トラブル
今日は日曜日で学校はお休みだし、天気もいいし、昨日来たこの公園もいい風が吹いている。
なんだか清々しい。
ベンチでひなたぼっこして、ぽかぽかいい気持ちになってきた。
「なんでよっ!!!」 急に鋭い叫びが聞こえた。
ベンチごとひっくり返りそうな女の子の怒鳴り声。
気まずそうな男とひどく怒り顔の女の子をチラリと見てしまった。
結局、昨日のメールの通りに話し合いに来てしまったのだ。
私は居ても居なくてもいいと思ったけど。
第三者だし、仲裁なんかできないし、そっと見守ろうとベンチに座ってもう2時間ぐらいたってた。ノラ猫まできた。急に怒鳴り散らすもんだから、嫌でもちらちら目に付く。気になっちゃってもう。ノラ猫も気になっちゃってもう。
一応、彼女のマイちゃんも来て欲しいって言うから来たんだ。
女の子には甘くなっちゃうな。
うーん、さては2人とも、私が近所だから呼んだんだな。
とにかく、話し合いの内容。
タクさんは別れたい。
マイちゃんは別れたくない。
別れたい嫌だ何で別れたくない
同じ言葉のリフレイン。
堂々巡りの話し合い。
さっきから同じことばっかり聞いてて埒があかない
そして結局口を挟んでしまった
「ちょっと、やっぱりお互い距離を置いてみたらどうかなぁ・・・・・・なんて」と小さく言った。
マイちゃんは可愛いから、いろんな人が放っとかないと思うんだけどな。
付き合うと、別れたくなくなるものかな?
好きになるってそーゆーものなのかな?
全力で恋愛してると周りが見えなくなるものかな?
マイちゃんの顔は半分諦めたような、決心したような、そんな顔をしてた。
余計なこと言ったかな
ごめんなさい、私は部外者なのに。
すごすごベンチに戻ろうとした。さっきのノラ猫が居る。黒いねこ。若干の癒しだった。
「もう、話にならんから、帰っていいよ」
タクさんが言った。え、いいの!?と思ったけどそれは私に言ったんじゃ無かった。
「・・・・・・」
沈黙。顔は曇っている。私の心がはらはらする。
「お前ね、重たいの。本当に最近は窮屈になってきた。何もできなくなるんだよ。最初は良かったけど、ずっとは無理だわ。だから別れようって言ったの」
おお・・・・・・何か冷静にタクさんが話してる。
きっと私は部外者だからこんなに現実感がないんだろう。
淡々と話を聞いてるだけ出し。
でも、私がマイちゃんだったら嫌なんだろうなぁ、別れるなんて。
でも、私がタクさんだったら、別れたいんだろうなぁ。
どっちの気持ちもわかるけど、どっちかしかないんだな。
恋愛って、一人でするもんじゃなくて、相手の気持ちもあるから。
はじまったものには終わりがやってくるものなのか。切ない。
辛い思いをしてまでしたいものなのか、恋愛とは。
「・・・・・・帰る」
マイちゃんはくるっと後ろを向いて弱々しく歩いていった。
あとでフォローの連絡をいれる以外で私にはどうすることもできない。
悲しい。きっと彼女はこっそり泣くんだろう。
本当に私、ここに居てなんのいい事もなかったじゃないか。
ただ悲しくなっただけで、せっかくあったかい日曜日なのに!
「あーもう私も帰る。私居なくてよかったじゃんかーせっかくの日曜日がトラブルに巻き込まれてさ」
ぶつぶつとタクさんに文句を言った。
なんだかんだ言って、やっぱり同性の味方になっちゃうんだよね。
「近所だし、お二人さんもそこいらで顔合わせたりもあるかもだけど、そのうちなんとかなるの待つしかないんじゃない?後は知らないから頑張って」
さらりと言い放って帰った。
マイちゃんにはフォローの言葉を送った。
ありがとう。ごめんね。だって。無理してる感じがした。
自分の恋愛でも無いのにひどい喪失感と虚しさを味わった。