商会を設立しよう
第十九話 商会を設立させよう
「昨日は、すみませんでした!」
いつものように皆で朝食を摂っている。俺が焼いたパンに干し肉を挟んでいる。俺はパンを囓りながら白龍のゲルが頭を下げているのを見ている。晩、ガッコに飲まされたゲルは皆に絡んでしまったのだ。フレヤとガッコフルーグ、ゲルは旧知でであったらしく、再開を喜びに来た様だった。
「まぁ、それは置いておいてじゃな、今日からビールとやらを仕込もうではないか」
「じゃぁやりましょうか」
俺の家へ移動すると、火吹き石を取り出して薪に火を付けようとすると、ゲルが割り込んできた。
「ご主人様、火を付けるのであれば私にお任せ下さい」
ゲルがふうっと息を吐くと口から火を吹いた。太い薪にすぐに着火する。おお、流石龍だ。白い龍だから霧でも吐くのかと思ったけどね。
「みんなで道具を洗いましょう。最後にお湯で消毒です」
バットやら鍋、樽を外に持ち出して、川で洗う。洗い終わったら鍋で湯を沸かす。家に戻ると暑い。
「暑いわね。ガンガン火を焚いているから仕方ないのだけど」
フレヤが汗を拭う。確かに暑い。仕方ないだろう。
湯が沸くと、五十センチ四方の四角いバット、浅い容器をお湯で洗う。全部で十枚あった。洗い終わると大麦を敷き詰め、水を流し込む。
「よし、今日は終わり」
「むう? なんと!」
「ガッコ、そんなにがっかりしないの。あら? 誰か来たようよ」
俺は外に出ると、薪を積んだ荷駄馬車が来た。
「おはようございます。グエルターク商会です。薪をお持ちしました!」
黒いメイド姿のセリーリアがと、下働き風の男が乗っていた。セリーリアはグエルターク商会のお偉いさん、ヘン
リッキの娘さんだ。修行中なのでメイド姿なのかな?
男はせっせと薪を下ろし始めた。セリーリアは手伝わないのだろう。
「そこの壁でいいですか?」
俺が頷くと、薪を運んでくれる。
「後ですね、ベッドとテーブルが出来てます。明日お持ちしますね。きゃ」
ゲルがセリーリアの黒いメイド服を触り始める。
「私も欲しいです。この服を。ご主人様」
ゲルはしきりにセリーリアの体を触り始める。
「ちょ、ちょっと。エージ様のお付きの方がいたんですね。この前はいらっしゃらなかったんで。メイド服お持ちしますか? 一度採寸しますので商会に来て頂ければ」
「うん。じゃぁこれから行かせて貰うよ。まぁ紅茶でも飲みなよ」
俺が言うと、ゲルは紅茶を淹れてくれた。コップはもう少し良いのを買わないとな。ガッコフルーグとフレヤは帰ったようだった。
「美味しいです。あの、その」
「どうしました?」
「このお茶、商会に卸して頂けないでしょうか。ご無理な話なのは承知していますが」
「・・・あの、その・・・」
俺がなんて言おうが困っていると、ガッコフルーグが口を挟んできた。
「おっと、グエルターク商会のお嬢ちゃん。ワイヴァーンアックス商会会頭のガッコフルーグじゃ。商談はワシを通してもらわんと困るのじゃ。エアドール殿の商品はワシを全て通すことになっておるのじゃ」
「え? え?」
俺は驚いて変な声を出す。
「ガッコは商売のスキルと、農業のスキル、鍛冶のスキル、料理のスキル、戦いのスキルを持つ異才なんだよ。冒険者を辞めて商会を設立してあたいに会いに来たんだ。儲け話を見つけた様だね。寄生みたいな格好になるけど、エージ君にはちょうどいいんじゃない?」
「それでは、ガッコフルーグ様。お茶を取引させて頂くことで良いですね。非常に嬉しいです」
「構わんが、材料の供給がの、今のところ少量しか確保出来ないのじゃ。しばらくはごく少量の供給となるがの」
「わかりました。副会頭と話をさせて頂きます。あの、パンの方も・・・」
「うむ。話はわからなくも無いが、遠くへ運べないじゃろ」
「ええ。ガレンドールとナムドールの上流階級向けに注文販売という形になります」
「お、じゃ行くかの。すまんがちょっと我々で話をさせてくれんかの」
セリーリアは頭を下げ、先に家を出る。
「商会の会頭だったんですか。ガッコさん」
「おう。急ですまんの。社員はまだ三人じゃ。エアドール殿とフレアじゃ。利益は三人で山分けじゃ・・・白龍をどうするかのう。商会に龍がいるのはどうなのじゃ?」
「私はご主人様の個人的な奴隷ですので、報酬はお母様の破壊でお願いします」
「ふむ。ええかの?」
「ええ。これで僕の無加護を知られなくて済むんですね。ゲルはあとで報酬の話をしようね」
ガッコフルーグは頷くと、俺たちは外に出た。俺は今ある紅茶が入っている鍋と、パンが入っている鍋を持っている。ガッコフルーグが空荷になった荷駄馬車でガレンドールまで移動した。
「ふっふっふ。世界に羽ばたくワイヴァーンアックス商会じゃ!」
ガッコフルーグは少し興奮しているようである。まぁ俺が正面に出る必要が無いので良しとしよう。紅茶とビールを売る商会として利益が出れば、ミコドールの田舎でのんびりと暮らせるだろう。
俺は基本的な仕組みを考える。素利益の半分を内部留保として、残りを等分して分けるか。素利益とは、売り上げから材料費、固定費を引いた額だ。固定費は税金や人件費、家賃だとかだね。紙が流通していないので、会計なんかは存在しないだろう。存在しない以上、恐らく税金は無いかな? 無いけど色々と寄付だとかさせられそうだね。まぁ製造と商会への卸を行う商会として、小売りはしない方向で行きたい。
俺はグエルターク商会へ入ると、ヘンリッキがやって来た。
「エージ様。薪は届いた様ですね。テーブルとベッドは明日お持ちします」
「お父様! ちょっと」
セリーリアがヘンリッキと奥に入っていく。しばらくすると出て来た。
「紅茶とパンを当商会と取引していただけると、セリーリアから聞きました。少しお話させて頂いてよろしいですか」
「うむ」
ガッコフルーグは大仰に頷く。この前の会議室っぽい部屋に通された。
「初めまして。グエルターク商会副会頭のヘンリッキです」
「うむ。ワイヴァーンアックス商会会頭のガッコフルーグじゃ。社員は知っておるかと思うが、副会頭のフレアとエージ殿じゃ。エージ殿は天空の人形の二つ名持ちじゃ」
「え、その名は? ああそうですか・・・もしかしてガッコフルーグ殿はフレヤ様と同じパーティーでしたか」
「お父様? パーティ?」
「ああ。このお二人はAランク冒険者パーティ、エアドールのお二人だ。Sランクを蹴ったと言われているお二人だ。会頭と副会頭が最高戦力とは恐ろしい商会です」
成る程と俺は思った。ガッコフルーグに商売のスキルがあるらしいので、俺は座っていれば良いだろう。商売のスキル、見せて貰うぜ。
いよいよ商会の設立です!
原稿用紙200枚も書いて、お店がなかなか出店出来ないのでどうしようと思っておりました。
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※私事ですが、これからキャンプに行くので明日の更新は難しそうです。
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