男根祭り(9/18分)
お題「知らぬ間の男祭り!」
「お前も来るよな? この男根祭りに」
そう言って、一枚のチラシを彼は僕の目の前に突き出す。
眼前に広がるは、屈強な肉体を持った裸の男達がまわし一丁で神輿を担いでいる光景だ。
汗と泥にまみれたその男臭さに、思わず見ているだけで男の僕でも妊娠してしまうのかと勘違いしてしまうほどだった。
人によってはそれを高貴で淫靡なものと肯定するかもしれない。だが、男性である僕にはどうしても受け付けることができないものがあった。
「……いや、行かないけど?」
当然の返答を彼に返す。当たり前だ。問い詰めたい内容は数えきれないほどあるが、なによりもこのいかがわしい名前はなんなのだ。この名前は公共に晒していいものなのだろうか。
「どうしてさ。別にやましいことなんか何もないぜ? 名前以外は」
どうやらこれを進めてきた彼も、名前に関しては気にしていたらしい。
そもそも、だ。
「君はいいさ。このチラシに見合うほどの体を持っているのだから。だけど僕はどうだ? 君は僕の体系を見て、まだそんなことが言えるのかい?」
そう言って、僕は彼の肩を軽くたたく。スーツ越しからでもわかるほどの屈強な筋肉の張りが伝わってくる。
僕と彼は、ごくごく普通の会社の、普通の営業課だ。特にこれといって世の中の会社とたいそれた違いはないだろう。なのに、どうして彼はここまでたくましい肉体を持っているかというと……
「まぁ、俺は筋トレが趣味だからな。筋トレはいいぞ。お前もやったらどうだ?」
筋トレ、即ち筋肉トレーニング。小学生のころからの付き合いだが、彼は初めて出会った時から筋肉に対して異常な固執を拗らせていた。その結果、理想の肉体を求め、筋肉ダルマとなっている。
それに比べて僕の体はどうだ。肩から腹筋にかけ、手を添えるように優しくなぞっていく。彼のような張りつめた筋繊維などどこにもない。あるのは皮下脂肪が詰まったふくよかな感触だけだ。
「いいからお前も来いよ! な!」
「ちょっと待ってくれ。僕は別に――」
その日、僕は彼によって女にされた。