第4章 2011年10月 チャレンジレース 第109話(最終話&あとがき)
あとがきを書いてなかったので、追加して小説を完結としました。
つきあってくれた皆さん、ありがとうございました。
第109話【宮本 健】
表彰式がもうすぐ始まる。僕はステージの脇で、輪太郎や他の入賞者と並んで座って呼び出しを待っていた。輪太郎はとなりで悔しいぜ悔しいぜとブツブツ言っている。案の定だ。悔しさを隠さないのが輪太郎らしい。負けて本気で悔しいと思えるから、更に強くなる。
呼び出しがあり、僕は表彰台へ向かう。
僕は何のために走るんだろう。ロードレースって何だろう。そして、そもそも僕は何者なんだろうって思っていた。いま、その答えが分かった気がした。
表彰式でステージの上から会場の拍手を受けて僕は思った。僕は、自分のために走る。律ちゃんのために走る。じいちゃんのために走る。律ちゃんのお兄ちゃんお父さんの分まで走る。抱えているコンプレックスを埋めるために走る。いろいろな思いと一緒に走る。いろいろ走る目的はあるけど、最後には自分の中で気持ちがひとつになる。
全力を出し切り限界を超えていくことで、自分が自分であることがはっきりする。
じいちゃんがステージの前の広場に来てくれた。表彰式に間に合った。勝利さんと晴ちゃんのお父さんが坂道を苦労してじいちゃんと車椅子をここまで押してくれたんだ。じいちゃんに僕が表彰式で表彰台の真ん中に立つ姿をみせられた。僕は一気に目頭が熱くなって涙を抑えるのに必死だった。
そして律ちゃんがいる。いま、律ちゃんが笑顔で拍手してくれている。大勢の観客の祝福はもちろん嬉しい。だけど、一番嬉しいのは自分が好きな子が精いっぱい祝福してくれることだ。その嬉しさにはかなわない。
律ちゃんの笑顔が僕の視線の先にある。その笑顔が僕のエネルギーになる。僕が勝つことで律ちゃんが頑張れる。律ちゃんのおかげで僕が挑戦することが出来る。これからも勝つことが出来る気がする。律ちゃんが喜んでくれるなら、僕は勝つ。
この先のステージでも勝つんだ。僕は今までよりも、もっともっと厳しく激しく走っていく。
まだ先は見えない。でも、その先に自分自身が見える気がするんだ
おしまいです。
付き合ってくれた皆さん、ありがとうございました。
自己満足的にダラダラ書いてきましたが。
ほんとは続きも頭の中にはあるのですが。
書いているヒマがない。
いつか続きが書けたら書きます。