Ⅰ-2 異世界に行って来たけどそれはそれ。
オレは悩み、悩み、悩んだ。
悶え、苦しみ、決死の覚悟を決めた。
……そう。オレは、
「やはりここはカナちゃんだろっ!!」「なんでやねん!」「ぐはっ」
背中に痛みと痺れが走り激痛を生む。
「なにするんだよっ。てかおまえが関西弁なんて使うなよっ。キャラが崩れるだろうが!」
「知らないわよ、そんなの」
キックで堂々とオレの部屋に入って来たのは幼なじみである暴力女のカズミ。今は腰に手を当てオレを蔑む目で見る。
「私はこんなオタクが見るようなアニメを食い入るように見て小さな女の子に劣情を抱いているような奴に愛のムチを入れたまでよ。文句言われる筋合いはないわ」
オレの部屋のテレビには幼女が変身して派手な衣装に身を包み、誰でも考えることができるような悪の敵と戦う魔女っ娘アニメ【マジカルハート☆プリティアサちゃん】が映っている。
そしてオレはそのアニメの主人公より、サブキャラでありライバルのプリティカナちゃんを応援したいと思う。
「オレは二次元は好きだがオタクじゃねぇっ」
「それをオタクを言わないでなんて言うのよっ!」
「オレはヒキコモリでニートのヒキニートだ」
オレはキメ顔でそう言った。
「・・・それのどこがオタクじゃないの」
「これだから三次元女はっ。どうせ好きな男にフラれてその腹いせにオレに八つ当たりに来たんだろおまえのことなどお見通しだぜ」
それより続き鑑賞だな。
オレは暴力で解決しようなどと、野蛮な女は置いておこう。
「さてさて。激闘の末ボロボロになって戦うシーンでも観るか」
「・・・ねえ、」
「あ?なんだ?」
オレは忙しいって言うのに、つくづく邪魔してくれる奴だ。
そういえばなんかプチンってなにかが切れた音がしたような……いや、気のせいか。
「……そんなに二次元が好きなら、夢で会って来いやっ!!」
「――は」カズミの台詞に振り向くオレは「ちょ、おま」なぜか一瞬で床に仰向けとなって「え。。。」
「勇者として異世界に行って来たとかほざいて帰って来たと思ったら・・・次はオタクですか?あれ、ヒキニートでしたっけ?そんなことはどうだっていい。・・・心配してた私の気も知らないで……」
「真面目に語ってるとこすみませんが、もうやめ――あ、ダメ、潰れるっ。オレの大事な相棒なムスコが潰れちゃう……っ。あ、いや、ほんとダメ――なんかオレの中で生まれちゃうぅぅうっ!!」
そしてオレはいい笑顔の幼なじみにアンマされ、男として大事な機能を喪う寸前まで悶絶させられた。
「……くすん。もうオレお婿に行けない」
「――ふん。行く宛なんてないクセに」
そんなカズミの叩き口に返す言葉が出ないでオレは、ベッドの横でしくしくと女々しく泣いていた。