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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
1‐2人の長いプロローグ
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知恵の迷宮②

 深部までの道のりは安全マージンを確保していることもあり、危なげなく順調に進んだ。

 出てくる蟲はレクスが壁となり受け、ネーネの魔術で焼き、ミアとカウスがトドメを刺す。

 一年以上もパーティーを組んでいるのだ、十分な連携が出来あがっていた。


「レクス! 蟲が沸くぞ! 一旦停止して戦闘準備!」

「了解! ネーネ魔力回復を優先。ミア前衛に上がってくれ。カウスとベオは遠距離からの牽制を頼む!」


「解かりました!」


 私の職業は[騎士]。[ガーディアン]のレクスと比べると見劣りするが盾にスキル補正を持っている。

 二枚の盾が敵を阻み、カウスが投石、ベオが弓矢で牽制を開始する


「魔術いくよぉ! 気をつけて!」


 魔力の回復したネーネが魔術を行使。

 着弾とともに炎上する魔物たち。すかざず私のレクスが畳掛け、敵を仕留める。

 今回の戦闘も無事終了した。








「もう少しで深部だな。皆、回復剤は足りているか?」

 レクスが皆に回復剤の残りを聞いてくる。


「俺はまだ使ってないので大丈夫だな、ミアとベオはどうだ?」

「オレも問題ないっす」

 ベオがレッグポーチ、腿につけたポーション類を確認し、そう答えた。

 冒険者は取り出しやすいようにポーション類は太腿や腕に専用のバックをつけそこに収納している


 私もレッグポーチを確認に、報告する。

体力回復剤ヒールポーションが三つとスタミナ剤が一つ。あと解毒剤が二ですね」


 その答えを聞きながらレクスが返事する。


「それだけ有るなら問題はないな。ネーネ、魔力回復剤マジックポーションはどれくらいだ?」

「ん~あと四本はあるけどぉ。あんまり使いすぎるとあとが困るかもねぇ」

「価格が高いからな。今回のダンジョンのように道中の旨みが無いところだと使いたくないのもわかるがな」


 魔力回復剤マジックポーション

 その名の通り、魔力を回復する薬品で、ダンジョンなどで魔術士が枯渇しがちな魔力を回復するためのもので、街で売られている魔力回復剤マジックポーションはおおよそ銀貨一枚でこれはおおよその一日の生活費と同じ額。

 このダンジョンでは炎魔術を使用したため道中の素材が手に入らないので使えば赤字になってしまうのです。


 ネーネは聞いた話、スキルで『魔力回収』というものを持っているそうです。このスキルの効果で発動した魔術のうち使用魔力の何%を還元できるとのこと。

 このスキルは前にクリアしたダンジョンのクリア報酬として与えられれたもので、私とレクス・カウス・ベオは魔術を使わないので『タフネス』というスキルを頂きました。

 この『タフネス』は恒常的な体力向上で無かったころよりも疲れにくくなりました。

 こういうダンジョン産のスキルはEXスキル《エクストラスキル》と呼ばれ、クリアしたダンジョンの難易度に左右されますが、高い効果をはっきします。


(光ったりしないので……地味ですけど)


 会話しながらの小休憩も終わり、移動を開始します。

 もうまもなくダンジョンボスの居る部屋が見えることでしょう。

 私は気合いを入れなおし、深部へ足を進めます。


 それから数刻たち、私たちは深部の入口『試練の門』にたどり着いた。

 








 目の前に重厚で巨大な扉

 扉には梟の絵が掘られている。


「いくぞ。用意はいいか」

 問いかけるレクスに皆はうなずき、戦闘の用意をする。


「昨日も話した通り。まずは地面に落とさないと戦いにならない。ベオ、任せたからな。オレは相手の攻撃を受けるから、その隙に頼む。カウス、お前も頼んだぞ」

「「了解」」

 二人はレクスの言葉に同意し、弓を構えた。ベオは強弓でカウスはクロスボウを持っている。


 カウスはスキル補正こそないものの弓矢の扱いにも長けていた。

「よし。空けるぞ」

 そう言い、レクスが扉に手をかけ、扉を開ける。





 ◇◆◇


 扉の先は広い円形の空間だった

 広さは直径三十メートルほどだろうか?

 天井部は見えずどこまでもつながっており、外壁についている松明が部屋を照らしている。


 ダンジョン主が創り出した戦闘用の次元空間なのだろう。

 私もボス戦は二度目だが、この日常を超えた光景には驚かされる。




 不意に猛禽類の鳴き声が聞こえ、天から羽ばたきとともにボスが降臨する


 それは体長五メートルはある梟だった

 大きなカギ爪を光らせ、空から私たちを見ながら羽ばたき、宙を舞う。

 そして、再び甲高い鳴き声を上げたあと、その鋭いつめを私たちに振り下ろしてきた。




 人の倍以上のサイズの梟が空を舞い、襲い掛かる。

 空を飛ぶ相手とはこうも戦いにくいのか!

 挑発してくるレクスに向かって梟はツメを振り下ろす。

 

 レクスが必死に盾で受けるが質量差で押し返される。

 それでもその隙に私たちは攻撃を仕掛ける。


 ベオが矢を撃ちこみ相手を怯ませ、その隙に私が切りかかる。

 カウスも頭部を狙い矢を撃ちこむ。


 ネーネは火炎魔術だと避けられると判断したのか風魔術で攻撃をしている。

 「これならどうですかぁ~【ウィンドスラッシュ】!」

 歌うようにネーネが魔術が発動し、風で出来た刃が梟を囲い斬りつける。


 梟はその攻撃を、邪魔だといわんばかりに翼を振るい弾き飛ばす。

 同時にその羽ばたきで起こった衝撃波が私たちに襲い掛かり、私たちを吹きとばす。

 私たちの攻撃はその翼と羽毛に阻まれ届かず、有効打を与えられずにいた


「このままだとまずいな」

 レクスがそういいながらポーションを飲み干す。

 既に戦闘が開始されてから三十分余り。私の残りの体力回復剤ヒールポーションもあと1本になっていた。


 梟は再び空を舞い、こちらを伺っている。


「おそらく、相手には斬撃耐性があるのでしょう。私の攻撃も『強斬』《スラッシュ》でも切れませんでしたし」

「だろな、さらに言うと、見た目の半分以上が羽毛だろう実際の相手の肉体は細いはずだ。」


 カウスが今までの流れを分析し、レクスも同意する。

 前衛のレクスが頑張ってくれたおかげで攻撃パターンは把握することが出来た。

 しかし、現状では決定打に掛けてしまう。私とカウスの剣は届かず、ネーネの炎魔術は避けられ、風魔術は弾かれる。

 ベオの弓も効果を発揮しているが、威力に乏しく、決定打とならない。


(このままだと……)



 先の見えない長期戦。溜まり行く疲労

 全滅という言葉が頭をよぎる。


 私の不安を感じたのか、レクスが切り出す。


「このままだと、おそらく……全滅だろう。」

その言葉を聞いて私は顔をこわばらせる。

 

 全滅……死……しぬ。

 脳裏に蘇るのは巨獣の姿、燃える街……そして母の……。


 過去のトラウマに引きずり込まれそうな私の耳に再びレクスの声が聞こえる。


「だがまだ、手は残ってる」


 ハッとして顔を上げる私。

 そんな姿を見てか、レクスは苦笑しながら


「役割を代えるぞ」


 そう切り出した。









「……というプランだ。いけるな?ミア」

「はい!」

 私は返事をし、梟に目を向ける。私の言葉とともに。他のメンバーは後方に下がり、攻撃に備える。


 私たちの動き気がついたのか、梟は戦闘を再開すべく、私たちに再びツメを振り下ろしてきた。





 レクスから提示された手段それは……。


 ()()梟の攻撃を盾として受け止める。

 重く鋭い攻撃を盾で必死に、ただひたすらに防ぐ。

 自分の体力が減っていく感覚に襲われるが諦めず、ひたすらに受け止める。

 

 レクスの提案。それは盾役のスイッチ。

 火力の乏しい私が盾となり、他のアタッカーが攻めるというもの。


 レクスと比べると、貧相で頼りない壁。

 だが、その隙を突いてカウスが大きく動く、壁面・・を駆け上り、梟の背後を取る


 EXスキル『立体駆動』

 このスキルは壁などのを利用した縦の移動をサポートするスキルでさすがに天井を走ることは出来ないそうだが、この部屋の壁くらいなら走り、背後を取ることが出来るそうだ。

 背後を取ったカウスはさらに畳掛る。無防備な背後、そこに大きな音をたてて拳を打ち付ける。

 その衝撃で音をたて梟が地面に叩きつけられた。


 『剛拳(ハードアタック)

 私たちが使う強打(バッシュ)よりも上位スキルらしいそれは見事に梟の隙をつき撃墜を成し遂げる。


 だが、あくまで地面に落としただけ、

 そこにレクスが盾での追撃の一打を入れる。

 剣での斬撃が届かないなら盾による打撃を。

 レクスは『盾強打(シールドバッシュ)』を発動させ、梟の額に叩き込む。


 まだ終わらない。そこに追撃が入る

「全矢使い果たすっす!」

 そこから放たれる超高速の矢の嵐


 スキル『速射矢(ラピッド)

 スタミナを大きく消費しながら高速で矢を放つスキル

 本来で有ればスタミナの消費が多く、連続使用には向かないそのスキルを使い続ける。


 EXスキル『無尽蔵』

 減らないスタミナをもたらすこのスキルと、本来スタミナが高い獣人とのコンボ。

 スタミナの消費を気にせず使うことができ、いくら走っても動いてもおそらく疲れることが無いのだろう。

 矢の嵐を受け飛び立てず地面に縫い付けられる梟。


「お待たせしましたぁ、もういけるわよぉ~」

 歌うように長い詠唱を果たしたネーネが魔術を発動させる。

 避けられるなら動きを止める。

 その上でのネーネの魔術

「くらいなさいぁ! 【イグニートフレイム】!」

 伝説上の生き物、(ドラゴン)のブレスを想像させる豪炎が梟を襲う。

「おかわりもあるのよぉ! 【イグニートフレイム】!」

 先ほどと同じ魔術がすぐさま発動する。ネーネのスキル『重複詠唱』だ

 普通に二発撃つよりも魔力の消費は増えてしまうが、同じ魔術を二連続で同時に放つスキルである。

 ここまでの大火力を受けまだ動こうとする梟。



(負けない! 私はこんなところで負けられない!)


 今飛び立たれると、勝利は遠のくかもしれない。

 その思いから、私は体に鞭をうち振るい立たせ、剣を構え梟に向かい刺突をくりだすのだった。




 それから暫く後。

 私たちは床に倒れこんでいる。

 あの追撃が効いたのか、梟は飛び立てず、再度私たちの攻撃を受けることとなった。

 疲労困憊だが、間違いなく、私たちはあの梟を撃破することが出来たのだ。

 梟のボス討伐をやり遂げ、満ち足りた私たちの耳に声が届く。


「おめでとう。危なげだったけど、見ていて面白かったわよ?」


 その声は天から聞こえてくるようだった




知恵の迷宮クリア後の各人のステータスです


 ●ミア

 種族:人族

 所属:無し

 職業:騎士Lv34


 スキル一覧

 EXスキル

 ・タフネス


 パッシブスキル


 ・剣装備補正・槍装備補正・槌装備補正・盾装備補正



 アクティブスキル


強打バッシュ強突ピアース・簡易治癒


 称号

 冒険者・秘宝探索者・下位ダンジョンクリア・料理下手



 ●レクス

 種族:人族

 所属:ギルド「一角兎」

 職業:ガーディアンLv36


 スキル一覧

 EXスキル

 ・タフネス・不破の鎧


 パッシブスキル


 ・盾装備補正・盾攻撃補正・重装備補正・重鎧機動補正



 アクティブスキル

 ・挑発・強打バッシュ盾強打シールドバッシュ


 称号

 冒険者・下位ダンジョンクリア・指揮官・恐妻家



 ●カウス

 種族:人族

 所属:ギルド「一角兎」

 職業:軽戦士ライトウォーリアLv35


 スキル一覧

 EXスキル

 ・タフネス・立体駆動


 パッシブスキル

 ・拳打補正・短剣装備補正・軽鎧装備補正・ダッシュ・パリィ


 アクティブスキル

 ・強切スラッシュ・投擲・剛拳ハードアタック



 称号

 冒険者・下位ダンジョンクリア・苦労人


 ●ベオ

 種族:獣人族 ※犬耳族

 所属:獣人自警団「ハウリング」

 職業:狩人Lv32


 スキル一覧

 EXスキル

 ・タフネス・無尽蔵


 パッシブスキル

 ・矢弾補正・悪路走破


 アクティブスキル

 ・衝撃矢ショックアロー追尾矢ホーミングアロー麻痺矢パラライズアロー毒矢ポイズンアロー速射矢ラピッド


 称号

 冒険者・下位ダンジョンクリア・もふもふ・一芸



 ●ネーネ

 種族:エルフ族

 所属:なし

 職業:魔術師Lv34


 スキル一覧

 EXスキル

 ・魔力回収


 パッシブスキル

 ・マナ吸収・精霊交感・火属性強化・風属性強化


 アクティブスキル

 詠唱破棄・重複詠唱


 称号

 冒険者・下位ダンジョンクリア・ロリっ子・精霊の友


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