1Q-3
「やるな、アークロイヤル。その名は伊達じゃないね」
「やめてよレベッカ。その名で呼び始めたのあなたでしょ? こんなに広めちゃって」
「でも、ザ・エンペラー、鷲尾岬の再来だって持ちきりだぜ」
そんなことないわよ。とレベッカに手を振りながら、姫子は自陣へと戻る。
「凄いですね。ヒメ先輩。流石です」
「あれはたまたまよ、マキ。そう何度もいかないわ。確実な方法で点を取るのよ」
「はい!」
姫子はそう言うと、フィールド中央へと行き、またクロエとクロスを合わせる。
ドロー。
ボールはまたも、エンプラ校へと飛び、またも、アメリアがキャッチする。
そして、レベッカへのパスが通る。
(本当に上手いな、この2番)
姫子は、すかさずレベッカへと駆け寄る。
「私ばかりに気を取られていると、痛い目を見るよ」
レベッカはクロエへ、クロエはシャーロットへとパスを出す。
シャーロットはパスをキャッチすると、ゴール裏へと回り、レベッカへとパスを出す。
レベッカはキャッチすると、すかさずシュートを放つ。
「ちっ、外したか」
ボールは、枠にはじかれる。
それを西城蘭が拾うと、式島校のメンバーは一気に、敵陣へと滑り出す。
「戻るよ!」
レベッカの声が響き、エンプラ校も戻り始めるが、それより早く、蘭から、緒方涼、そして姫子へと、パスが繋がれていく。
そして、いち早く滑り出していた真希奈へとパスが通る。
「またあんたが一番乗りかい」
「ええ、それが取り柄なので」
イザベラの鋭いクロスが、真希奈のキャッチのタイミングに合わせて飛んでくる。
(やばい! 止まってたら、また叩かれる)
真希奈はキャッチと同時にそれをかわそうとして、体制を崩す。
ブーツは水面を滑り、跳ね上がり、真希奈の身体は宙返りする。
「こんのぉ!」
そのまま真希奈はクロスを振るう。
放たれたボールは、イザベラの股の間を潜り、ゴーリーのソフィアの横をすり抜け、ゴールへと吸い込まれた。