王都到着
そこからの旅路は特に目立ったトラブルは無かった。
私の提案は快く受けて貰えて、リアはカルビンさんの馬車に
乗せて貰う事になった。
リア本人はまだ歩けると主張してたけど、足の裏を見せて貰ったら
やっぱりいくつもの豆が出来て潰れていた、流石に直ぐに
フィルが治してたけど、やっぱり結構無理してた様だ。
しかしあれだけの豆が潰れても弱音を吐かないのは大したもの………と
思いたいとこだけど、恐らくあれは捕まってた時の後遺症で
痛みに慣れ過ぎて鈍感になってしまってるんだろう。
正直あまりいい傾向じゃない、痛みに鈍感なのは
体の異常を気づきにくくなるのと同意だ、現にリアは足があんな状態でも
歩き続けていた、何とかしないといけないね。
とは言え今は平穏な生活を続けていくしか手はない
………尤も現状が平穏とは程遠いんだけど。
リアへの懸念は兎も角、その他の事に関しては
さっきも言った通り順調だった。
散発的に魔物の襲撃はあったけど全てリーゼが片付けてくれた。
自分より大きな戦斧を振り回し、魔物達を蹂躙していくリーゼの姿に
商人さん達は驚きの表情を隠せていなかった、まぁ無理も無いよね。
フィルはフィルで商人さん達の中で体調の悪い人を見つけては
積極的に治療して行ってたし、マリスは今まで手に入れて来た
素材や魔晶石を片手に商人さん達と商売のお話をしてるみたい。
………あれ?もしかして役に立ってないの私だけ?
とは言え現状私にできる事が無いのも事実、せめて斥候や偵察をしようにも
直ぐにフィルが私の元に来てにっこりと笑いながら「どこいくの?」と
威圧して来るものだから下手にこの場を離れることも出来やしない。
まぁ実際斥候が必要かと言われれば疑問なんだけど、やっぱり何もする事が
無いのは座りが悪いのは事実、私だけこんなのんびりしてていいのかなぁ?
そんな事を考えながらも、何だかんだで旅は順調に進んでいき………
「よ~し、【王都リゼーン】に到着~♪
いやはや、帝都から直接ここまで来ることになるとは思わなかったよ~」
目の前には大きな門とそこから伸びていく城壁、その前で両手を広げ
高らかに声を上げるマリス。
王国の首都も帝国と同じ城塞都市なんだ、まぁ帝国と
戦争してたって言ってたし当然かな。
門の前ではこれまた帝国と同じ様に門番がいて入国する人達に
身分証の提示と入国税の徴収を行っている。
帝国の時は私に身分証が無かったからちょっとトラブルになったけど
今回は冒険者証があるから流石にスムーズにいくよね?
って、そう言えばリアには身分証なんて無かったんだった。
けど流石に子供にまで身分証の提示を求められないよね?
突っ込まれたら保護者って事でごり押せれればいいんだけど………
「心配ないぞレン嬢ちゃん
儂の血縁者、という事にしておけば問題はなかろうて」
考え込んでる私の表情を見て察したのかゼーレンさんがそう言ってくれる。
そう言えばその手があったね、私が保護者なんて主張するよりも
よっぽど説得力があるよ。
「そうだね、ゼーレンさん悪いけどお願いできるかな?」
「自分から言い出した事じゃ、喜んで引き受けるぞい」
「それならもっと説得力出す為にリアにお爺ちゃん、って呼ばせたらどうかな~」
私とゼーレンさんの会話に割り込んでくるマリス、いや確かに
説得力は増すだろうけど………
「リア、ちょ~っとゼーレン爺ちゃんをお爺ちゃん、って呼んでみちゃって」
マリスがそのままリアに顔を近づけそんな事を吹き込む。
キョトンとするリア、だけどすぐに理解したのかゼーレンさんの方へ向き
「………お爺ちゃん?」
と、首を傾げながら囁く。
これはまたまた強烈な………これゼーレンさんの反応が怖いなぁ。
恐る恐るゼーレンさんの方を見ると………何ともだらしない笑顔を浮かべてる。
「う、ううむ………これはいかんの
思わず何でも言う事を聞いてやりたくなる衝動に駆られてくるわい
………孫を持った心境って言うのはこういう事なのかも知れん」
必死に顔を元に戻そうとするも上手くいかず、完全に孫にデレデレな
お爺ちゃんの顔状態になってる。
………リアの愛嬌は強烈だね、本人は意図してやってる訳じゃないだろうけど。
決して愛想がいい訳じゃないのにそれがギャップになってるのが始末に悪い。
「何やってるのよホント………そろそろ私達の番よ」
そんなやり取りを見てたフィルが溜息を吐きながら言ってくる。
おっと、それならば漫才をやってる場合じゃないね。
私達はカルビンさん達の商隊の最後尾に立って待つ、手続きを終えて
順調に入国していく商人さん達、そしてカルビンさんの番になり………
「ああ、あの最後尾の方達の入国税は私が支払います
彼らは私が護衛として雇い入れた冒険者ですので」
いきなり衛兵にそんな事を言ってくるカルビンさん。
ちょっと待って、いきなり何でそんな話に………とカルビンさんに
駆け寄ろうとしたところフィルとマリスに止められる。
「レン、大丈夫よ
私とコイツで護衛の報酬って事で
カルビンさんとは話はつけてあったのよ」
「レンお姉ちゃんはリアを馬車にのっけただけで十分だと思ってたみたいだけど
流石に護衛の報酬がそれっぽっちだと色々面倒事が起こるからね~
ま、冒険者や商人にも色々しがらみがあると思っといてよ」
む………そう言われると私は何も言えなくなる。
その手の事は元の世界でも散々経験した事だ、マリスの言う通り
人間関係や組織間のしがらみは厄介なものだ、それを無視して行動をすると
色々な面倒事が噴出してくる。
ちょっとリアの事で周りが見えてなかったかな、私。
「そっか、それなら私に異論はないけど………
出来れば教えて欲しかったかな」
けど、やっぱり一言も相談なしなのはちょっと悲しい
若干の抗議を込めてそんな事を言ってみる私。
「あははは、まぁそう拗ねないよレンお姉ちゃん
フィルミールお姉ちゃんが柄にもなくレンお姉ちゃんを驚かせようと思って
暗躍した結果なんだしさ」
「ちょっ………あ、アンタ!!」
マリスの言葉にフィルが真っ赤になって叫ぶ。
私を驚かせようって………フィルってば何でまたそんな事をしようと思ったんだろ?
「だって、最近私ってレンに振り回されっぱなしじゃない
そのこと自体はレンが私を頼ってくれてるって証だし、嬉しいからいいんだけど
それでもやられっぱなしなのは少し悔しかったから………」
私の視線に気づいたフィルが顔を赤くしながらそっぽを向いて呟く。
何と言うか、フィルも変な所で負けず嫌いだね?
「かっかっか、いやはや複雑な乙女心を傍から見守るはやっぱりいいものじゃのう
今のやり取りだけで数年は若返っていく感覚じゃわい」
そんな私達のやり取りを見ていたゼーレンさんが呵々大笑する。
顔を真っ赤にしたままゼーレンさんを睨みつけるフィル。
やれやれ、何と言うか場所が変わっても賑やかだね私の仲間達って。
「マスター、そろそろ我らの番が来るようです
冒険者証の提示の用意をした方が宜しいかと」
会話に参加せず、ずっと列の様子を見ていたリーゼが声をかけてくる。
おっと、じゃれ合うのはここまでにしておかないと。
「フィル、私の為に交渉してくれてありがと
けど、出来れば次からはその手の事に私も参加させて欲しいかな」
「………ええ、そうするわ
こんな事する度にアイツやスケベ爺にからかわれるのは
いくらレンの為だと言っても割に合わないもの」
私の言葉に苦笑しながら返してくるフィル、そしてすぐに笑い合う私達。
ホント、何やってるんだろうね。
そんな私達の様子をニヤニヤしながら眺めてるマリスと、不思議そうな顔で
見つめているリアを横目に、私達は自分の番が来るのを待っていた。




