第3章 2011年10月 何のために走るのか。なぜ走るのか。第39話
第39話【宮本 健】
530朝練の田代さんが、突然の辞令で関西に異動になるという。もともと関西の出身で、以前、異動希望を出していたらいしけど。
でも。ここ数年は異動希望は出していなかったのに突然の辞令らしい。熱血田代さんの転勤と言うことで、朝練メンバーで送別会をするとのことだった。
未成年な僕は、当然お酒は飲めない。
だけど、誘ってもらえる飲み会にはたいてい出席させてもらっちゃう。オジサン達の飲み会には何度か混ぜてもらってるけど、これが面白い。僕は高校生でお酒も飲まないから、料金も割引料金なのも嬉しい。
普段の朝練ではヘルメットにレーパン+ジャージでしか会わないメンバーが多いので、普段着?になると、最初はいったい誰が誰だかさっぱり分からなかった。ほんとに誰だか分からない。
自転車つながりの皆さんは、ヘルメットとかバイクとかでその人を判断してる。バイクを降りてヘルメットを取ると、なかなかイメージが合わない。ジャイアントだから田代さん、ビアンキだから斎田さん、エディメルクスだから荒井さん、赤いクロモリのフレームの五十嵐さん。普段の認識はそんな感じなのだ。
そしてお酒が入ると、かなり面白い。大勢の酔っぱらいというか大人の飲み会に混ぜてもらったのは自転車つながりの飲み会が初めてだった。高校生にはオジサンの飲み会って新鮮。オジサン達の飲み会のテンションにはびっくりだ。
それから。自転車つながりの飲み会に誘われて嬉しいのは、ちょっと大人なお店に入れること。市内のイタリアンやフレンチなレストラン事情にめちゃ詳しい斎田さんがセレクトするお店は、普通は十代じゃ入らないような場所が会場なことが多い。
高校生の僕らはファストフードか、いいとこファミレスだ。それがシックなイタリアンなレストランの個室だから、ほんのちょっと大人になった気がする。
セレクトしてくれたお店が高校生じゃ似合わなそうなシックな雰囲気で緊張しちゃうこともある。
だけど、実際はお客はオジサン達な訳で、なんて言っても遠慮なくディープな自転車の話が出来るのが素晴らしい。遠慮なく騒いでも個室の場合が多いので遠慮は要らない。騒いでいても、まったく問題ないのが嬉しい。
今回は田代さんの送別会と言うことで、田代さんの挨拶が最初にあった。田代さんは見た目はすごく穏やかで優しそうで、実際に普段は優しい。しかし、サドルにまたがり自転車に乗りだすと周囲を巻き込んでみんなを元気にするパワーがあった。
第40話につづく




