七夕と色欲と(10/1)
お題「光の川」
織姫と彦星が居たそうな。
二人は、それはとても仲が良かったが、とある事情で一年に一度しか会えなくなっている。
それが、七夕。
これは、そんな天の川と織姫と彦星の話。
「な、なんてすさまじい勢いだ! これではまるで越えられないッ!」
天の川、それは織姫と彦星を隔てる呪いの壁。
今、彦星は七夕というルールを無視し、彼女に会いに行こうとしている。
襲うは星の濁流――彦星の体力は、じわじわと失われていく。
だが彼はあきらめない。さながら、川を上る鮭のように、その歩を止めなかった。
その日は失敗に終わった。
彦星は結局、川を越えられなかったのだ。
ある日のことである。
いつも通り、彦星は川越えを行おうとしていた。
ふと、何かを思い出したように川を見つめる彦星。
「……そうだ、俺飛べるじゃん」
全神経に念じる。体よ、浮け――と
やがて願いが通じたのか、彼の体は3mmほど浮いた。
「3mmも浮ければ……十分ッ!」
疾走。川の上を、猛スピードでダッシュする彦星。
あまりの速さに川を漂う星は砕け、光となる。
それはまるで、ビッグバン。宇宙の創造を、彼はひとりで成し遂げたのだ。
岸の向こう側が、見える。
数百m、数十m、3m、2m、1m――
見えたッ! 岸の向こう側ッ!(味の向こう側風)
跳躍、飛翔。狙うは織姫ただ一人。
彦星は一直線に織姫のもとへ駆けた。
疾駆。
宇宙には空気はないが、その時勢いのあまり、疾風が生じた。
ノックもせず、彦星は織姫の家へ飛び込んだ――
「ひ、彦星様ッ!?」
だが、彦星が見たのは地獄だった。
織姫が、別の男と馬鍬る姿をその目に焼き付けてしまったのだ。
ま、一年も離れてたらそうなるよね。




