておくって事か。

確かに合理的だね、恐らくは勇者が召喚される頃には

それを妨害する為に魔王が攻めてきそうだし。


「うん、聖女候補については理解したよ

 けど、それなら何でそんな重要人物が行方不明になってるの?」


フィルに問い返す私。

聖女が聖教にとって重要人物であるなら普通に考えたら保護されている筈。

考えられるのは『聖女』になるのを拒んで脱走したって事ぐらいだけど。


「聖女候補は資格が必要ってのは言ったわよね

 敬虔な信徒であるのは当然だけどそれ以外にも必要な事はいくつかあって

 そのうちの1つが『冒険者としての経験』が含まれるのよ

 まぁ、勇者と共に魔王討伐の旅に出るんだからその手の経験が

 必須なのは当然だけどね」


ふぅん、まぁ言われてみればそうか。

攻めてくるのを迎撃じゃなくて拠点に攻め入るんだから

旅と戦闘の経験は必須だね、という事は……


「成程、要は冒険者としての経験を積んでいる最中の

 聖女候補が行方不明になったという訳かな」

「察しの通りじゃ、しかも()()()な」


私の答えにゼーレンさんが同意して補足する。


「10人いる聖女候補の中で既に4人、同行した者達と共に姿を消しておる

 同行者には冒険者のみならず、聖騎士(クルセイダー)も含まれている様じゃ

 聖教は当初内々で解決しようとしてたらしいんじゃが……」


ゼーレンさんはそこで言葉を切り、眉間に皺を寄せる。

……さらに何か厄介事が起きた様だね。


「……先日、王国内で魔族の姿が確認されてな

 魔王復活の前兆ではないかと聖教は今大騒ぎらしい

 その影響で聖教は捜索に手を回す余裕がなくなっているみたいじゃの」


……何とまぁ、それは厄介な。

魔族……名前からして魔王の配下か何かだろうけど、そんなのが姿を現したら

確かに大騒動にはなりそうだ。


「一応、各国の首脳には既に報告が行っておって

 王国では混乱を避ける為に緘口令が敷かれておる、嬢ちゃん達も

 この事は内密に頼むぞ」


うわ、そんな大事になってるんだ。

ん? ちょっと待って、魔族とやらが出没したって言うなら何か目的がある筈。

という事は……


「もしかしてその魔族とやらが災いの芽を潰す為に

 聖女候補を……」

「その辺りは分からん、そもそも魔族に関しては目撃情報だけなんじゃ

 人を襲ったとかそう言う報告はない、むしろそんな事をするなら

 奴らは絶対に姿を現さんよ、恐ろしく慎重な奴らじゃからな」

「そうなんですか?」

「……ああ、何度か対峙した事はあるが奴らは人間より遥かに強い力を

 持っておりながらそれを派手に振りかざす様な事はせん

 むしろ力を隠遁し、油断した所を背後から……と言う戦いを好むんじゃ」


む……それは厄介と言うか危険な奴らだね。

正直1番やりにくい相手かも、戦いの基本は相手の不意を突く事

それに長ける相手とはなるべくやり合いたくはないけど……


「魔族の方は聖教に任せればええじゃろ、依頼内容はそこまで入っとらんし

 儂等が戦う理由も無い、運悪く鉢合わせしたとしてもとっとと逃げればええ

 奴らは自分の標的以外には興味を示さんからの」

「だね~、マリスも何度か鉢合わせした事あるけど

 逃げちゃえば追ってこなかったしね」


そうなんだ、という事は今は考える必要は無いかな。

姿を見せない輩が姿を見せてる事には気にはなるけど。


「それで、私達はその行方不明の4人を探し出せばいい訳ですね」

「そうじゃ、無事だと良いが……それなりに日数が経っておるから

 難しい所じゃな」

「そうですか……」


ゼーレンさんの返答に少し暗鬱とした気持ちになる。

最初は聖教が内々で処理しようとしてたって話だし、冒険者(こちら)に話が回ってきたのは

発覚から相当な時間が経ってるんだろう、ならばあまり希望は持てないね。

そう思いながらフィルの方をちらっと見るも、いつもの様に

すまし顔のままで座ってる、聖教の事だけど気にならないのかな?

聞けば答えてはくれそうだけど……個人的には自分から言わない事を

根掘り葉掘り聞くのは性に合わないし、何より下手な好奇心は身を滅ぼす。

なら今回も何も聞かない方がいいかな、話の流れとフィルの様子からして

『聖女候補』とやらでは無さそうだしね。


「よし、それじゃ明日からその依頼に取り掛かるとしようか

 行方不明者4人もいるから長丁場になりそうだし、準備は入念にね」


私の言葉に仲間達はこくんと頷く。

さて…明日からまた忙しい日々が始まりそうだけど

リアの為に気張ろうかね。

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