2/27
試合前
見つめる先には、揺れる水面がある。
と言っても、真希奈が今立っている場所も水の上なのだが。
巨大なプールの水面は、それほど揺れることはないが、側が海のため、浜風で屋内プールなんかよりは揺れる。
もちろん潮の匂いが鼻をくすぐる。
「緊張しているの、マキ?」
鳳姫子は、真希奈の肩に手を置く。
「大丈夫です、ヒメ先輩。たぶんですけど」
「心配ないわ」
そう言うと、姫子はスーっと水面を滑るように、中央へと向かう。
真紀奈は、その姫子の背中に書かれた8の数字を見つめると、目を閉じる。
深呼吸、背筋を伸ばす。
クロスを脇に挟むと、両手で頬を叩く。
「さぁ、やるか」
稲菊真希奈の初めての試合が始まろうとしていた。