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自分の愛するペッケンが居なくなる前、周りの人々は熱がこもった状態であった。
今から思えば少なからず兆候があったのかもしれない。
どこからともなく現れたサーカス団、こつぜんと訪れては犬を言い値で買い取ると言い出した。
その頃の自分はまだ他人事の様に思っていた。
どうせ、ごくわずかな希望者が名乗りを上げるだけ。
『自分は関係ない。まあ念の為、家の中で飼う事にするが。』
その考えが甘かったと思い知ったのは自分が留守中にペッケンを奪い去られたからだった。
「ちくしょう・・・。なんてこった・・・。まさか家の中に入られるとは・・・。」
考えてもらちが明かない。
しばらくペッケンの安否を心配する日々が続いた。
ある日、サーカス団の近くに行くと案の定犬を持ち込む行列が出来ていた。
それとは別に人だかりが出来ていた。
みな首に装飾品を着けており、男は緑色、女は赤色だった。
だが周りはなぜか柵に覆われどこかに連れていかれるみたいだった。
気になった自分は何事かと事の成り行きを見守っていた。
柵の周りにはそれを見学している者がいた。
自分はその1人に聞いてきた。
「いったい、この集団はなんだい?」
「いや俺も聞いた話だが、買い取りされた犬達らしいぞ。」
「どういう事だ?」
「俺も詳しくは知らんがほら証拠にみな首輪を着けてるだろう?緑と赤のやつ。」
「ああ、それは見てわかった。
でもこの集団はどこに行くんだ?」
「ここだけの話、買取された犬達を選別してヒト化されてどこかに連れていかれるらしい。」
「そんな事あるのか?」
「さあな、俺も聞いた話だから真偽はわからんがね。」
まさに眉唾もんだな。
買い取られた犬達がヒト化されてるなんて信じられなかった。
どこに連れていかれてるのか疑問に思ったが、まさかヒト化させる技術があるなんてな・・・。
「まあ、なんにせよ深くせんさくしない方が身のためかもしれないぜ。」
「助言ありがとう。」
「な~に、いいってことよ。」
ひとまずその場を離れ場所を移動した。
しばらくして、どこからともなく自分に声が掛けられた気がした。
いよいよ主人公の登場であります。
ペッケンの登場も近々になります。




