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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
軌跡への遁走曲《フーガ》
145/209

再生する脅威再び・V

「なっ!?」


余りの予想外の展開に驚愕する私。

何でこの人達ここにいるの!?


「………ッ、リーゼ!!少しの間戦線維持お願い!!」


リーゼに指示を飛ばし金輝騎士団の方へ駆けだす私。

何が目的かは知らないけど、ゼーレンさん達の言葉通りなら

あの人達は武具を装備しただけの素人集団らしい、そんな人達が

この場にいるだけでも危険だ、どうにか撤退して貰わないと………

私は全速力で彼らの元へ向かい、到着するなり騎士団の前で声を張り上げる。


「貴方達!!ここは危険よ!!

 死にたくなければ撤退して!!」

「うわぁっ!?

 な………き、貴様、何処から現れた!?」


縮地の体勢からいきなり眼前に現れたためか、先頭にいた鎧の男は

叫び声を上げて後方にたたらを踏みながら私に向かって叫ぶ。

この反応、やっぱりこの人達ゼーレンさんの言う通り戦いの素人だ。

よく見ると先頭の男のみならず後ろに待機している騎士団の面々も

豪奢な鎧をがちがちと鳴らしながら震えてる、完全に首無しを見て

恐れをなしている状態だ、だったらなぜこんな所に………


「そんな事はどうでもいいから!!

 首無し(アイツ)は見た目通りの化け物、下手に手を出すと

 生きたまま取り込まれるよ!!」


いくらこっちを見下した態度を取られたからって、流石に

この人達が生きたまま人が取り込まれるのを見るのは御免だ。

そう思い私は声高に警告する。


「い…生きたまま取り込むって………」

「や、やっぱり無茶だよこんなの………」


騎士団の面々に動揺が広がる、鎧を通しての声だから少し分かり辛いけど

声質はかなり高めだ、これもゼーレンさんの言う通り私と同年代どころじゃない

声変わりすらしていない年下の子達っぽいね。

しかも王国貴族のご子息達らしい、そんな子達が何の目的で戻って来たか

分からないけど兎に角撤退させないと………

だけど、先頭にいた鎧の男は兜の隙間から見える瞳から私を睨みつけ。


「だ、だだだだからどうした!!

 わ…我々金輝騎士団のに…任務は王都の守護だ!!

 そ、そその栄誉を冒険者に横取りされるなど断じてで、で出来ない!!

 きき、き貴様等にて、手柄の独り占めをさせる事など、だ、だだだ断じて!!」


全身を震わせながらカミカミの言葉でそう反論して来る。

この状況でまだ栄誉とか手柄とか言ってるのかこの人は。

正直無駄死にするのは分かり切ってる、あんなに震えていたら

戦いにすらならないだろう、本人たちは勇気を振り絞ってるつもりなのかも

しれないが正直無謀としか言いようがない。

とは言え冒険者の私の言う事など貴族思想の人間が聞く事は無いだろう。

ならば………不本意だけど首無しの恐ろしさをその目で見て貰うしかないか。


「警告はしたよ、それでも戦うって言うなら止めないけど

 正直言って今の貴方達の状態だと犬死するだけだよ」


私はそう言って踵を返し、リーゼの元に向かう。

あの震え方を見てると恐らく私達の戦いは見てたんだろう。

そして本能的に勝てないと理解してる筈、だけどプライドや野心が

逃げるのを邪魔してるって感じかな………面倒な。


「恐らくもう残り時間は2分は切ってる筈、それまで大人しくしててよね!!」


私は一人ごちると首無しが伸ばした口を切り払ってるリーゼの横を駆け抜け

再び足元に向かって拳打を打ち込み、すぐさま飛び退く。

私の攻撃に反応して伸びてくる触手、そのままリーゼの所に誘導しようと

飛び退いた瞬間………


「う、うわああっ!?」


後方で叫び声が聞こえ、思わずそちらに振り向く。

そこにはさっきの騎士達に首無しの触手が向かっている光景だった。

騎士達の手には弓が見える、遠くからなら安全と弓を打ち込んだみたいだ。


「ちぃっ!!」


考える間もなく騎士たちの方へ駆けだす私、そのまま騎士達と触手の

間に割り込む。



………刹那、右上腕部の中を()()()()()()()()感覚がした。



「ぐっ!?」


良く分からない感覚が襲い掛かり、私が思わる足を止める。

その隙に私を追ってきた触手と、騎士達を狙った触手が

私の身体を拘束する様に巻き付いてくる!!


「………ッ!!」


自分の失態に舌打ちをする、何をやってるんだ私は。

私じゃ触手を避けることは出来ても処理する出来ない、ならば

私は逃げに徹し、騎士達の救助はリーゼに任せればよかったじゃないか。

完全に拘束され動けなくなる私、唯一自由の利く首を回し

さっきの妙な感覚に襲われた右上腕部を見る。

………触手に貫かれ血が噴き出ている右上腕部が見える、だけど



          ()()()()()()()



その状況に思わずゾッとする、アドレナリンによる麻酔効果なんかじゃない

腕の中に触手が通ってる感覚が生々しく伝わってきてる

神経が麻痺してる訳じゃない、現に指先までの感覚はある

だけど動かすことは出来ない。

私の(相棒)が『このままではヤバい』と激しく警鐘を鳴らす。


「あ……あああ………」


そんな私の有様を間近で見ていたらしき鎧の男が後ずさりながら声を出す。

………不幸中の幸いと言っていい物かどうか微妙だけど、彼は

触手に拘束されてはいない様だ。


「こうなりたくなければ逃げなさい!!

 それとも、栄誉や手柄の為に同じような目に遭ってみる!?」


私は怒気を込めて鎧の男に言葉をぶつける。

逃げてくれるのを期待したけど、目の前の惨状と私の怒気に気負されたのか

そのままガシャンという音を立てて座り込んでしまう。

………っ、脅し過ぎで逆効果だったか。

そのままでは彼も首無しの餌食になるだろう、けど私も

完全に拘束されてしまってる、時に右上腕部の状態は深刻だ。


「マスター!!」


私の現状にリーゼが気付き、駆けつけてくる。


「マスター!!じっとしててください!!」


リーゼはそう言うなり戦斧を大きく振りかぶり

轟ッ!!と刃音を鳴らしながら私に巻き付いている触手を切り離す。

私の体に巻き付いていた触手はリーゼの斬撃を受け、全て地面に落ちて

ドロドロに腐り溶ける、だけど私の右上腕部を貫通した触手は

斬られた瞬間に触手の先端………つまり()()()()()()()()()()から

細かい触手が発生し、切断面を即座につなぎ合わせてしまった。


「なっ!!」


驚愕して一瞬動きが止まる私とリーゼ、それを隙と認識したのか

触手が私の右上腕部を貫通したまま物凄い力で私を引きずり始める。


「ッ!!マスターを放せ!!」


リーゼが再び戦斧を振り下ろし触手を切り離すも即座に修復してしまう。

これは本格的にマズい、引きずられるのに抵抗しようと足に力を入れるも

向こうの引く力が強すぎて全く抵抗できない。

脳裏にトロール戦で生きたまま取り込まれて行った冒険者の姿がよぎる。

このままでは私も同じ運命だ、けど現状触手を切り離すことは出来ない

………なら!!




「リーゼ!!()()()()()()()()()()()!!」




リーゼに向かいそう叫ぶ、余りにも予想外の言葉だったのか

呆気に取られるリーゼ。


「ほ、本気ですかマスター!?」


驚愕の表情に変わり聞き返してくるリーゼ、私は真顔のまま頷く。

本音を言えばすごく嫌だけど正直手段を選んでる余裕はない。


「で、ですが………」


だけどマスターである私に直接刃を向けるのに躊躇いがあるのか

不安そうな顔でこちらを見つめてくる。

………仕方ない、リーゼには悪いけど強めに言わせて貰うよ。


「早くしなさいリーゼ!!これは命令よ!!」


リーゼに向かって叫ぶ、リーゼはハッとした表情になるも

直ぐに辛そうに顔を歪める。


「………これほど己の力不足を痛感したことはありません

 お許しを、マスター!!」


辛そうな表情のまま、それでもリーゼは戦斧を振りかぶり

私の命令通り私の身体に刃を突き立てる。





―――――次の瞬間、赤い軌跡を描きながら私の腕が宙を舞った。

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