アー(ルパ)カー王伝説 (9/25分)
お題「宿命のアルパカ」
「孫や、アルパカって知っているかい?」
「あるぱかー?」
アルパカ――
哺乳類の一種で、羊のような、ヤギのような、もこもことした毛皮を身にまとい、少し首が伸びた生き物である。
おばあさんは、たった一人の孫にアルパカについての昔話をしていた。
「そうさ、アルパカさ。これがとてもいい毛並でねえ。かわいらしいんだ」
「そうなんだ~」
おばあさんは、どこか遠くを見ていた。まるで、遠い昔、アルパカに対して忘れられない思い出があるような、思い耽る目をしていた。
「私はね、子供の頃からアルパカと一緒に暮らしていたんよ。私のおじいさん、おばあさん、おとうさん、おかあさん。そして、孫から見たら、おじいちゃんに当たる人もね」
よぼよぼになったその両手で、孫の小さく、なめらかな手をしっかりとおばあさんは掴む。
「いいかい、孫よ。アルパカはとてもいいやつさ。だから、大切にしなさい」
真剣なまなざしで言い聞かせるおばあさんを見て、孫は大きくうなずいた。
「うん! わかったよ。アルパカ、大事にする!」
その答えを聞いて、おばあさんは笑顔になる。まるで、その答えを聞いてもう思い残すことがないかのように。
「そりゃあ、良かったねえ……」
するり、とおばあさんの手が、孫の手から滑り落ちた。
それは、命の灯が消えた証。
たった今、孫の答えを聞き、安心してこの世を去ったのだ。
「……おばあさん」
孫は泣かなかった。
いや、正確にはまだ泣いてはいけないのだ。
そう、あの者を倒すまでは――
孫は視線を変え、一人の老人をにらむ。
かつて、孫の祖父だった者。
かつて、おばあさんと共にアルパカを愛した者。
その老人に優しい面影はない。ただアルパカを惨殺するだけの殺戮マシーンと化していた。
あるのは狂った執着心だけだ。
「行こうか、アル……」
孫は一匹のアルパカ、”アル”に声を掛ける。
その呼びかけに答えるよう、アルの体は光り、やがて一本の武器となる。
聖剣、エクスアルパカー。唯一アルパカを救うことができる、伝説の剣。
「おじいちゃん! 覚悟!」
孫はエクスアルパカーを構え、果敢に突貫する。
世界のアルパカを救うために――




