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第4章 2011年10月 チャレンジレース 第96話

第96話【宮本健】


「お待たせ」

 輪太郎が一瞬、えっ! と言う表情を見せた。


「おせえんだよ」

 驚いた表情は一瞬で、すぐにいつもの輪太郎に戻った。

「なんとか追いついた。アシストしてもらったんだ」

「なにコケてんだよ。何のために今まで朝練してきたんだよ。ケガ、大丈夫なのか」

 よく見たら右肘と右膝からかなり出血していた。


「気がつかなかったよ。走れているから大丈夫だ。作戦とおりで良いよな」

「ムサシが走れるなら当然だろ。追走で脚使ったろ。ムサシは鶴カンになるまで前に出るな。後ろで脚を溜めとけ。のんびりしてたからちょっとペースアップしてくる。このペースのままじゃ後続に捕まっちまう。鶴カンの入り口までで人数絞って、鶴カンでムサシのアタックだ」


 輪太郎は加速して先頭に出て行った。輪太郎はまだまだ余裕がある。僕はしばらく最後尾で心拍を落ち着けて回復を待った。ロードレースは限界を超えた走りをしなければ、限界で全てを出し切ることがなければ、疲れていてもレース中に回復することができる。


 たぶん、それはマラソンとは大きな違いだと思う。僕はマラソンを走ったことがないけど、マラソン中継を観ているとゴールに向かってどんどんきつくなっていく気がする。例えば中間地点できつくなってしまったら、とてもゴールまでもたないと思う。

 でも、ロードレースは、レース中にも緩急がある。中盤の勝負どころが一番きつい時もあるし、集団ゴールでスプリントになれば最後はガツンときついゴール勝負がやって来る。


 しばらくおとなしくしていたおかげで僕の脚は随分軽く回るようになった。これなら、この先の鶴カントリーの登りや古賀志林道の登りも対応できる。チャレンジレースは、森林公園の大回り周回14kmが1周目、小回り周回10kmが2周目になる。1周目の最後は鶴カントリーの登りを登って下りれば、スタートゴール地点だ。


 通称、『鶴カン』。このレースの中での最大斜度は、この鶴カンの登りだ。距離は短いけど、斜度がキツいから脚の差が出る。しかし、距離は短いのでクライマーじゃなくてもパワースプリンターでも馬力で登りきれる距離だ。鶴カンの登り、ここから本当の勝負が始まる。僕と輪太郎はレースという勝負の舞台で2人で他の選手を相手にしようとしている。そして、最後は2人で勝負しようとしている。


 第97話に続く


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