Ⅱ-4 環境に侵されて。
オレの提案はことごとく実施された。
32V型の薄型テレビにBLレコーダー。オレが愛用していたゲーム一式にマジカルハート☆プリティアサちゃんのDVD全巻とフィギュア。他にも多数が殺風景だった部屋を侵食していく。
だがしかし、
「全部オレの部屋の物ばかりじゃねぇかっ」
「はい。私は錬金や複製の類いは苦手でして……存在している“モノ”の召喚しかできないんです」
「戻せ!今すぐ戻せっ!!」
「は、はひっ!」
声を裏返して返事をしたと思ったら、なにやら呪文を唱えて門となる魔法陣を顕現させてオレの愛玩を元に戻していく。
「……こ、これでよろしいでしょうか…?」
恐る恐ると言った感じな召喚師ユアは、小型犬みたいなうるうるとした目で見つめてくる。
「あ、あぁ。あんな詐欺みたいな真似、もう止めろよ」
「はいっ。勇者様に誓ってもう致しません!」
オレに誓うのか。いいけどさ。
それにしても、忠実な犬みたいな奴だ。これなら近くに置いても差し支えがなく、さらにカズミみたいにガッツいて来ないし……あれ、これよくね?
「今思いついたんだけどさ」
「は、はいっ。なんでしょうかっ」
そんなにかしこまなくても……。
「これならいっそのこと、オレん家に住めばよくね?」
「…………」
ユアの顔が固まり、一拍置いて、
「」
ボンッと一気に顔が真っ赤に染まる。それはもう盛大に。
「そ、そそそ、それはどういう意味でしょうかっ?!」
噛み噛みなユアは動揺しまくりながら訊いて来る。
「そのままの意味だよ。そんなにオレの傍にいたいなら、むしろオレの所にくればいいって話だ。オレを呼ぶより、そっちの方が合理的だろ?」
「そ、それは……はい。そうですね…」
嬉しそうにしてた割には歯切れがわるい。
「どうした?いやか?」
「そ、そんなっ!いやなんて滅相もありませんっ!!」
そこまで否定するか。
「ですが……私は召喚しかできないんです。戻すことはできても、その場のモノを移すことはできないんですよ…」
さっきの動揺とは別に、肩を落としてがっくりするユア。
「なら物は考えようだな。自分を召喚しちまえばいい」
「……自分を召喚?」
「そうだぜ。実在するものや人の召喚ならできるんだろ?だったら、自分を別の場所に召喚すればいい。その時に一緒にオレ帰してくれ」
「……自分を、召喚…。これは自分を召喚対象として扱い、目的の場所は勇者様を帰す場所と同期すれば……いけるかも知れません!」
「よしきた。なら早速よろしくっ」
「はい!」
ユアは再度呪文を唱えて魔方陣を顕現する。
これでオレは帰れる……っ。
体が光に包まれ視界がブラックアウトする。転送している証拠だ。
おかえり、オレの相棒達。ただいま、オレの魔改造部屋。