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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
軌跡への遁走曲《フーガ》
135/209

冒険者達の力

「グガオオオオオォォォォ!!」


ゼーレンさんの放った矢はまるで吸い込まれるように

光の軌道を残しながらレッサードラゴンの眉間へと突き刺さる。

完全に不意を突かれたレッサードラゴンは何も出来ないまま

眉間を貫かれ断末魔の声を上げて倒れ込む。


「下等種とは言えドラゴンを一撃ね………

 認めたくは無いけど頼りになるのは事実なのよね、あのエロ爺」


一部始終を見たフィルがボソッと呟く。

その呟きが聞こえたのか、ゼーレンさんはフィルの方に視線を向け

ドヤ顔をし、フィルは悔しそうな顔をしてふいっと目を逸らす。

ゼーレンさん分かっててフィルをからかってるね、あれは。

そんなの緊張感のないやり取りをしてる間に、ドラゴンの集団は

仲間を殺した私達を見つけ出し、一斉に咆哮を上げる。

結構距離が離れてるのにもかかわらず、ドラゴン達の放った

咆哮は周囲の空気を振動させ、鼓膜を激しく揺らす。


「………ちっ、こんなに離れてても届くのかよ」


両耳を塞いだユージスさんが呟く、咆哮足止めをして

一気に突撃してくるつもりなのかもしれないが、そうはいかない。


「この程度の咆哮で我とマスターを足止めようとは………笑わせてくれる」


リーゼはドラゴン達の咆哮を物ともせず前進し、大きく息を吸い込んだ後




「ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!」




その容姿に似合わない程の強烈な咆哮をドラゴン達に返す。

ドラゴン達の咆哮はたちまちかき消され、代わりにドラゴン達の聴覚を

激しく攻撃をする。



「グオオオオォォン!?」



恐らくこんな反撃は予想をしなかったのだろう、目に見えて周囲の下等種(レッサー)達が

動揺しのたうち回っている。


「ドラゴンの咆哮をかき消して逆に咆哮をし返す!?

 リーゼちゃん、貴方って………」

「あの娘にも色々あっての、今はそれより

 この隙に下等種(レッサー)達の注意を引きつけるぞい」

「え、ええ…分かったよ」


驚愕の表情をするイメルダさん、まぁそうりゃそうだよね。

ゼーレンさんに思考を引き戻され、気を取り直したイメルダさんが

目を閉じて詠唱を始め、それに伴って足元に幾何学模様の魔法陣が展開される。

………ん?魔法陣1つだけ?

マリスが魔法を唱えてる時ってもっといっぱい魔法陣やら文字やら

出てた様な………


「レン、アイツ(マリス)を基準にしちゃダメよ

 魔導士としてはあの人が普通なんだから」


私の表情から察したフィルが耳元で囁く。

あ~、フィルが常々マリスは化け物って言ってたけどこういう事か。

通常、魔導士は1つしか魔法を唱えられないって事なら

あれだけ色々同時に魔法を唱えてるマリスの事を化け物って

言いたくなる気もちょっとわかる………ホント、仲間に恵まれてるなぁ私。

そうこうしている内にイメルダさんの詠唱が終わり、未だリーゼの咆哮に

ビビってるドラゴン達の上空に黒く厚い雲が現れる。

あれって雷雲?という事は………




「行くよ!!【雷光(ライトニング)()暴嵐(テンペスト)】!!」




イメルダさんそう叫ぶとともに手に持っていた杖を天に掲げる。

その杖から稲妻の様な光が雷雲に向かって走り、そして

雷雲からまるで暴風雨の様な稲妻がドラゴン達に襲い掛かる!!



「グギャアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!」



文字通り雷の嵐に晒されたドラゴン達は全身を雷に焼き貫かれながら

その場をのたうち回る。

うわすっご………魔法ってこんなことも出来るんだ。

マリスの多重魔法も凄いけど、イメルダさんの魔法もとんでもないね。

あんな中に放り込まれたらとてもじゃないけど

生きて出られる気がしないね。


「嬢ちゃん、雷が治まったら同時に突っ込むぞ

 なぁに、直ぐに全部片づけて向かうからそれまで持ち堪えててくれ」


いつの間にか隣にいたユージスさんが槍を腰だめに構えてそう言ってくる。

表情は真剣そのものだけど少しだけ申し訳なさそうな雰囲気を醸し出してる。

まぁ流石に気にするよね、ユージスさんからしたら自分より若くて後輩の

しかも女の子達を死地に送り込むような事になってるんだから。

けど、そんな事に気を取られてユージスさん達が危険な目に遭う可能性も

十分にある、戦いに集中できない人間はあっけなく死んじゃうんだから。

なので………


「頼りにしてますよ、先輩

 ですが、先輩たちが間に合わす私達がアレ(グレータードラゴン)を倒しちゃって

 素材を独占しても恨まないでくださいね♪」


私はウィンクをしながらお道化た口調で言葉を返す。

一瞬呆気に取られるユージスさん、けど直ぐに

ブッと吹き出した後大笑いをする。


「わっはっはっはっは!!この状況下でそんな事が言えるのか!!

 嬢ちゃん、アンタホントに何者だよ!!」

「至って普通の女の子のつもりですよ、私は」


私の返答にさらに大笑いをするユージスさん。

うん、これで余計な雑念は消えてくれた様だね。


「全く、大した嬢ちゃんだ

 俺はまだまだ嬢ちゃん………いや、レンの事を見くびってたって事だな」


ユージスさんは笑みを浮かべたまま………私の名前を呼ぶ。

これで私の事を対等に見てくれたって事かな。

そうこうしている内に雷撃音が消え、ドラゴン上空に在った雷雲も消え去る。

後には黒煙を上げてるドラゴン達が残る、4匹は苦しそうにのたうち回ってるけど

1匹はしっかりと立っている、となればあれが上位種(グレーター)って奴かな。


「上等だ、なら競争だな

 俺達が下等種(レッサー)を倒し切ってレンのとこに駆け付ける事が出来るか

 それともレン達が上位種(グレーター)を倒してしまうか

 勝負と行こうじゃねぇか!!」


そう高らかに叫ぶとユージスさんはさらに前傾姿勢になり

ゴゥッと音が鳴った瞬間に姿を消し、微風が私達の髪を揺らす。


「えっ、何!?」


いきなりの事にフィルが驚いて周囲を見回す、あの体勢からして

ドラゴン達に接敵しに行ったとは思うけど………

私はそう判断し、ドラゴン達の方へ視線を向ける。


「うぉらあああああああ!!」


ユージスさんの怒号が響き、私は反射的そっちに視線を向ける。

するとそこには未だのたうち回ってるドラゴンの頭上数mに飛び上がり

槍を突き立てようとするユージスさんを確認する。

って、もう接敵の上に攻撃仕掛けてる!?しかも何あのジャンプ力!?

ドラゴン達との距離はまだ100m以上あったと思うけど、それを一瞬で

走り抜けてしかもあんな高い位置までジャンプして攻撃を仕掛けるとか

この人も中々にとんでもないね。

頭上数mからの位置エネルギーとユージスさんの体重の乗った槍の一撃は

下等種(レッサー)とは言えドラゴンの鱗を易々と貫き

脳天から血を噴出させる。

しかし流石ドラゴン、そんな一撃も致命傷とはならずすぐさま頭を振って

槍ごとユージスさんを振り落とすとそのまま右腕の爪で追撃をする。


   

    ガキィ!!



けたたましい金属音が鳴り響く、すると振り下ろされたドラゴンの右腕が

逆に振り上げられた状態になり状態が少し仰け反っている。

そのすぐ下には槍で横薙ぎしたような体勢のユージスさんがいる。

恐らくドラゴンの攻撃に合わせ槍ではじき返したんだろうけど

あれも『スキル』とやらなんだろうか、体格差どころか物理法則すら無視してる

様にもみえる、何て言うかぶっ飛び過ぎて現実味が無いんだけど………


「マスター、我等も続きましょう」


リーゼが私に声をかけながら格納指輪(ストレージリング)から戦斧を取り出す。

おっとと…呆けてる場合じゃない、私達もさっさと接敵しないと。

けど、その前に………


「ちなみにリーゼ、あのドラゴン達を脅して退かせたりは………」

「不可能です、逆鱗に触られた時ほどではありませんが

 戦闘状態の我等(ドラゴン)に力を示す以外の屈伏手段は存在しません」


ですよねー、まぁ戦闘種族っぽいしそんな感じはしてたよ。


「そっか、なら私達の力を見せつけてあげないとね!!」

「望むところです、マスター!!」


お互いに顔を合わせ頷き合うと私とリーゼは同時に駆け出す。

さて、上位種(グレーター)とやらがどれほどの強さなんだろうね。

私は思考を戦闘用に切り替え、目標に接近して行った。

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