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第3章 2011年10月 何のために走るのか。なぜ走るのか。第64話

第64話【宮本 健】


「なあ、輪太郎、すごいよ、そこまで考えてるのかって、僕はびっくりしてる」

「何もすごいことなんてない。今の時代、ネットでいくらでも情報が出てくる。まあ、日本語しか読めないと情報量も限界があるからさ、英語の勉強、もうちょっと真面目にするんだったよ。今はさ、大抵の情報はやる気になれば分かるもんだ。いい世の中だよ」


 いったい、僕は何になりたいんだろう。輪太郎の真剣さが眩しく思えた。信じた道をまっすぐ進んでいる輪太郎はカッコいい。剣道をやっていた頃、なんで剣道をやるかといえば、最初はじいちゃんのつながりから始めた剣道だったけど、そこからは結果がついてきたから続けていた。母子家庭だからと言われたくなくて練習してきた、練習して勝つ、練習して勝つ。その繰り返しに疑問の余地がなくなっていった。


 でも、剣道を今でも続けていたとしたら、ずっと剣道を続けていくかと問われたら、僕は返答に困ったと思う。例えばこれが野球やサッカー、バスケットだったら違っただろう。もちろん目先の目標はあると思うけど、小学生だろうが中学生だろうが、トップに近い子供達ほど、プロ野球選手やメジャーリーグ、Jリーグや海外のトップリーグにワールドカップ、MBAの華やかな世界、そういったところに憧れて、自分の将来を重ねて見てモチベーションが湧いていくるものだと思う。


 剣道って、そういうのがない。おそらく僕が怪我のあと竹刀を握らなかったのは、自転車を始めたこともあったけど、そういった自分の将来へのモチベーションが薄かったからだと思う。


 それならロードレースならどうなんだ。僕は今まで海外のレース、つまりツールドフランスとかのヨーロッパのプロツアーレースを憧れとして見ていた。夢と言ってもいいと思う。チャレンジレースは地元のホビーレースでしかない。


 でもそこからジャパンカップ本番や全日本、やがて世界に繋がっていくかもしれない。それは野球少年やサッカー少年と同じレベルだ。願いが叶うなら世界で走ってみたい。夢が繋がった機がする。チャレンジレースで勝ちたい。ジャパンカップで走ってみたい。世界のプロツアーで走ってみたい。


 僕は考え込んでしまった。高校を卒業したら僕は何になりたいのだろう。大学はよほどの失敗をしなければ志望校は受かるだろう。でも、今の僕は自転車に全力で集中して懸けてみたい気持ちが大きくなってきている。


 僕は何をしたいのか。僕にはロードレースに人生をかける覚悟はあるのか。可能性を信じて世界を目指す覚悟はあるのか。今まで曖昧にしていた将来を、輪太郎の言葉をきっかけにして真剣に考え始めた。


 第65話に続く



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