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話を聞こう

第四話 話を聞こう


 「風の魔法・・・素晴らしい。一緒にガレンドールへ行こう。世の中に革命を呼び起こそう」


 俺は声がうわずりながらロキの手を握る。


 「ちょっと、何よ革命って。死ぬのは嫌よ。それにガレンドールは田舎過ぎるので行かないわよ。手を離してよ」


 ロキは手を引っ込める。


 「ああ、ごめん。風の魔法と聞いて興奮してしまったよ。でもさ、もしロキの人生がどうにもならなかったらガレンドールに来てよ。風の魔法があれば楽しいことが出来ると思うんだ」


 「なによ、楽しい事って」


 「それはね、まぁガレンドールに行かないとわからないけど、楽しい事には風が必要なんだ」


 ああ、思わず興奮してしまった。マズイマズイ。


 ロキはエールを飲み干すと、部屋に戻っていった。ああ、まずったなぁ。俺もエールを飲み干すと部屋に戻り、眠りに就いた。


 翌日、ロルール村に行く馬車にロキが乗り込んできた。客は二人きりで、すぐに出発した。


 「あのさ、昨日はごめんな」


 ロキはあれ、と言う顔を見せる。


 「あ、いいのよ。でも誘ってくれて嬉しかったわよ」


 ロキはにっこりと笑う。


 「いや、俺さ、ロキの人生って言っちゃっただろ。エルフ生だよね」


 「あははは。どうでも良いじゃん」


 ロキは笑顔を取り戻した様だぞ。よかった。そうだ、聞きそびれた事を聞かないとな。


 「なぁ、教えて欲しいのだけど、加護ってなんだ?」


 「ブッ」


 ロキは口の中の柑橘を噴き出した。噴き出した先は俺の顔だ。うへ、顔がミカン臭い。


 「おい、汚いなぁ」


 俺はザックからタオルを取り出し、顔を拭く。


 「エージ君、本気で言っているの? あんた、もしかして召還魂者じゃないの?」


 え? 何故わかった? 嘘だろ?


 「その顔は図星ね? 昔、じいちゃんが召還魂者とパーティを組んだことがあるらしいのよ。召還魂者はとにかく常識が無くて困る、って言っていたわ。まるで違う世界から来たようだ、ってね。魔力はとんでもなくて、加護も火の妖精やら風の妖精やら、てんこ盛りなくせに、ってね」


 「・・・」


 「図星ね? あ、そうしたら魔法が凄いのよね? 召還魂者って強大な魔力でこの世の理を突き破って召還魂するからね。ね、魔法は何使えるの? 教えてよ。加護は何?」


 「・・・いやぁね、魔法は使えないんだよ。魔力ゼロ、加護も無しだって」


 「嘘よ、そんなわけ無いわ。召還魂を成功させるためには魔力が大きくないと駄目なはずよ」


 「しかたないだろ、ミサキとかいう女の子に巻き込まれたんだよ。俺。ん? あいつ自殺したのか?」


 俺は日本での人生最後の状況を思い出す。ミサキは俺に抱きついて駅のホームから転落し、電車に轢かれた・・・


 「巻き込まれたの?」


 「ああ。ミサキのついでに呼ばれちゃったみたいなんだ。クソ。思い出してきた。忌々しいクソ魔法使いめ」


 「そのミサキって言う人が召還魂者の魔法使い?」


 「ああ。十五歳くらいの女の子だったよ。俺のことをさ、ゴミみたいな目で見るんだ」


 「まぁそうよね。加護持ちは加護無しをゴミのように扱うからね」


 「そうなのか・・・」


 「そうよ。仕方ないわ。教えてあげる。加護はね、大地の神スクート、海の神コルート、太陽の神エスルート、戦の神ダンガグル、鍛冶の神ドゲングル、商いの神ジングル、風の神ニンファ、水の神シルファ、森の神ラシーファかな。有名どころではね。これらの神々の加護を持って生まれてくる人がいるんだよ。神殿でしか見えないけどね。加護を持つと魔力も持つんだ。魔法使いだよね。加護にもね、ランクがあってね・・・精霊の加護、妖精の加護、とランクがあってね・・・」


 「うんうん」


 俺は興味深く聞いている。ま、関係ない話だけどね。


 「妖精の加護になると、海の近くに住んでいたら海の妖精の加護は必ず付くし、家が鍛冶屋だったら鍛冶の妖精の加護は必ず付くよ。神の加護持ちは珍しいけど、妖精の加護持ちは珍しくないんだ」


 「ほうほう。人は皆必ず何かしらの加護を持っていると」


 「そうね。エルフは森に住むから、森の神ラシーファの加護が付いて魔法を使えるようになるのよ」


 「ほう。でもロキは違うと」


 「うん・・・私は風の妖精の加護よ・・・」


 「・・・そうか・・・国に戻っても大変だな・・・」


 「馬鹿にされるから、エルフの森を出てきたけど、こっちでもね、エルフのくせに魔法を使えないのかってね・・・魔法学校行ってみたけど駄目だったわね。まぁエージ君も加護無しだと大変だと思うけど頑張ってね」


 「ん? なんとかなるだろ? 別に加護が無くても。魔法は無理っぽいけどね」


 「そうでもないよ? 加護の下に、スキルが生まれるから。大地の神だったら農業とか、鍛冶の神だったら剣を作るスキルがあったと思うわ。鍛冶屋をもつにはね、火の神の加護も必要なんだ。鉄を溶かすからね。鍛治の加護だけの人は火の神の加護持ちに安く雇われて一生を終えるのよ」


 「ああ、そういうことかぁ。どうやって鉄を溶かしているんだと思ったよ」


 「そうよ。だから鉄は貴重品。もの凄く高いでしょう。エージ君の剣はこっちで買ったの? 金貨十枚したでしょう」


 「これ? 失敗作だっていうから、金貨一枚だよ」


 「ええ? やっすいわね! エージ君は幸運の女神の加護があるのかもね。幸運の女神の加護は見えないって言うし、神の名前もわからないんだ。まぁ十中八九幸運の女神なんてお方はいないのでしょうね」


 「ハッハッハ。それいいや。何か聞かれたら幸運の女神の加護です、っていうよ」


 「アハハハ。駄目よ。それって私ボンクラです、って言うことと同じよ。あそっか、だからガレンドールに行くのね」


 「ん? どうして?」


 「あそこなら田舎だし加護とか関係なさそう。アハハハ」


 どうやら、この世界はちょっと住みにくいらしいな。仕事は持っている加護に応じたスキルで決まるみたいだ。と言うことは、俺はなんの仕事にも就けない事になるな・・・王様はわかっていてガレンドールを進めてくれたのか。少し感謝しよう。


 「あ、言っておくけど王国の支配はナムドールまでで、ガレンドールは王国じゃないからね」


 ロキから不穏な台詞が飛び出したが、ロキに硬いパンを手渡すと囓り始めた。ロキよ、いっぱい食べて成長するんだぞ。特に胸な。

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