表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/109

challenging-現在進行形な僕らは 第2章 2011年9月 マロニエトライアスロン 第38話

第38話【宮本健】


 表彰式後、僕らのテーブルには、運営関係のスタッフや競技関係の関係者が入れ替わり挨拶にきて輪太郎や晴ちゃんと話をしていった。輪太郎は当然ながらインターハイで勝っているのでそこそこ有名人だし、晴ちゃんに至っては話が飛躍して陸上競技に復活するのかしないのかという話にもなっていたようだ。


 そんな挨拶が落ち着いてから、晴ちゃんがさっきのテンションとはちょっと違う雰囲気で言った。

「陸上の競技の再開は無いって言っといたわ。陸上はほんとにほんとで今日で卒業。ムサシ君、今日は誘ってくれてありがとう。今日が無かったら私はずっと陸上に未練を残したままだったと思うの。輪太郎と律ちゃん、タスキを繋いでくれてありがとう。

 おかげで最後に思い切り走れてゴールできたことは最高の思い出よ。私の陸上競技人生に悔いなしって感じね」

「そうだな、ムサシがいなかったら参加してなかったからな。おかげでこんなに楽しめたと思うと、ムサシ、えらい。でも、今日はムサシは何もしてないけどな」

 相変わらず一言多いんだよ、輪太郎は。


「ムサシ君が誘ってくれたから、こんなに頑張れたし、応援するのも楽しかったし、今日はほんとに最高」

「今日は最高」ってのに、僕からの告白も入ってるのかな。恋愛初心者だと、好きな子の一言一言が気になって仕方がない。


 輪太郎がさっきは表彰台でチームの写真を撮ったけど、ムサシが入ってなくてかわいそうだからムサシも入れて4人の写真を撮ろうと言いだした。たまには良い事言うじゃないか。僕らは持ってきたデジカメでタイマーをセットして、4人で写真を撮った。

 シャッターが落ちるまでの間、僕は、この空気をこの写真に、この今の僕らを包んでいる空気を写真に閉じ込めたいと思った。思うのはこの瞬間瞬間が青春の1ページじゃないかということ。この空気をその1ページに閉じ込めたい。


 今度は僕が舞台に立つ。観客としてじゃなくて僕が主役で舞台に立つ。今日の輪太郎を見ていてそう思った。僕の姿をみて律ちゃんが精いっぱい応援することで、律ちゃんを元気にするんだ。


 帰りの準備をしている駐車場で律ちゃんが最後に僕のロードバイクを見て言った。

「ムサシ君のロードバイクのフレーム、ちょっとサイズ小さくない?」

 意外なことを言われたので、それはそれで驚いた。

「あ、コレね、オジサンにもらったの。中3の秋に。その時はちょうど良かったんだけど、僕も身長伸びたから。パーツでサイズは調整してるけど、確かにちょっと小さいかもね」

 そうなんだ。ロードバイクはサイズは重要だけど、それなりに調整は利いたりする。

 高校生にとっては新しいフレームは高嶺の花なんだ。朝練のオジサンたちのフレームやパーツをみているとほんとすごかったりする。まあ、フレームやホイールやパーツが走るわけじゃないんだけどね。


「でも僕のスタイルって、たぶん平地で独走で逃げ切るっていうより、ヒルクライムメインになるだろうから小さめのフレームの方が取り回しやすいんだよね」

こういう話題はほんとはもっと話したかったけど。


 僕らは今日のレースの勝利の余韻を残して会場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ