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第4章 2011年10月 チャレンジレース 第73話

第73話【宮本 健】


 勝てばいいだろって、簡単に言うね。そういうのが輪太郎のすごいところだと改めて思う。

 そのあと、僕らは主戦場になる古賀志林道の登りをウォーミングアップがてら登ってみる。相変わらず霧雨みたいな天気だけど寒くはない。登りで試しに思い切りレースで走る強度で踏み込んでダンシングしてみると後輪がズルっと滑ってバランスを崩しそうになる。


「ムサシ、こういう場合は登りのダンシングで均一にトルクをかけることを意識しないとパワーを逃がすぞ。ヘタすると登りでもコーナーでスリップして転倒するぞ」


 後ろで見ていた輪太郎に言われた。なんでそう冷静に分析ができるのか、輪太郎はすごいなと思う。

 もっとすごいのは口だけじゃなくて、きっと本番でもそういう対応が出来ることころだ。経験値が圧倒的に違う。僕は輪太郎に勝てるのかと改めて思う。

 でも、勝負するんだ。まずはこの登りで。ウォーミングアップなので、まずは息が軽く上がる程度のペースで山頂に到着する。僕は山頂に律ちゃんの応援する姿と、先頭で通過するところをイメージした。そのイメージは実現するだろうか。


「輪太郎、下ってみるか」

「ああ、コケの具合も最後まで確認したいからな。ムサシのキレ具合も想定しないと」

 この時期は、ほんとにコケが大敵なのだ。日陰のコーナーはコケで滑る。油断ならない。昨日、コケの除去はしてあるはずだけど、昨日と今日でもコンディションは変わる。毎年、この時期に転倒してケガしてレースに出られない朝練のオジさんたちがいるんだ。


 対向車はもう入ってこない時間帯だけど、ロードバイクが登ってくる可能性があるので、本番を想定しての限界でのコーナーリング、つまりセンターラインを超えたコース幅を最大限にとってのコーナーリングはまだできない。それは本番にとっておこう。本番なら、先頭を走れれば、周囲を意識しないで全開で攻められる。


 道路幅を最大に使ってのラインの確認はできなかったけど、路面が濡れていているなりにタイヤの限界は確認できた。やっぱりコルナゴC50ならタイヤの限界まで安心して攻められる。


 バイクコントロールが上手い輪太郎が言うとおり、相対的には濡れている路面は僕らに有利になるはずだ。ただ、輪太郎に言わせれば、僕の方が下りは「キレている」らしい。相変わらずその実感はないんだけどな。そんなもんかな。


第74話に続く


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