セクシー戦争(9/21分)
お題「セクシーな人間」
「うっふんあっはんすっぽんぽん~~~」
屈強な男が、いやらしいポーズをしながら怪人を叩きのめした。
彼はセクシーの味方、セクシーマンレッドである。今日もこうして、セクシーパワーを使い、怪人をちぎっては投げ、ちぎっては投げていた。
「ありがとう、セクシーマンレッド!」
解放された人質の一人である子供がセクシーマンレッドに駆け寄る。
「怪我はないかい? 坊や」
セクシーマンレッドは、ただ敵を倒すだけではない。一般市民の精神的アフターケアも欠かさず行っている。
そう、セクシーマンレッドは今となっては社会に欠かせないヒーローとなっていた。
「ところで、セクシーマンレッドさん。知っていますか?」
「何をですか?」
子供の母親らしき女性が、彼に耳打ちする。
「いま、ちまたでセクシーマンブルーというヒーローが暗躍しているという噂ですよ」
「な、なんだとっ!?」
セクシーマンレッドは戦慄した。まさか、自分以外にもセクシーを武器に戦っている人がいるとは思ってもいなかったからだ。
衝撃の事実にうなだれていると、唐突に彼の上空に雷雲が立ち込める。
「誰だ!?」
上を向き、セクシーマンレッドは叫ぶ。
「ふはははははは! 私はセクシーマンブルー! セクシーマンレッド、君に勝負を挑みに来た!」
「な、なんだと!?」
セクシーマンレッドは思った。どうして、セクシーを愛する者同士が戦わなければならないのかと。
「セクシーマンブルー! 同じセクシー同士、ここでは手を取り合おうではないか!」
「断る!」
「なぜだ!」
「なぜならそれは――」
瞬間、暗雲から一筋の雷光が落ち、地面を割く。そこにはさながらヒーローのように着地ポーズを取る、青いタイツの男がいた。
真っ赤なタイツの自分とは対照的な相手に驚きを隠せないセクシーマンレッド。
彼をまっすぐ見据え、青い男――セクシーマンブルーは宣告する。
「なぜならそれは、セクシーはこの世で一人で十分だからだ!」
跳躍。セクシーマンブルーは渾身の力を右腕に込め、セクシーマンレッドに肉迫する。
「うおおおおおおおおおお! セクシーマンブルー!」
かくして、20XX年、第一次セクシーダイナマイト戦争のゴングが鳴り響いた。
だが、彼らはまだ知らない。この世界は、セクシーに満ちている。
まだ見ぬセクシーヒューマンが、彼らを倒さんと待ち構えていることに――




