外へ行く俺の足取り
廊下は自慢じゃないがとても長い。雑巾掛けレースの昔話でもしてるなら、一度来てみればわかる。こんなところじゃ、やる気にならないね。
だが甲冑にとっては長い道のりは嬉嬉として受容するものらしく、手を大きく振りながら、でかい図体で進み出した。フローリングに鎧が当たると細かい擦り傷がつき、粉となった表面は刹那に飛んでいく。そうやって少しずつ削っていくと、いつかはキャベツの芯みたいに、外部と内部を判別できなくなるかもね。
黄金色のお気に入りの額にも容赦なく傷をつけ、彼はゆっくりと玄関へと向かう。時間の流れはいつもと同じ。問題なく進む。
僕と彼の大きな違いは意欲と性能で、どちらも僕は劣っている。それはよくあるネガティブな主観ではなく、古今東西誰が見ても明らかな格差だ。もちろん悔しいなんて思わない。全てにおいて自分より上の人がいることだって誰にでも予想できるんだから、たった二つのウェイクポイントは無いに等しいものだ。僕が幸運なのはそれを受容できる程度の忍耐と教養をもって生まれたことだろう。
ゆっくりと、何となく忍び足で彼の後ろをついていくと、玄関の直前で止まった。それから金色の目がこちらを振り向く。彼は猛る獅子の紋様が描かれた兜を傾げながら、先まで黄金に覆われた指でドアの方を指差していた。
俺は返答につまったが、ちょっと思案してからドアの鍵を開けてやった。甲冑は軽い足取りで(彼の力が強いから軽い足取りになるのであり、実際は像のそれより重い)表にでた。