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challenging-現在進行形な僕らは 第1章 2011年8月 海と出会いと悲しみと 第9話

第9話


 あと1ヶ月ちょっと。トライアスロンのバイクパートは輪太郎に走ってもらえば圧倒的だ。輪太郎はもう部活としての活動は終わっているらしい。大丈夫かな。あれ、国体がなんとかとか言ってたか? 僕は一緒に出るというよりマネージャーだ。輪太郎と福井さんと香川さんと出られるなら縁の下から盛り上げていきたいね。そういうのなら得意なんだよね。問題は2人だ。出てくれるかな? 香川さんのスイムは大丈夫かな? 福井さんは今は走ってるのかな?ランは大丈夫かな? 考えても仕方ない。輪太郎にメールした。しばらくして携帯が鳴った。


「面白そうじゃん」

 輪太郎も声が弾んでいた。バイクパートなら輪太郎が走ればブッチギリ。本気で走ったら反則技な気もするけどさ。輪太郎が大丈夫なら健全に2人を誘える。香川さんも泳ぐのが好きと言ってるから、勝ち負けは置いておいて一緒に楽しめると良いな。想像だけが先に膨らんで輪太郎に福井さんにお誘いメールよろしくと言ったら。

「ムサシが連絡しろよ。福井さんにムサシに2人のアドレス教えていいかどうか聞いとくから。香川さんのアドレス教えてもらったらムサシが2人を誘え」

と断られた。輪太郎いわく「自分で誘いたいなら人をアテにするな」だそうだ。


「福井さんに香川さんの震災のことは触れて良いかどうかは確認しとくけどな、最初に香川さんに、「状況聞いたから」とちゃんと言え。じゃないとあとから気まずいぞ」

「頑張ってとか時間が解決するからとか余計なことは言うなよ。分かったような振りする相手に、分かった風に言われて香川さんが救われるとは思えないからな」

「ストレートに、「一緒にトライアスンロン出よう。」とちゃんと誘え」


 輪太郎が一気にアドバイスしてくる。ただうるさくて自信家なだけじゃないのが輪太郎のすごいところだ。輪太郎の言うことは分かる気がする。香川さんのことを大切に考えるなら変に気を回すよりストレートに行けということだろうな。

 いろいろ考えても仕方ない。もし香川さんがこの誘いにOK出してくれて、トライアスロンが終わったら、まっすぐに素直に気持ちを伝えよう。たった1回あっただけだけど、決めた。そう決心した。


 その夜、輪太郎から教えてもらった福井さんと香川さんのアドレスにメールした。

「宮本です。2人のメールアドレス、輪太郎に教えてもらいました。実はトライアスロンのお誘いです。9月下旬に、真岡市にある井頭公園とそのプールで開催予定のトライアスロンがあります。あ、トライアスロンと言っても、リレー部門でのエントリーです。

 スイム300mに、バイク20km、ラン5km、それぞれのパートに分かれてリレーみたいに走ります。バイクパートは輪太郎が走ります。僕はマネージャー。スイムが香川さんでランが福井さん。みんなでエントリー出来たら楽しいかなあと思ってます。輪太郎はブッチギリで激走しちゃうと思いますが、2人は楽しんで走れれば良いんじゃないかな。もちろん、どうせやるなら本気で走る!というのもアリです。どうでしょう? 都合がついたらぜひ」


 2人にメールした後、香川さんにもう1通メールした。

「宮本です。福井さんから香川さんの家族のこと、震災のこと、教えてもらいました。あまりにつらい状況に僕はどうしたらいいのか、実は全く分かりません。トライアスロンに誘うなんて状況じゃなかったかもしれません。だけど、香川さんと福井さんのこの前の海辺での印象が強くて、一緒に参加できたらすごく楽しいかも?と思えました。つらい時でもちょっとでも楽しめそうならと思った訳です。もし、都合がついたら一緒に参加しましょう」


 内容的には香川さんに負担にならないようにと控えめに誘おうと考えたつもりだけど、やっぱり送ってからいろいろ考えてしまった。こんな誘い方をして大丈夫かなとか。

 そもそも都合が悪くてエントリーできないなら、それは仕方がない。香川さんの気持ちがとてもそれどころじゃないなら、それも仕方がない。でも参加できたら、すごく楽しみだ。どうなるだろう。

 その日の晩は、返信はなかった。ずっと返信をまって携帯の液晶を眺めている自分は、ほとほと恋愛初心者だよなあと自分自身にあきれてしまう。


第10話に続く


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