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第4章 2011年10月 チャレンジレース 第94話

第94話【宮本健】


 五十嵐さんと田代さんは、2人で僕をアシストして先頭集団に復帰させようとしてくれていた。自分のレースを捨てて。2人のローテーションは息がぴったりで速かった。

「決めた。どうせな、勝負に絡めないなら、せめて勝負の展開に絡んだほうが面白いだろ。俺達がアシストした仲間が優勝ってカッコ良いだろ。ただ走るより俺達もカッコいいだろ」


 そう言って前に出て先頭を引く五十嵐さんの背中にカッコ良すぎますよと僕は言ったけど届いたかな。いつものクロモリのロードバイクでなく通勤用のロードバイクでTシャツに短パン、体のあちこちの擦過傷にガーゼが貼ってある。それでも僕を先頭集団に復帰させようと激走している。


 僕は2人の後ろから追走しているからついていけるけど、2人で回すには限界に近いペースだ。後続を引き離し先頭集団の背中が近くなってきた気がする。追いつけるかもしれない。


「あとひと踏ん張り」

 五十嵐さんに代わって先頭に出た田代さんが後ろを振り返って言った。先頭集団の背中が更に近づいてくる。田代さんはいつもサイボーグみたいな正確なペダリングをするけど、後ろから見ていると今は肩も揺れているし無理やりガチャ踏みしているようなペダリングで猛烈に苦しそうだ。


「最後の仕上げ行くぞ!萩の道の登りで捕まえる!」

 五十嵐さんが宣言した。

 田代さんが下がってきた。

「ムサシ君、勝てよ!」

 田代さんが限界まで引いてくれてた。田代さんが下がっていく。自分のレースを捨てて僕のために走ってくれたのだ。


 五十嵐さんが重いギヤをグイグイ回す。これで絶好調だったら、先頭集団に残っていたのは間違いなかっただろう。うりゃああと雄叫びを上げながらダンシングでペースを上げていく。こりゃアタックだよ。ずっと引いていてもらっている僕だってしんどくなってくる。


「ムサシ、いけ!!」

 僕は五十嵐さんを交わして萩の道の登りに入った。もう先頭集団は捉えられる位置にいる。後ろからムサシ行け~っと五十嵐さんの声が聞こえる。


行きます。2人の気持ちを背負ってゴールに向かって。


第95話に続く


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