ゆるキャラバトルロワイヤル (9/26分)
お題「ゆるふわな妄想」
ここはどこだ……?
男は、微睡の中にいた。そこが現実なのか、夢なのか。はたまたどこか別の世界なのか。それは誰にもわからない。
男は歩いた。当てはないが、その場にいてもどうしようもないため、ただひたすら歩き続けた。
「よう、兄ちゃん。待ってたぜ」
前方から声が聞こえた。ただし声だけだ。霧のせいでよく見えない。
霧が少しずつ、晴れていく。
するとそこには――
――ゆるキャラがいた。
「オレはモーモー道民、北海道のゆるキャラさ! さぁ、勝負しろ!」
モーモー道民は構える。その愛くるしい見た目とは裏腹に、恐ろしい見た目をした得物を。
薙刀。
男は、それを認識し、理解した。
ああ、そうか。これが――
俺の求めていた世界。
男が懐から取り出すは斧。大きな斧だ。命を取り上げるには、十分な重さと歪さだった。
男は一気に駆け抜け、モーモー道民へ肉迫する。
一閃。
横へ薙ぎ払われた斧の刃が、モーモー道民を二つにする。
「そうだ、それでいい。さぁ、行くのだ。 たこ焼き明石マンよ……」
モーモー道民はそう言い残し、息絶えた。
男は思い出す。そう、自分はゆるキャラ『たこ焼き明石マン』
今、彼は全国ゆるキャラサバイバルの真っ最中だったことを。
「モーモー道民が敗れたか……」
「ふん、奴はわれら同盟の中でも最弱よ」
背後から新たな声。それは、たこ焼き明石マンへの新たな刺客を意味する。
「お前らは……!」
ろーめん長野エッセンシャル、幕末サイゴーカーゴ団長。
どちらも長野、及び鹿児島のゆるキャラだ。
そして、彼のかつての仲間でもある。
「どうして俺たちは戦わなければならないんだ!? 仲間だろう」
ろーめん長野エッセンシャルは口を開く。
「お前は、負け犬だ」
「……なに?」
「今の今まで、自分が何者かも――」
ろーめん長野エッセンシャルの顔が険しくなる。
「忘れていたくせにッ!」
「なんのことだ!?」
「今から思い出させてやるよ……」
ろーめん長野エッセンシャルが構える武器は、双剣。
瞬間、歩を詰めたろーめん長野エッセンシャルの双剣が、たこ焼き明石マンの首をとらえた――
「と、いうプロローグどうかな?」
彼はしがない作家。売れない作家。たった今、ゆるキャラを使った作品を考えていたのだ。
それをジト目で見ていた編集者は、こう言った。
「妄想、乙」
と。




