challenging-現在進行形な僕らは 第2章 2011年9月 マロニエトライアスロン 第37話
第37話【宮本 健】
テーブルに近付くと、輪太郎に冷やかされた。輪太郎は「お手手つないで」と変な拍子をつけて調子に乗っていたところを晴ちゃんにダメ出しさいれていた。
「私、男を見る目なかったのかな」
と晴ちゃんが言うので、僕と律ちゃんは目を見合わせて黙ってしまった。
「そこは黙るところじゃなくて否定するところだろ!」
輪太郎が苦笑する。
とにかく、僕らは目標達成した。優勝したんだから、言いだしっぺの僕が何かさべれと輪太郎が言う。
「今日は本当にお疲れ様。律ちゃんと輪太郎と晴ちゃんの頑張っているところを応援していて僕が元気をもらったよ。今日の優勝は、僕の人生で今までで一番嬉しかった。そして、我が「チーム幸寿司」の優勝を祝して乾杯!」
僕らはコーラとスポーツドリンクとオレンジジュースで乾杯した。
出番が無かったからせっかくしゃべらせてやったのに何もオチがなくてつまらないことしか言えないんだなとそれこそ余計なことを言う輪太郎を無視して、乾杯の後、ソフトクリームを食べ始めた。
まだ10時になっていないけど、ソフトクリームが胃袋を刺激した。朝も早かったし、応援もたくさんしたし、走った3人は疲れもあるから、みんなお腹が空いてきた。律ちゃんの作ってきたオニギリや晴ちゃんの作ってきてくれた唐揚げを食べはじめた。相変わらずおいしいけど、今日のはまた特別おいしく感じる。
思い出せば、僕らはまだ3回しか会っていない。だけど、いつも外で会って外で何か食べていて、そのたびにその時その時に感動している。楽しい思い出とおいしい思い出つき。
初めて会った海の家で、2回目のこの前の同じプールサイドで、そして3回目の今日。
今日は更に優勝と告白の成功というすごいでっかいボーナス付きだ。文句なく楽しい。4人で他愛もなく今日のレースを振り返って何かのたびに4人で笑い合った。
律ちゃんの笑顔に影が無くなったのも嬉しい。僕としては出番がなかったと言うほんのちょっとの引っ掛かりをあることを除けば、最高の気分だった。何もしてないのに、何でも出来そうな気分になっていた。
表彰式になり、リレー部門1位の「チーム幸寿司」が壇上に上がると拍手は一段と大きくなった。そりゃそうだ。ゴール前の接戦もすごかったし、壇上に上がった律ちゃんや晴ちゃんが2人ともとても可愛かったから余計に絵になる。
優勝チームに可愛い女の子2人が入っていればそりゃ盛り上がる。僕は誇らしかった。小さなマイナーなトライアスロン大会だけど、僕らのチームは勝ったんだ。賞状を手渡してくれたのは、ゴール前で接戦になった招待選手の熊本選手だった。見るからに強そうな鍛え上げられた体のアスリートだ。
「僕は招待選手と言うことで調整のつもりでオープン参加で出場しました。そしたらバイクで追い抜かれてまさかと思ってランで本気で追い上げたのですが、こんなに素敵な人に逃げ切られちゃいました。しかも、スイムもこんなに可愛い女の子が選手だったなんて」
会場からの拍手が嬉しかった。輪太郎は顔に似合わず照れていて、律ちゃんと晴ちゃんは嬉しそうに顔を見合わせて笑っている。輪太郎が自転車に乗ればすごいは当然だけど、改めてすごいね、律ちゃんと晴ちゃんは。




