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challenging-現在進行形な僕らは 第2章 2011年9月 マロニエトライアスロン 第36話

 第36話【宮本 健】


 僕の心拍は一気に跳ね上がる。喉が乾く。いったん、言葉を区切る。

 律ちゃんはたぶん、僕が言おうとしていることは予想できたと思う。


 告白のタイミングとしてはアイスクリームを買いに行くついでというのが良かったのかどうか分からない。ほんとはもっとふさわしいシチュエーションがあるんじゃないかと思う。でも、僕の気持ちを伝えられるのは、今しかない。


「僕は律ちゃんが好きだ。まだ会ってから大して時間も経ってないけど、好きになっちゃったんだ。僕だけの気持ちを押し付ける訳にはいかないのは分かっている。律ちゃんが大変な状況なのも分かる。

 そんな気持ちになれないかもしれないけど、それならそれで支えになりたい。僕がもうちょっと大人だったら出来ることもいろいろあるかもしれないけど、まだ高校生で何もできないけど、僕は何か律ちゃんの力になりたい」


 思い切って口に出した内容は前もって考えていたのとは違ってしまった。ほんとはもっと大好きだと言うことをアピールするつもりだったのに。


「ありがとう」

 律ちゃんもいったん言葉を区切った。

 僕にはその後の間がとてもとても長く感じたけど、たぶんほんの2~3秒だったんじゃないかな。


「私ね、震災のあと、頑張ることに疲れちゃってたの」

 疲れちゃってたと言った律ちゃんは笑顔だった。

「頑張れって言ってくれる事は嬉しかったけど、もう頑張れないって気持ちが折れそうだった」

 いったん、律ちゃんが言葉を区切ってから続けた。

「だけど。今日は頑張れって応援してくれたおかげで頑張れたの。ムサシ君の応援で、ダメだと思っても頑張れたの。すごい力になったのよ。ほんとにありがとう。今度は私に頑張れって言わせて。ムサシ君のことは、私も好き」


 最後のところの「ムサシクンノコトハ、ワタシモスキ」というところがちょっと消え入りそうな声だったけど、僕の耳にはしっかり届いた。勝手に表情が緩んでしまう。僕は有頂天になってしまう自分を抑えるのに必死になった。大人げなくスキップしちゃいそうだったけど、さすがにやめておいた。


「私も好き」が脳内でリフレインしている。僕は左手に4つのソフトクリームを持ち替えた。僕の右隣に律ちゃんが歩いていて、僕の右手と律ちゃんの左手はその距離感を測っていたようなところがあったけど、僕はようやく律ちゃんの手をつないだ。僕にとったら女の子と手を繋いで歩くと言うことだけでも一大事なのだ。そして、今は僕の右手の指先に幸せが充足している。


第37話に続く


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