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美少女が俺の部屋にやってきた

 俺の家は広いが、風呂は1つしかない。ちなみにトイレは3つある。風呂の時間は決めていて、かぶらないようにはしているが、同居している美少女は気まぐれで、予想もしない時間に風呂に入っている。割と気にしないタイプの女子らしい。まぁそのほうが気が楽でもあるが、迷惑でもあったりする。

 

 俺は大人だから、別に女子高生の裸などなんとも思わない。一応、彼女がいたこともあるし、分別はついているつもりだ。俺の両親もいるわけで、何かあるわけでもない。むしろ俺は成人した保護者だ。今日はカレンが早めに入浴したらしく、濡れた髪が美しい。この感想は、あくまで客観的に見て美しいと思っただけだ。俺の感想ではない。

 

「お風呂、きもちよかったよ。一緒に入ろうか?」

「あのな、そーいう冗談はやめろ」

「結構本気だったのに。ざんねーん」

 

 この娘はいつも俺をからかう。俺を大人の男だと思っていないのか? 風呂上がりの彼女はノーブラだ。別に彼女の胸を見ているわけではないが、目に入っただけだ。警戒心がなさすぎる。Tシャツ1枚に短パン姿。気にしないタイプなのだろうが、ちょっとくつろぎすぎだろ。

 

「ノーブラだから、見ないでね」

 彼女はあっさり微笑む。いつもいたずらな微笑みの中で……俺を揺さぶる。

 

 風呂上がりに美少女が水を口に含む。冷蔵庫からペットボトルを出し、そのまま一気飲みだ。水に滴る唇の艶が潤いが大人になる途中の色気を醸し出す。例えるならば、まだまだ熟していない青い果実。子供でも大人でもない、そんな年齢はこの時限定だろう。そんな貴重な時期を間近で感じられる俺は幸せ者か。いやいや俺としたことが、何を考えているのだ。

 

 俺は、彼女の唇に視線が釘づけになり、無意識に見とれていた。視線にきづいたのか、彼女がこちらを向いた。俺は慌てて、視線を逸らす。見てもいないテレビを見つめてみる。

 

 「先生彼女いないの?」

 カレンが話しかけてきた。この手の話はどの生徒も聞いてくる傾向にある。新学期によく若い教師が聞かれる質問だったりする。

 

「いない」

「だろうね。そんな気がする」

「俺にだって、かわいい彼女くらい、いたっつーの」

 少しむきになる俺。大人げないよな。

「今までいないほうがおかしいでしょ。その歳で。かわいい彼女?」

「俺だって高校の時は彼女いたんだけどな」

 結構前のことを自慢しているあたり、俺はモテません宣言をしているかのようで、情けなくなる。でも、たった一つの勲章を掲げないわけにもいかない。

「結構前だね、彼女の写真とかないの?」

「探せばあるかもな」

「卒アルみせて」

「アルバムは、俺の部屋だからだめだっつーの。立ち入り禁止」

「今だれもいないから、いいでしょ」

「だめだ」

 誰もいないからダメだというのに。突然、カレンが走り出す。俺の部屋に入る気か? あの部屋には色々な雑誌もあって、男には見られたくないものだってあるんだ……。

 

「待て、片づけたら入ってもいいぞ。今日だけ特別だからな」

「エッチな本とかあったりする?」

「ない!」

 

 俺は赤面した。バレている? 俺だって一応、男だ。俺は片づけて彼女を招いた。

「アルバム見るだけだぞ」

 

 カレンが独身男の部屋に入ってきた。普通担任教師の部屋に女子高生が一人で入るなんて、ありえないのだが、俺たちの場合は、同居だ。割とありうるかもしれない一幕だ。一応、グラビアとかの類は……は隠しておいた。

 

「卒アルどこ~?」

 美少女は、暇人で好奇心旺盛だ。俺なんかの高校時代の彼女を見てみたいらしい。

 

「たしかここにあったような」 

 俺が一生懸命探していると――。カレンは本棚に向かって背伸びをする。高いところにしまってある卒アルに手を伸ばした。

 

 彼女は背が低い。届きそうで、なかなか届かない。彼女の足がカクン、となって転んでしまった。傍にいた俺が必死で抑える。

 

「大丈夫か?」

 

 なんだ? 見つめあってるじゃないか? この態勢とこの展開……。俺の左腕で美少女カレンを支える。彼女は無防備に俺の腕の中にいる。離れろ……。おかしな空気にならないうちに。俺は心の中で叫ぶ。

 

 しかし、彼女は離れるどころか俺の腕に体重をかけて、そのまま倒れこんだ。左腕で支えられない。カレンはわざと倒れた。俺も一緒に転んでしまう。気づいたら彼女が下に、俺が上になって床ドンしていた。

 

 なんだ、この展開。この態勢を見られたら、絶対俺がカレンを襲ったと誤解されてしまう。確実に俺は仕事がクビだ。普通そう思うだろ。でも、これは不可抗力で……。

 

 彼女は瞳を閉じた。なんだ?? 受け入れるという体制か?? 俺は一瞬、考えた。このまま――?? いやまて、それはまずいだろ。まだカレンは17歳なんだから。

 

 

「ごめん、転んじまって。今アルバムさがすから」

「私はこのまま、なにかされても文句言わないんだけどな」

「あのな……」

 

 俺の理性の勝利だった。態勢を元に戻して、俺は立ち上がった。

「先生、さっき期待しなかった? いやらしいんだから」

「何も期待していないけど」

 

 俺は全力否定をする。この娘、心が読めるのか?? 俺は一瞬焦った。元彼女は甘酸っぱい青春の香りがする。青春真っただ中の17歳の美少女も目の前にいるが、想い出はまた別物だ。

 

 元カノはわりとどこにでもいそうな――中の上とでもいっておこうか。比較的クラスではかわいいほうだったと思う。俺は、高校になって初めて恋人ができた。

 

 高校の時、この人ならば付き合おうと思えた。人生初の彼女だ。つきあうきっかけは初彼女になる女性からの唐突な告白だった。バレンタインのときに、付き合ってほしいとまっすぐな瞳を潤ませて言われたのだ。正直戸惑いつつ、うれしくなった俺は、その場でOKした。今、思い出しても切なくて甘酸っぱい思い出だ。

 

 その彼女の写真を見たいと好奇心旺盛な俺の教え子カレン。カレンに比べれば、美人度は低いかもしれないが、俺の初カノの思い出は美しい。なんせ初交際の相手だったのだから。

 

「どの人? どの人?」

 アルバムを開きつつ、カレンはまるで間違い探しをするかの如く、真剣に写真を見つめる。カレンの二重の大きな瞳と長いまつげをこんなに至近距離で見たのは初めてだ。横から眺めると、やはりきれいな瞳をしている。そんなことに気づかずにカレンはアルバムを食い入るように見つめる。


「右上の一番はじっこの子だよ」

「へぇー、こーいう感じが好きなんだ?」

 興味津々のカレン。

「まぁ……」

 ちょっと照れくさい。

 

「彼女とどんなことしたの?」

「どんなことって?」

「デートしたり、キスしたり、その先だってしたんだよね?」

「はい、質問はここまで」

 俺はこれ以上 思い出を詮索されたくないので、彼女の質問をストップしてみた。

 

「彼氏、ほしいな~」

「いないのか?」

「校則で禁止されてるしね」

「そうだな」

 

 この年頃の女子高生というのは――とりあえず誰でもいいところがあって、危険な年頃だ。恋に恋しているのだ。

 

「先生、彼氏になってよ」

 告白か? からかってるんだな?

 

「先生は子供は相手にしません」

「さっき床ドンでドキドキしていたくせに」

「……」

 俺は、核心を突かれてしまい、一瞬何も言えなくなったが、とりあえず大人としてアドバイスをとっさに考えた。

「人と人には適切な距離があるんだから、異性に近づくもんじゃない」

「異性って意識していいの?」

 この娘はいつも挑戦的だ。

「大人をからかうな」

「ちょっと元カノに嫉妬しちゃった」

 

 なんだよ、急にしおらしくなって。俺の心が無意識にキュンとした。


 ♢♢♢ 


 俺は、花火大会や遊園地とは無縁だ。恋人がいないとそういった場所は、アウェイな感じがして苦手だった。お化け屋敷にカップルで……という経験もない。歳を重ねるたびに独身男にとって、行きづらい場所が増えるというのも困ったものだ。考えるとイルミネーションとか、1人だと行きづらい場所は結構ある。クリスマスと花火大会と遊園地は天敵だ。天敵と言っている時点で、リア充度が低いことがばれてしまう発言かもしれないが。人ごみに行って疲れて何が楽しいのか、理解すらできない。だったら家に引きこもったほうがいい。花火大会が今年の夏もあるらしい。もちろん行く予定はない。

 

「先生は花火大会行かないの?」

 カレンが唇をアヒル口にして聞いてくる?

 

「行くわけないだろ」

「先生、ぼっちだからね~」

 図星だ。俺はぼっちだ。

 

「一緒に行ってもいいよ」

 カレンが涼しい顔をしながら俺のベッドに横たわる。

「だいたい、学校の関係者にばれたらまずいだろ」

「私は、かまわないけど」

 

 カレンの表情は基本かわらない。大きな瞳でいつも俺を見つめる。するりと長い素足がきれいだ。モデルみたいなスタイルを持ち合わせている。

 

「俺的にダメ」

 というと、カレンはアヒル口をとがらせて 

「ひとなつの思い出がほしいのにな」

 意味深発言をする。このようなタイプが夏休み中に問題を起こしたりするものだ。教師としては目を光らせなければ。

 

「じゃあ他の男の子といくよ」

「男女交際は禁止ってこと、わかってるだろ」

「ただの友達ならいいんでしょ? 最近出会ったイケメン君がいるから誘ってみようかな」

「イケメン……? 出会った? とにかく 担任として許可はできないぞ」

 俺は少しムッとしていた。なぜだかもわからないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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