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猫かぶりの神と聖女ちゃん

「この光は……転移魔法かッ!? 貴様等、レイフォルテ様を守れ!!」

「その必要はないから。将軍、兵を連れて下がっていいよ」


 目を覚ますと、同じ鎧で身を固め、剣を鞘から抜いて構えた奴らに囲まれていた。

 その奥には剣を抜いて構えている奴らの鎧よりも装飾が多く凝った鎧を身につけた男と、一目で豪華だと分かる椅子に座るあの少年の姿があった。

そして俺の隣には杏が倒れている。

 

「しかし――」

「しつこいねキミ。王国で勇者召喚が行われていたから、乗っ取ってここに召喚されるようにしただけだ」

「……ッ、申し訳ございません。貴様等、全員下がれ!!」


 装飾の凝った鎧を身につけた男は指揮官なのだろう、そして目の前の武装した奴等は部下の兵士といったところか。

指揮官の男が指示を出した瞬間に目の前の奴らは剣を鞘に収め、門とも呼べそうな大きさの扉から部屋の外に出て行った。

 それにより周りの景色が見えるようになる。


 床は全て絨毯が敷き詰められており、壁端には本棚、他にはテーブルやソファ等もあるが、部屋の作りを見る限り、玉座の間と言うのが一番しっくりくる。


「あぁ、そうだ。聖女ちゃんにここに来るように伝えてくれる?」


 指揮官の男は、部下が全員部屋から退出したのを確認した後、自身もこの部屋を後にしようとするが、少年の声に足を止める。


「畏まりました」


 了承の言葉を口にするが、不快そうな表情を浮かべていた。


「さて、邪魔者はいなくなった。また会ったね双六時雨すごろくしぐれ君。おや、何か聞きたそうな顔だね。今、僕は機嫌がいい、大体の事は答えてあげよう」


 教室の時とは違い、強烈な圧迫感など一切無い。笑顔でそう言った少年は本当に機嫌がいいらしい。


「なぜ王国の勇者召喚を乗っ取ったとか言ったんだ?」


 少年は豪華な椅子から立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。


「この世界唯一の神で、聖なる神として顕現している僕が、魔王を大量に転移させる時に、面白そうなのが居たから連れてきたなんて言えると思うかい?」

「なるほど、悪さしてるのは見せたくないってことか」

「誰も逆らえないから、見られても問題ないさ。ただ面白くして楽しみたいだけだ」


 あの指揮官の男の出て行く時の顔は間違いなく、良い感情は抱いていなかった。しかし、逆らわなかった。

 いや、逆らえないというのが正しいのか。


 ただの一般人だった俺達にスキルなんてものを自由に与える事ができる存在だ。神ならば全てのスキルを持っていたとしてもおかしくはない。

 それに、自由に与える事ができるならば、奪うことも出来るかもしれない。


 あの指揮官の男も俺達と同じようにスキルを与えられていた可能性もある。

 逆らえばスキルを奪われる。いや目の前の少年ならばスキルどころか命すらもためらわずに奪うだろう。

 それをしないのはただの気まぐれ。


「あぁ、そうそう。双六時雨君、いや僕もトキ君と呼んだほうがいいかな? 君はさっき、複数人から剣を向けられていた。あの時怖かった?」


 剣と敵意を向けられたあの時、恐怖の感情は殆どなかった。

 ありえない。

 あんな強烈な敵意は今まで向けられたことはないが、間違いなく俺どころか俺の居た世界の人ならば誰もが逃げ出したくなるほど恐怖するだろう。


「僕が死に対する恐怖を封印したからね。怖くなかっただろう?」


神は人の感情すら自由に操れるのか……。

自分の感情を弄られて良い気はしない。恨みを込めて睨みつける。


「睨むなんて酷いなぁ。転移する直前、カウント待ってあげたのにさ」


 確かに最後は、間違いなく間に合っていなかった。しかし、それは善意などからではないだろう。


「ただ、面白そうだから待っただけだろ」

「当然だろう? それはいいとして、そろそろ聖女ちゃんがここに来る頃かな。隣の十希永杏君を起こすと良い」


 人を暇つぶしの道具としか見ていない奴に素直に従いたくはないが、行っている事自体は普通のためここは従う。


 声をかけながら杏の体を揺する。


「今から来る聖女ちゃん何だけど、顔もいいし、おっぱいも程よい大きさ。あと経験ないらしいくてからかうと反応が楽しいんだよね。何より――」

「レイフォルテ様。アルシェナ・アイリスタ、只今参りました」


 大きな門の様な扉の向こう側から聞こえてきた少女の声に少年の声が飲み込まれるが、俺には聞こえた。


 さっきの男みたいな行動しない奴等とは違って、いつかやってくれそうだからね、と言っていたのを。


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