12 ≫確認≪
街の、目立たない位置にある喫茶店の角の席。そこに治は座っていた。この席は学生時代、治と茂、そして美那と、よく会っていた場所だ。
そこに一人の男の姿が現れる。
「5分遅刻。珍しいね。茂が遅刻するなんて」
「ああ。すまない」
茂は少し息を切らしていた。ちょっと外に出るのも、今の環境では大変なことなのだろう。
しばらく沈黙が流れた。
「それで……確認したいこととは?」
茂が口を開いた。治といえば、ああそうだったと言う顔をして、そのあとすぐ茂を睨み付けた。
「今回の件、どうしても君を信用出来ない。それに……美那のこともある」
「治……」
茂は悲しげな表情を浮かべる。無理もないだろう。
治は続ける。
「わかってる。わかってるけど……だけど、どうしても、信用出来ない……君が、裏切るんじゃないかって」
わかってる。とは、何のことなのかはわからない。ただ、言い訳を探しているようにも思えた。
「治。大丈夫だ。絶対に、裏切らない。絶対に……閑を止めよう」
……一緒に。
だが、その言葉は、罪悪感と、恐怖で喉に突っかかって、声にのらなかった。苦しさに、茂は手を握りしめる。
「わかった。……早く作戦を立てよう」
「あ、ああ……」
二人は静かに、作戦を立てた。
お互い、やるべきことのために。
帰り際に、治がこんなことを言ってきた。
「茂。これが片付いたら、自首してくれないか」
「……考えておくよ」
治はその答えに不満そうな顔をしたが、茂には、こういった、曖昧な返事しか出来なかったのだ。
×
そのあとすぐに、治は帰宅した。事務所では徹が宿題をして待っていた。
「ただいま徹くん」
「ああ、治さん。おかえり」
徹はそう言うと、立ち上がり、夕飯の支度をし始める。
「今日はシチューでいい?」
「うん」
嫌だと言えば文句を言うだろうから、適当な返事をする。それにそこまでシチューは悪くない。
食卓にシチューがならび、二人でいただきますと言う。
治は一口食べたら、ため息をつき、徹に言う。
「徹くん。そろそろだ。わかってるね」
「……うん」
テロことだ。本当は、徹をつれていきたくはない。
「くれぐれも、危険なことはしないでね」
「わかってるよ」
徹は暗く、はっきりした声で言った。
数日後。学校の放課後。
徹は勇大に伝えたいことがあった。
「あのさ、勇大。俺、二、三日、休むかも」
勇大はその言葉を聞いた瞬間、驚いた表情をした。そして、何か言おうとしたが、口をつぐんで、別の言葉をかけた。
「なっ、なんだよー。また旅行か……!?」
「あ、あー、うん。そんな感じ。だからノートとっておいてよ」
「おう。わかった」
「あ、えと、そういうことだから、頼んだよ」
一言残し、徹は去ろうとした。だが、勇大がその背中に「徹!」と呼びかけた。
「旅行から帰ってきたら……必ず学校に来いよ! 待ってるから!」
酷く、心配をしている顔をしている。
「……うん! 必ず、来るよ……!」
徹は大きく手をふった後、背を向け、足早にその場を立ち去った。
決戦は明日。
もうすぐで、全てが終わる。
もうすぐで本当に終わります。