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第4章 2011年10月 チャレンジレース 第105話


第105話【宮本 健】


「荒井さん、こんなところで何やってんですか」

 荒井さんの脚力ならもうゴールしていてもいいはずだ。

「登りでスリップした選手に巻き込まれて転倒するわ、鶴カンの登りでチェーンが外れた選手が蛇行してきて絡んで落車するわ、もう最悪。ダメージはないけど、もうだめ。意気消沈」

 そこから3人になった。違う出走組の選手が協力するのは良いのか悪いのか、レギュレーションに書いてあったかな? まあいいや。偶然だ偶然。僕ら3人でゴールを目指そう。


 そう思ったら違っていた。

「俺はもう順位はどうでも良いからさ、萩の道の登りの手前まで全開で引くから。2人とも表彰台に乗れよ。ムサシは530ジャージで表彰台だぞ」

 僕らが引いたのはほんのちょっと。そこから荒井さんの鬼引き状態だった。僕はまた朝練仲間のオジさん達に助けられた。2人でゴールまで逃げ切りるのは言うは易しだけど、実際にはかなり難しかったと思う。ペースが緩んで後続集団が僕らの背中を視界に捕らえたら、協調してローテーションして追走してきたら、間違いなく追いつかれる。


 でも、今は違う。荒井さんが全力で捨て身で引いてくれている。ひとりでずっと引いていたらさすがに持たないので僕も先頭にでるけど、すぐに荒井さんが引き倒しに前にでる。ここまで不完全燃焼だったから爆発だ!とか言ってる。


 そうだ、それなら僕は荒井さんのデザインした530ジャージで表彰台に乗る。しかも、真ん中に、だ。荒井さんのアシストに応えるにはそれが一番だ。僕は、僕だけの力だけでこの順位にいるんじゃない。


 今まで朝練で鍛えてくれた一緒に走ってくれてたオジさんたち。今日応援してくれる知り合いの自転車つながりの皆さん。1周目でアシストしてくれた五十嵐さん、田代さん、いま先頭を引いてくれている荒井さん、みんなのおかげで僕はここにいる。530朝練のオジサンたちや自転車つながりの皆さんに感謝だ。


 そして、このバイクに込められた思い。全ての気持ちをジャージに込めて走る。このジャージで表彰台の真ん中に立ちたい。


 輪太郎と2人でゴールまで脚が持つかと実は不安だったけど、荒井さんのおかげでかなり助かった。萩の道の入口を過ぎると小さい登りになる。登りの手前まで荒井さんが最後のひと踏ん張りと言ってペースをあげる。


「俺のゴールはここまでだ。ここからはお前たちの勝負だ」

 そう、ここからは僕らの勝負だ。輪太郎、輪太郎が山岳賞を取ったとき、僕の中でスイッチが入ったんだ。絶対に勝ちたいってな。今までも勝ちたいって思っていたけど、今回は違う。絶対に勝つ。登りが始まって、僕はダンシングに切り替える。輪太郎を振り切る。目指すはゴールだ。


第106話に続く


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