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challenging-現在進行形な僕らは 第2章 2011年9月 マロニエトライアスロン 第27話

 第27話【山口輪太郎】


 俺は、いったい何のために走るのか? 父親が競輪選手で物心ついた頃から父親の走る姿を見てきて、いつの間にか自分が競輪選手になることは決定していた。父親は強かった。今でも強い。強いから余計にカッコ良く見えたし、それに加えて怖かった。今でも怖い。とんでもないオヤジだ。


 世間の同級生みたいに反抗期で反抗してる余裕なんてなかった。今ではその強さは俺へのプレッシャーになっている。


 俺は強制されていた訳じゃない。競輪選手を目指すことは幼い頃から自分で決めたことだ。だから小学校の頃からロードバイクに乗って、高校に入ってからは部活でトラック競技のきついトレーニングでも疑問に思わずにやってきた。


 小学中学とジュニアのロードレースで走ってきて同年代では無敵だった。高校に入ってからは自転車競技部のトラック部門メインで走って勝ち続けてきた。インターハイも勝てたし、卒業したら競輪学校にも入学するのは問題ないだろう。


 一体何のために競輪で走るのか。オヤジに言われたままで生きて良いのか。

 俺は自分自身で決めたことだけど、どこかでロードレースに未練があった。


 現実的なことで言えば、プロとしてやっていくとして、競輪選手とロードレースでやっていくのでは、収入でいうと天と地の差がある。


 ロードレースで食べて行ける選手なんて日本ではほんのひと握りしかいない。

 でも、例えばツール・ド・フランスやヨーロッパのクラッシックレースを観ていると、どうしようもなくロードレースに憧れてしまう自分がいる。ふと、俺の脚質ならロードレースでもやって行けるんじゃないかと思ってしまう。


 なんて言っても、ロードレースは世界に開けている。日本じゃロードレースはたいして人気が無いけど、世界に開けていると言う点では、競輪とロードレースでは圧倒的な差がある。


 野球はメジャーリーグに、サッカーはセリエAやワールドカップに、バスケットボールはMBAに繋がっているから、夢に繋がる。


 でも、俺にとってはロードレースはただの夢でしかない。ほんと夢想だ。俺の現実の夢は競輪選手になって勝つことだ。たぶん、この先も変わることはないだろう。俺は競輪選手になってバンクの中で勝負する。 


 悲鳴を上げる体とは別に、そんなことを考えて走れるのが楽しかった。苦しい。苦しいけど、こんなに自由に走れるのはあと少しの時間しかない。いまこの瞬間が俺の青春だ。競輪学校に入ったらもう勝負の世界だ。こんな時間が過ごせることに感謝だ。


 ふくらはぎが攣ったまま太腿に頼ってペダリングしいるうちに今度は太腿が攣りそうになってきた。直線区間が終わってクネクネ区間に入ったけど、それでもそこでもタイムを削るべく加速できるところは少しでも加速する。そのたびに足全体が悲鳴を上げる。体の悲鳴を無視してゴールを目指す。


 俺の限界はこんなもんじゃねえ。

 誰が言った言葉か忘れたけど、限界は人が決めるんじゃなくて自分自身が決めてるって言ってたな。その通りだ。仲間のために、俺の自由のために、俺は限界を超えてやる。


第28話に続く

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