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悪役は救いを求めない

作者: カエルグミ

初投稿です。作者は豆腐メンタルです。拙いですが読んで頂けると嬉しいです。

没案なので、似た子(というより同じ)を悪役として他の物語に出すかもしれません。

「どんな人生の選択をしたら、平和な日本でこんなに人を殺せるかねぇ」


神様のそんな言葉に私は俯くしかない。いや、だって仕事だったからね、最後には親友もとい、初恋の人まで殺しちゃったわけで……。まぁ、その後私も死にましたが。殺し屋が一人前に悔いを残して。


「あちゃー……面倒くさいパターンだよ、どうしよコレ。この子に全ての罪を被せるのは見当違いな感じするし後で多分違う神にどやされる……」


どうやら神様は私の過去を見て罪を決めあぐねているらしい。ご迷惑おかけします。

今から考えれば私の過去なんて只の中二病遍歴なんですけどね。思い返してもアタタタタってなるレベルです。


幼少期、親に暗殺者としての技術を道具として叩き込まれていました。現代の日本ではバレないように殺すのは難しかったし、拷問訓練はかなりの苦痛でしたが、人を暗殺するのに抵抗はありませんでした。(クズみたいな人間がクズみたいな自分に処分されるだけ。只それだけだ)本気でそう思って殺してました。いやー、馬鹿ですね。これだから小さい頃からの洗脳は怖いのです。


だが、しかし!案外見た目は特異ではなく日本人特有の黒髪に大きな丸い黒目で白い肌。そして、紅をさしていなくても赤い唇。自分で言うのもなんだが美人の部類に入ると思っています。告白もとめどなくされてましたし。


実際、任務で色仕掛けを使ったこともあります。といってもキモいロリコン野郎にですが。只、ロリコンに色仕掛けを使うのは単なる自虐でしたし、あの時にトラウマを植え付けられたので、もう色仕掛けは使わないでしょう。


こんな、私にも友人はいるにはいました。男の癖に可愛いが合うような色素の薄い少年で唯一本当に笑いかけてくれる人でした。彼曰く、私は単なるコミュ障らしい。ちょっと意味が分かりません。でも、私のことをそう言い切る彼と一緒にいるのは存外気が楽でした。


そんな現代日本では異例な環境下に置かれていた訳だですが、別に不満はなかったのです。人を殺す事がさほど重要な事ではないと思っていましたし、彼がいたので。


だからこそ、私がどれほどの事をしているかなんて深く考えることはしませんでした。というより、そんな事を考えて殺し合いなんてしたら、もっと早くにここにきていたことでしょう。『迷いは死に繋がる。だから、何も持たない道具になるのだ。』ずっと言われ続けていた言葉です。こんな言葉を真に受けていた私はよっぽどの中二病患者ですね。


そういえば彼は

『君には意志があるから道具なんかじゃないよ。君の好きに生きればいいんだ』

何て言ってたっけ。

私にはその時は心が麻痺していたため、よく分かりませんでしたけど、彼が真剣なのは理解できていたように思います。


しかし、彼との日常は長く続きません。


ある任務のターゲットが彼に決まったのです。きっと仲間だった彼は組織を裏切ったのでしょう。彼は終始殺しは嫌だと言っていましたし、最近はこそこそと何か隠しているようでしたから。私はいつも通り淡々と殺す支度をするつもりだったのですが、不思議なことに感情の乏しい私が涙を流し始めているのです。心が壊れそうでした。これは、彼を目の前にしても続きます。


「ごめんね」


そう、顔を歪めた彼は一切抵抗しませんでした。肉を裂く感触が手に響きます。快感さえ覚えていたこの感触に吐き気を催しました。一体どうしたというのでしょう。


訝しげな顔をした私に彼が弱々しく笑いました。


「それが、君の感情だよ」


ここで、初めて自分の間違いに気づきました。私は感情がないのではなかったのです。自分で考えることを逃げていただけでした。

これ程までに愚かな行為は思いつきません。


それに気づいた私はやっと化け物から人間になれたのだと悟りました。


だが、もう何もかもが遅いのです。血を流して動かない彼とそれを見つめる私。


『僕、暗殺者はもう辞めるんだ……好きな子に告白するために』


彼はそう言って屈託なく笑っていました。世に言う死亡フラグという奴です。私達にそれは許されません。きっと分かっていたはずです。でも、彼は私達とは一番縁遠いものを望んでしまいました。


気が動転した私はあろうことか敵地で呆然と突っ立っていました。


その時でした。小柄な女の子が私をブスリと何かで突き刺します。


たくさんの人達に口を酸っぱくして言われ続けた言葉が頭によぎりました。


可愛らしい容姿をした彼女が狂ったように雄叫びを上げ私を刺し続けています。


そう、彼女が彼の大事な子だったんですか。


「……ごめんなさい」


言葉が見つからず、そう呟いた私に彼女は『許さない』とだけ言葉を吐きます。


うん、許さなくて良いのです。許しなんて望んでません。



だって、私も許してやらないのですから。自分も世界も全部全部。


そうして、世界を呪って私は死にました。


神様はまだうんうんと唸っています。手持ち無沙汰になったので上を見上げると私の過去がムービーで流れていました。ちょっと神様、何してくれてんですか。黒歴史なんですって。


「私、地獄でいいですよ?」


そうつぶやいた私に神様が一言。


「そうだ、転生させよう!」


話聞いちゃいねぇ……。そんな、転校させよう的なのりで言わないで下さい。よし!そうと決まれば!とか何とか言いながら神様が姿を消します。


この後、体感時間で五時間程待たされました。そして神様が優しくにこりと笑うのです。


「今度はきっと幸せになれるよ。望みを三つだけ特別に叶えてあげる」


中二病な人生を送ってきた私に何故そこまでしてくれるのでしょう?固まった私に神様はバツが悪そうに笑いました。これ以上困らせては申し訳ないので望みを真面目に考えようと思います。


前世では愛してくれる家族は一人もいませんでした。これは、憧れでもあるので叶えば嬉しいです。


「優しい家族ですかね……これ以上は何も望みません」


無意識に嬉しそうに笑ってしまった私に神様が何故か泣きそうな顔をしています。


「君は本当に………」


どうして悲しそうな顔をするのでしょう?私には分かりません。人間らしくなるにはまだまだだったらしいです。感情を納得するのは難しいものですね。


「分かった。記憶は残しておくことも出来るけどどうする?」


「じゃあ残してもらっていいですか?」


そう聞くと神様は頭を撫でてくれました。撫でられたことがないのでむず痒い気分です。


段々と意識が遠退いていきます。転生はこうやって成されるみたいです。実に興味深いですね。


次の人生は無難に生きたいものです。


読んで下さってありがとうございます。

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