2/4
1日前 同時刻1
俺が笑顔を見たのは2年ぶりかもしれない。その間俺は星の数ほど笑っていたが、周りは目を開いたまま俺の脳味噌まで見透かしたように黙ったままだった。そのジョークは数年前に聞いたばかりだ、と彼らは一様に騒ぎ立てた。当時、俺を囲んでいた奴らは皆ファッショナブルで、オールドな発言をしたらファック・ユー、がはやるような輩だったから無理はない。昔と同じなのは周知の事実だ。
時に旧友に憧れるけど、必要とは思わないね。
だから、俺はこの甲冑を見て心底懐かしいと思った。しかもそれは、とびっきりの高級品だった。だっていったい何人が甲冑の笑顔を見たというんだ。人類史のどのページをめくっても、そんな記録はないだろう。
俺が弛緩を見つめている隙に甲冑はまたいつものポーカーフェイスに戻り、ガシャガシャと五月蝿く音を立てながら立ちあがった。動作を確認するように手を開いたり閉じたりして、納得がいくとゆっくりと部屋の外へ歩き始めた。
俺は憎らしいくらい屈強なその唐紅の背中に声をかける。
そこは、廊下というんだ。