Ⅱ-1 ワンクリックで召喚されました。
パソコンのディスプレイに映る文字をさらっと読み、
『あなたは18歳未満ですか?Yes/No』
反射的にYesをクリックした。
そして視界がブラックアウトした。
頭に浮き上がる一文字、完。
て、オレの人生はこれからだっての。こんなことで終わって堪るか。
どうせなら二次元に行ってから死にたいぞ。
18歳と表示されていたものだから思わずYesと答えてしまった。
その結果、オレは後頭部に柔らかな感触と共に双丘が目の前に広がっていた。
なにがいけなかったのだろうか。
18禁サイトに入るとカーソルをYesに定めてクリックを押していたのがいけなかったのだろうか。
だがそれはもはや癖だ。誰にも変えることは不可能だ。
オレは視界に入った双丘の内の一つを鷲掴みにする。
「――あんっ」
するとどうだろうか。女の喘ぐような艶やかな声がするではないか。
オレはそれを揉む、揉む、揉む。
「……んあっ。ん、そんなに揉んだらだめで、すん……っ、あ――んっ」
揉む度に聞こえる声は幻聴なのだろうか。
なんか楽しくなって来たぞ。
「……あ、んんっ――これ以上は、だめ…っ」
両手でその双丘を揉みしだく。
しばらくそうしていると、オレは気付いた。
「ん、そういやおまえ、誰だ?」
「……はぁ…はぁ、ん。……わたしは召喚師をしている者です…」
召喚師?このたわわに実ったスイカかまたはメロンをくっつけている奴がか?
「もしかして、オレを召喚したのか」
「……はい、そうでございます。勇者様」
なんだ、またそれか。
「オレは元勇者だ」
「それでもわたしにとっては素敵な勇者様です」
そうにっこりと召喚師は笑う。
「ま、いいけどな。んでさ」
「はい」
オレはずっと疑問に思っていたことを聞く。
「なんでオレ、あんたの膝枕の世話になってんだ?」
「わたしが召喚する際に、そう設定したのです」
設定?設定とかできんの?
そんな召喚師聞いたことないぞ。
「それでオレはいつ起きればいいんだ?」
「好きなだけどうぞ」
いい笑顔じゃねえか。
というか噛み合ってない。きっとオレが照れて逆のことを言ってるとでも思ってるのだろう。
んなわけねーだろ死ね。
オレはそう言われてすぐに起き上がり、立つ。
「あれ、もういいんですか?もう少しだけでも――」
「あのな」
「はい?」
わからないようだから公言して置こうと思う。
オレは召喚師を見て高らかに宣言する。
「オレは三次元に興味はねえっ!オレが好きなのは二次元のみなんだっ!!」
ドヤ顔で言ってやったぜ。
オレはその場に座る。
「……」
これでオレを幻滅して、元の世界に、オレのマイルームに戻してくれるだろう。
だけど召喚師が言う台詞は違った。
「それでもわたしは……わたしはあなたが好きです。愛しています。それがもし、実ることのない恋なんだとしても……わたしは永遠にあなたに尽くす所存です」
なんでそうなるんだ……。
オレは元のヒキコモリ生活に戻りたいだけなのに……。三次元なんかには興味ないのに……。
オレは肩を落とし、召喚師の膝に頭を乗せる。
「オレは三次元に興味はない」
「はい。存じております」
「だけどな」
召喚師を見上げて言う。
「オレはおまえの膝枕だけは気に入ったぞ」
「……本当ですか?」
目を輝かす召喚師。
「あとこの柔らかい物体」
目に入る双丘を再度掴む。
「――あんっ。そこは胸でございます……」
ああ、これが胸か。
そういえばそうだな。カズミの奴にはないから忘れたわ。
召喚師は顔を赤くして喘ぎ声を出しているが、それは別にどうでもよかった。
ただ膝枕のクッションが自分の頭に合い、この大きな手に余る双丘の揉んだ時の感触が気持ちいいのはよかった。
……て、あれ?なんでオレは召喚されたんだ?肝心なこと聞いてなかった。
だが今はこの瞬間を味わっていたかった。