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第4章 2011年10月 チャレンジレース 第87話

第87話【香川 律子】


 頂上手前からの輪太郎君の加速は凄かった。

あのスピードで登りで抜かれたら対応できない。


山岳賞を取ったのは、ムサシ君じゃなくて輪太郎君だった。いつもの勝って当然みたいな輪太郎君じゃなくて死に物狂いで勝負に出たという感じだった。そうよね、晴ちゃんと晴ちゃんのお父さんがいるんだもん。


 私が、コーナーから現れるムサシ君をみたときの感動は、伝えきれないと思う。もうそれだけで十分。私はこれだけ本気でムサシ君を応援して、ムサシ君は本当にヒーローみたいな活躍をして、そのおかげで今日1日だけでどれだけ気持ちが充電されたか分からない。


 そして、ムサシ君、私はものすごい感動してるの。目の前を通り過ぎるとき、ムサシ君は右肘と右膝から出血していた。落車したのはムサシ君だったのね、そして追走して追いついたんだ。落車の後の追走がどれだけ難しいかは私も分かる。そして、輪太郎君とアタックして、あのコーナーを先頭で駆け抜けてきてくれた。


「ムサシは落車したんだな」

 おじいちゃんも気がついていたんだ。


「落車して、追いついて、そして先頭で登ってきたんです」

 私は泣きそうになるのを堪えて答えた。

「ムサシは勝てるのか。今日は、勝たせてやりたいなあ」

 おじいちゃんはムサシ君のレースを見るのは初めてだという。もしかしたら、レースを応援するのは今日が最後になってしまうかもしれない。

「平地で2人で逃げ切るのは難しいんですけど、ムサシ君と輪太郎君なら、きっとあの2人なら大丈夫だと思います」


 私は絶対に勝てますとかは言えなかった。追走の5人くらいの集団も良いペースで登っていった。どれだけ差がついたか。うんと差がついたような気もするし、あっという間だった気もする。私は、タイム差を計ることさえ忘れていた。ここから2人で逃げ切れるだけの秒差がついただろうか。お願い。2人に勝たせて。


 ムサシ君と輪太郎君が通過したあと、勝利さんが私たちを急かした。

「今からならゴールに間に合うぞ。ゴールまであと15分あるかないかだ。ここからゴールまで2kmくらいだ。普通の女の子じゃとても間に合わないけど。

きっと2人なら間に合う。ゴールに間に合うよ。急げ」


第88話 に続く


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