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大嫌いな世界の中で  作者: OK牧場
1/3

転校生

 大嫌いだ。


 この世界が大嫌いだ。周りの人間が大嫌いだ。理不尽が大嫌いだ。こんなことを考える自分が、大嫌いだ。

 大嫌いが蔓延するこの世界で、俺は何で生きているのだろうか。

 大嫌いしか感じないこの世界で、俺は何を求めているのだろうか。

 ただ、人生という川の流れに身を任せて、流れるだけの人生。

 ただ、生まれたというだけで、生きることを許され、自由を得た人生。

 何も達成せず、傍観して、憎み、妬み、努力しない自分に諦め、不貞腐れ、人生の主人公にすらなれないと悲観するだけの人生に、俺は何も感じられない。いや、何も考えたくないから、感じることすら止めてのかもしれない。


 チャイムが鳴る。ボーっとして過ごして終わる学校生活。教師の長ったらしい授業の終わりの合図が鳴り、誰とも会話をせず椅子に座ったまま、窓の外を眺める。最早日課と言っても過言ではない。

 休み時間になり、教室内がざわつく。俺は一人で座っているが、他の奴らは違う。そしてそいつらが話す会話は、俺の耳の中に届く。他愛のない会話。でも、自分か入ることのないだろう会話。この気持ちは憧れなのだろうか。


「今日もだるかったー。マジであのハゲの授業分かんないんだよね」

「あー、それチョーわかる! 説明してる途中の脱線話とか本当に辞めてほしいわぁ」

(本当だよな。特に俺の好きな武将は武田信玄だ! 武田信玄はな!? とか言って熱弁とか本当に辞めてほしいよな)


「おい、昨日のドラマ見たかよ! 北瀬 愛子(きたせあいこ)! 可愛かったよなぁ!」

「見た見た! 本当に可愛いよな! あれで同い年とは……。それと比べてうちの女子のレベルときたら。涙が出るね……」

(おいおい。あんま、そゆこと言うなよw 聞かれてたら怒られんぞw まぁ?北瀬 愛子より可愛い子はいないけどな!)


 なんて言った他人の会話に、心で参加することも俺の変な趣味の一つになっている。つか、これは趣味と呼べるのか、仮に他人の心を覗ける奴がいて、今の一連の流れを読まれてたら、確実に俺は可哀想な奴認定をされるだろうな。

 こんなことをしながら、俺は学校での生活を過ごしている。人を避けて。でも、混ざりたくて、強がって。こんな生活を過ごし続けると俺は思っていた。ずっと悲観して、なにもしようとしないで人生を終えると思っていた。

でも、ある日変わった。こんな俺でも、自分の人生の主人公になれると感じるような出来事が起きたから。




 朝のホームルーム。朝練がある部活組は、身体を動かしたことにより目が覚めて、元気に話している。それと相反して、帰宅部組はあくびをかみ殺し、眠そうに過ごしている。いつもの光景だ。俺はもちろん帰宅部組。なかなか目が冷めなくて何回もあくびが出る。

 何度目かのあくびをすると、担任が教室に入ってきた。……なんだ、あの馬面。なんかいつもよりオシャレしているような。どうしたんだ?

 などと疑問に思っていると、担任は気持ちの悪いくらいのテンションで言った。


「今日から、うちのクラスに転校生が来ました! お前らも知ってる人だぞ! 元気に迎えてやってくれ! じゃあ、ほら入った入った、挨拶頼むよ!」


 どうやら転校生が来るらしい。にしても、気持ち悪いな。なんであんなニヤケ面してるんだ。どうやら、何人か同じ考えの用で、引いた目で担任を見ている。

 まぁいいか。転校生は男かな。女かな。と期待に満ちた思いで転校生が入ってくるであろう扉を眺める。


 結果的に言えば、女だった。うん、女なんだけど、誰でも知っているような女だった。


「北瀬 愛子ちゃん!? え?! あの北瀬 愛子ちゃんじゃん!」


 クラスメートたちが一斉に騒ぎ出す。そう、なにを隠そう今人気の女優、北瀬愛子だった。そりゃ馬面もニヤケ面にもなるわ、仕方ない。なんて思いながら、俺も可愛い転校生に見惚れてしまっていた。


 「どうも、初めまして。 式橋 愛(しきはしあい)って言います。北瀬愛子は芸名ですので、どうぞ、本名の方でお呼びください。これからよろしくお願いします」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 クラスの中は大騒ぎ。そりゃ騒ぎたいのも分かるけど、サル山の猿じゃないんだから落ち着けって、流石に騒ぎすぎ……。

 クラスの反応はこうだ。


「可愛い! 愛子ちゃん可愛い!」

「ばか、本名で読んでくださいって言ってただろ! 愛様と呼べ!」

「なるほど、その通りだ」

「「愛様ああああああああああああああ!!」

「……男子って馬鹿ね。それにしても本当に美人よね。式橋さん」

「うんうん、なんか私まで興奮しちゃいそうなくらい可愛い」

「うきゃきゃきゃっ」

「うきゃああああああああああああ」


 まぁ、こんな感じだ。猿が確実にいたことを俺は忘れない。


「これ、騒ぐなよ。式橋さんには、あそこの席に座ってもらおうか、一番後ろの真ん中の空いている席に座って」

「はい」


 もしここで、俺が主人公なら俺の席の近くに来るだろう。しかし、現実はそんなに甘くない。まったく俺との接点の無さそうな席に彼女は座る。


「これからよろしくおねがします」


 と笑顔で、隣の野郎に声を掛ける式橋さん。声を掛けられた男子は、


「くぁwせdrftgyふじこlp;@」


 最早、言語になっていない返事を返していた。

途中で途切れていましたので、訂正いたしました。

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