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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
少女達の輪舞曲《ロンド》
11/209

冒険者の洗礼

「いきなり何の用ですか?」


対人モードになったフィルが警戒感を隠さず冒険者達に問いかける。

そんなフィルの視線も冒険者達はニヤニヤと受け流す。


「いや、パーティーメンバーを増やすって声が聞こえたから声を掛けただけだぜ

 丁度俺たちもメンバー募集をしてたところでなぁ」


リーダーらしき男がさも今聞いたという素振りで話すが嘘だ。

この人たちの視線はギルドに入ってからずっと感じていたんだよね。


「レベル10とレベル0の女なんて碌なクエストも出来ないだろ

 なら高レベルの俺たちが手伝ってやろうかって親切心が沸いたんでなぁ」

「うちのリーダーはお人好しで困ったぜ、ははははは」


全く、こうも心にもない事を言って女を見下す輩は何処にでもいるもんだね。

こういう輩はなるべく自尊心を傷つけない様にしてお帰り頂くのがいいんだけど。


「結構です、私達はまだ冒険者ではありません

 それに、私のレンより弱い人間をパーティに入れる意味はありませんので」


どうやらフィルはあまりこの手の輩に慣れてなかったらしい。

さり気に私を自分の物だとアピールしてるのはとてもらしいとは思うけど………

さて、フィルの言葉を笑って受け流す度量がこの人たちにあればいいんだけど。


「なっ!?このアマ………」


そんな私の希望も空しく冒険者達の沸点は簡単に頂点になる。

はぁ~、何と言うか私一言も喋ってないのにここまで予想通りとか

ため息しか出ないよね。


「レベル10程度が粋がるなよ………

 こちとらレベル35でキラーワスプも討伐出来んだぞ」


基準が解りづらいけどこの人達はそれなりに戦えるらしい。

けど、体幹や足の配置を見てたら素人が多少実戦を経験した程度みたいだね。

正直、フィルの言う通りこの人達に負ける気はしない。


「そうですか、ならば益々私達を勧誘する理由は無いですね

 申し訳ありませんが私達は人を待っているのでこれ以上はご遠慮ください」


これ以上関わりたくないのかフィルはそう言って目を閉じる。

何だろ、男性に対して結構攻撃的だよねフィルって。


「このっ………舐めやがって!!」


フィルの言葉に激高したリーダーが危害を加えるために手を上げる。

その手がフィルに向かって降ろされる瞬間!!


 がしっ!!


私は反射的に席を立ち、振り下ろされる寸前だったリーダーの手首を掴み

そのまま振り下ろせない様に自分の体幹を支えにし、固定する。


「なっ!!」


私の行動が予想外だったリーダーはそのまま硬直する。

私は小さくため息をつき、諭すようにフィルに話しかける


「フィル、ちょっと言いすぎ

 冒険者同士の揉め事ってご法度だってゼーレンさん言ってたよね」


その様子に、遠巻きに様子を窺っていた周りの冒険者達は騒然とする。


「なっ!?あの女いつの間に席を………」

「何だあいつ、ただのガキじゃないのか!?」

「おい、今の動き見えたか?」

「有り得ねぇ、冒険者でもねぇ女がレベル35の攻撃を抑え込んでやがる」

「おい、あいつのレベル見てみろ!レベル0《SystemError》って出てるぞ

 こんなの見た事ねぇ、レベル秘匿でもしてんのか!?」


周りの様子を気にもせずフィルは目を閉じたまま


「レベルを絶対視して見下してくる輩に揉め事を起こすなって方が無理よ

 どうせその調子て他の低レベル冒険者達を脅してたりしてたんでしょ」


その言葉にリーダーの顔が歪む、どうやら図星だったみたい。

まぁ私も薄々そんな気はしてたけど………

取り合えず事態を収めるために、私は手首を掴んだままリーダーに話しかける。


「一先ずこの子の言う通り私達はまだ冒険者じゃないし人を待ってるんだ

 この辺りでお互い引いた方がいいと思うけど?」

「なっ………て、めっ………放せ!!」


どうやら聞く気はないみたいだね、このまま手を離しても

碌な事になりそうにないけど、はてさて。


「ガディさん!!また揉め事を起こしているんですか!!」


ギルド内に凄く大きな声が響く、これは女の子の声?

私は声のした方へ向くと、そこには背の小さな女の子が怒りの表情で立っていた。


「なっ、アイシャ………ちゃん?」


女の子の姿を見た途端、リーダーは情けない声を上げる。

ん?アイシャってゼーレンさんが言ってたような………

女の子はリーダーの元につかつかと向かっていき、怒りの顔を

下からずいっと近づける。


「ガディさん!!いい加減にしてください!!

 毎度毎度こんなことばっかりやってると、資格を取り上げられますよ!!」


お~、可愛い顔をして自分より大きな男に説教してるよあの子。

私より年下っぽいけど凄い度胸だね。


「い………いやアイシャちゃん、これには訳があって」

「訳も何もないです!!こんな女の子に暴力を振るおうとするなんて

 それでも冒険者ですか!!」


女の子の声がギルド中に木霊する、小っちゃい体なのに凄い声量だねこの子。

周りを見るとか関係ない冒険者まで竦み上がてるみたいだね。

余りの声量にフィルもビックリした表情をしてる。

女の子はひとしきりリーダーを睨んだ後、私に向かって頭を下げた。


「申し訳ありません、うちのギルドの冒険者が失礼を致しました。

 ギルドの一員として謝罪致します」


あまりにもきっちりとした謝罪っぷりに私は一瞬呆気にとられ

思わずリーダーの手首を離す。

自由になったリーダーは気まずそうな表情をして離れていく。


「あ………ううん、気にしないで、特に何かされた訳じゃないし」

「ですが………」


女の子は申し訳なさそうな表情で顔を上げる。

うん、近くで見ると結構な美少女だねこの子。

フィルと言いこの世界は美人が多いのかな?


「ホントに大したことじゃないから、こう言う輩の相手は慣れてるし

 それに挑発する様なことを言った私達も悪いしね」


私の言葉に、フィルがちょっと気まずそうな顔をする。


「馬鹿にされて腹が立つのは十分に分かるけど、揉め事は出来る限り

 避ける様に立ち回ないとね、フィル」

「………御免なさい」


苦笑混じりの私の言葉に、フィルは素直に頷く。


「と言う訳だから、貴方も気にしないで

 これからお世話になるかもだし、しこりは残したくないしね」

「えっ、お世話になるって………冒険者になるって事ですか?」

「そう言う事になるね、見ての通り女2人で頼りなさそうに見えると思うけど」

「そ、そんな事ありません!!」


私の自嘲めいたの冗談に女の子は強く反発し、私の手を握る。


「手を見れば分かります、剣………では無いですが似た様な武器をお使いですね

 それによく鍛えられて引き締まった体です、これを見て頼りなさそうだなんて

 とても思えませんよ、それに………」


女の子は私の手を離し、フィルを見て


「貴方は聖教の神官様ですね、そんな方が冒険者になって下さるなら

 ギルドとしては大歓迎です」


女の子は興奮気味にそう言い放つ。

へぇ………見る目は確かだねこの子、持ってもいないのに

()()()()()()()を言い当てたなんて、流石ギルド員って感じかな。

まぁ、武器が持てない以上、それを披露することは無理だけど………


「凄いわね、見ただけでそんなことが分かるのね、貴方」

「この位できませんと、冒険者ギルドでは務まりませんので」


フィルの嘆称(たんしょう)に、女の子は笑みで答える。

ふむ、さっきの冒険者は兎も角、この子の受け答えからして

ギルドの役員は信用できそうかな。


「自己紹介が遅れてすみません、私は冒険者ギルドイヴェンス帝国支部の

【アイシャ=ラッセ】と申します」


女の子………アイシャと名乗ったギルド役員は佇まいを正し、奇麗な一礼をする。


「冒険者登録をしますのでこちらの受付カウンターへ来てください

 まずは貴方がたの経歴を書類に記入して頂きます」


アイシャちゃんに促されて私達は受付カウンターに向かい、渡された用紙を見る。

………そう言えば、私この世界で読み書き出来ないんだけどどうしよう?

これって地味にピンチじゃない?


「え、えっと、申し訳ないんだけど私読み書きが………」

「えっ!?そうなんですか?」

「あ~、こんな格好してるけどレンはこの世界に来たばかりの

 異世界人だから読み書きは無理なの」

「えっ、異世界人って事はまさか………」

「いいえ、レンは【勇者】じゃない、それは()が断言するわ」

「そ、そうですか、失礼しました」


………ゼーレンさんの時も言ってたけどこの世界の人達は

異世界人=勇者って認識なんだね。

後、こんな格好って言うけどこの服選んだのフィルだからね?


「御免なさい、もしかして文字が書けないとダメだったりするのかな?」

「そんな事はありませんよ、冒険者になろうとする人の半分くらいが

 読み書き出来ない方なので。けどレンさんはそんな風に見えなかったので

 つい驚いてしましました、申し訳ありません」

「いやいや、迷惑をかけてるのはこっちだから。それで、どうすればいいのかな?」

「私の質問に答えてくだされば結構ですよ、私が書類に書き込みますので」


アイシャちゃんはそう言って書類を出し、文字らしきものを書き込んで行く。


「えっと、それではまず………」


私はアイシャちゃんの出す質問に答えていった。

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