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私は聞いて脱力したのを覚えている。
『この守銭奴が!きさまも表では可愛い言いながら、裏ではあくどい商売してるのだろう!少しばかり我々にもおこぼれをくれてもいいじゃないのか!』
等々、ばりぞうごんをあびせ日に日に可愛がっていたペットを持ち去ろうとする住民達。
いまだに原因を理解していなかった私は恐る恐る聞いてみた。その答えは驚愕した物であった。
「はっ!知ってるくせになにかまととぶってるんだよ!知りたちゃ犬をくれるなら教えてもやらない事もねえぜ。」
「そうだな。いい考えだ。俺にも説明してやるから犬をよこせやがれ!」
この騒動の原因を知りがたい為に渋々交換条件にのった。どう考えても私には損しかないのだけれども。
「最近ちまたでは、犬をサーカス団に持ち込むのが流行っているらしいぜ。なんでも言い値で引き取ってくれるらしい。俺もおこぼれにあやかりたいと思ったがあいにくペットの犬はいない。そんな中ここ近所じゃ有名な愛犬家であるお前の犬達の事を思い出したのさ。」
「そうだ俺も俺も。お前は産まれた子犬をただであげてたんだろう?そんな甘ちゃんならどんな犬でもくれると思って来たんだ。そうだろ!みんな!」
「「「おおおお~~~~」」」
「だからこそ俺たちにもおこぼれをよこせっていうんだよなぁ~。」
「今まで鳴き声に散々迷惑していたんだ。これくらいの事で迷惑料代わりになるんだから安いもんだろう?ああぁ?」
「そらみんな!許可も得た事だし堂々と犬を持ち去れるぞ!よりどりみどりだぜ!今から売却値が楽しみだぜ!」
「たまんねえ~、たまんねえ~」
等々、騒がしくなってきたものの一応情報を得る事に成功した。代償は大きかったけれど。
その日以降、我が家にはもはや盗人と言える程暴徒化した人々が押し寄せていた。
「おらおら~!犬をまだ持っているのだろう~!俺達にもよこせや~!」
「聞いたぜ!一部の者にはただでくれたのに俺達には渋るなんて反則だぜぇ~!」
情報収集の一環として仕方なく譲ったのはまだ我慢できる。だが今来てる人々はもやはただでくれると思い込んでいる盗人同然である。とても我慢できる物では無かった。
が、しかし何もできないでただ奪い去られるのを泣く泣く見るしか出来なかった自分が歯がゆかった。
そうして庭で飼っていた犬達の大半が持ち去られた所、騒動は沈静化した。
かに思えた。この時は・・・。




