表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/109

challenging-現在進行形な僕らは 第2章 2011年9月 マロニエトライアスロン 第32話

第32話【宮本 健】


晴ちゃんが声をかけた後、僕は用意していたタオルを肩にかけてあげた。

僕は律ちゃんに、確か「感動した」というようなことを言った気がするけど、そのあとの記憶が定かでない。ふらついてしまった律ちゃんを抱きかかえるようにして支えたら、そのまま律ちゃんが僕に身を任せてきた。


僕は律ちゃんの両肩を抱きしめる形になってしまった。手もつないだことが無いのに、どうしたらいいのだろう。律ちゃんは泣いていた。感極まるっていうのはこのことなんだろう。きっといろいろな思いが湧きあがってきたんだ。


泣いている律ちゃんの腕の温もりを感じながら、僕はどうしていいか分からなかった。僕の脳内は最新型のCPU並みに高速回転したけど答えは出てこない。律ちゃんの体温を感じている僕の手のひらに全神経が集中している。


女の子って思ったよりもずっと華奢なんだな。律ちゃんはこんな華奢な体で3月に家族を失ってからひとりで頑張ってきたんだな。そして今日もこんなに頑張ったんだ。泣いている律ちゃんが最高に愛おしくて、思わず髪をなでたい気持ちになったけど、僕は右手を動かせなかった。


ほんのちょっとの間だったかもしれない。でもそのほんのちょっとが永遠に感じられた時間だった。このままずっとこうしていたかった。しかし永遠と言うのは無い訳で。


律ちゃんは身を離して我に返ったようで、「ごめんなさい」と言って肩をすぼめて恐縮し始めた。ごめんなさいと言われると僕は辛いんだけどと思っていたら、律ちゃんはそうじゃなくてありがとうということを言ってくれた。


僕はこの人が好きだ。


恋愛経験が少ない僕は、ただ容姿が可愛い子に惚れているだけで。

結局は高校生の血気盛んな男子だったら誰でも律ちゃんを前にしたら惚れるんじゃないかとか。

律ちゃんの状況を考えたら恋愛は重荷になっちゃうんじゃないかとか。

実は、いまだにそんなことを考えていた。


でも今はしっかり言える。この人が好きなんだ。理由はそれだけだ。きちんと自分の気持ちを伝えよう。そのあと僕は何か律ちゃんに声をかけた気がするけどあまり覚えていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ