1限目
「あっちゃーん!」
「あ、なっちゃん。」
「遊ぼーっ♪」
「うんっ♪」
公園では、今日も子供達の愉しげな声が響いている。
走り回ったり、砂場や遊具で遊んだり、それぞれが思い思いに楽しく遊んでいる。
そして、夕焼け空に成る頃、後ろ髪引かれながらも家に帰るのだ。
当然、この子供たちも…。
「なーなー、あっちゃん。オイラ…、大きくなったら、あっ…、あっちゃんを、おっ、お嫁さんにしても、いいかな…?」
「ボクが、なっちゃんのお嫁さん?うんっ!いいよっ!じゃあ、ボク、なっちゃんのお嫁さん。」
「うんっ!あっちゃん、オイラのお嫁さんっ!」
「「うんっ!約束だよっ!」」
「じゃあねーっ!なっちゃーんっ!また明日ー!」
「うんっ!また、明日ー!」
こうして、2人は上機嫌で別れていった。
「ただいまー!」
「おかえり、まなちゃん。随分、ご機嫌ね。何かイイコト有ったの?」
「えへへぇ〜。オイラ、大きくなったら、あっちゃんをお嫁さんにする約束したのっ!」
「あっちゃん?何処のあっちゃん?」
「あっちゃんは、あっちゃんだよっ。いつも公園で一緒に遊んでるんだっ!」
「そうなんだ。よかったわねぇ、まなちゃん。さぁ、それじゃあ、お風呂に入ってらっしゃい。もう直ぐ、ご飯よ。」
「うんっ!」
「出たよーーーー!」
「こらっ。ちゃんと拭きなさいっ。」
「はーーーい。」
「着替えたら、お兄ちゃん呼んできて。『ご飯だよ』って。」
「はぁーい。」
そしてトタトタと部屋に行きノックをする。
「にーちゃん、ご飯だよぉ〜。にーちゃん〜。」
するとドアの向こうから
「おう。」
と、声がした。
「にーちゃん、入るよ〜。」
と、ドアを開けスルスル中に入っていく。
小さな子供にとって、少し年の離れた兄や姉の部屋は秘密基地並みの特別な空間だ。
「真夏〜。全く…。コレ、直ぐに終わらせるから、ちょっと待ってろ。」
「なーなー、にーちゃん。」
「ん〜?」
「オイラもこんな風におっぱい、大きくなるかな?」
「ぶっ!?なっ、おっ、お前が読むのは、10年早い!全くっ!」
そう言いながら、グラビア雑誌を取り上げると
「なーなー、にーちゃん〜。」
「あー、もう。いいか、真夏。お前が好き嫌いしないで、良く噛んでご飯を食べれば成れるかもしれないなぁ。」
「そっかぁー。にーちゃん、何でも知ってるんだー。すげー。」
どうやら、兄の戯言を信じたようだ。
「ほら、終わったから下に行くぞ。」
「うんっ。」
「いただきまーす!」
どこにでもある一家団欒の風景。
そこに
「ほら、まなちゃん。トマトも食べなきゃダメでしょ?」
「…うー…。トマト…やだ…。…けど……。」
まぐっ!あぐっ!あぐっ!あぐっ!………ゴックン!
「うぅぅ……。おみじゅぅ……。」
涙目になりながらも嫌いなトマトを食べ、水で流し込む。
「凄いじゃないか、真夏。ちゃんと食べられたじゃないか。エラいぞ。」
と、誉める父に真夏は
「にーちゃんが…」
「冬樹が?」
「うん…。にーちゃんが好き嫌いしないで食べれば、おっぱい大きくなるって…。」
「ちょっ!真夏っ!」
「「…冬樹…」」
「えっ!?あっ、いや…。」
「どうせまた、エッチな雑誌を出しっぱなしにしてたんでしょう?ちゃんと仕舞って置きなさいって、何時も言ってるでしょっ。」
「まぁ、今回は大目にみてやるが…。次からは、気を付けなさい。」
「わりぃ…。」
団欒が終わり暫くすると
「父上、母上、にーちゃん。おやすみなさい。」
「はい。おやすみなさい。」
「おやすみ、真夏。」
「お〜。まな、おやすみ〜。」
時刻は、20時を少し回ったところだが、小さい子供にはこの辺りが限度だろう。母親に促され布団に入っていった。
そして、時間をすっ飛ばして翌日の夕方………
「まなーっ。帰るぞーっ。まなーっ。」
冬樹が真夏を公園に迎えに来たようだったが、真夏の様子がおかしい…。
「いたいた。まな、帰るぞ。まな?」
「…グスッ…ヒクッ…」
「どっ、どうしたんだよ、何がそんなに…」
「…にーちゃん…。あっちゃんが……。」
そこまで言うと、堪えきれなくなったのか、遂に泣き出してしまったのだった…。
ピピピピピピピピッ…
目覚ましの音が鳴り響く…
「…んぁ……ぁ…うるさいっ……!」
少し乱暴に目覚ましを止める
「…ぁ…ゆ…め…?」
暫くぼーっとしていたいが、それをしてしまうと確実に遅刻する。仕方ないので着替え始めるが
「何だか、懐かしい夢見ちゃったなぁ…。確か、あの日を境に公園に来なくなったんだよね。あっちゃん…。でも、何だってあの時の夢なんか…。」
しかし、ゆっくり考えている暇は無い。
「ヤバイ、ヤバイッ。今日から高校生だってのに、初日から遅刻したら洒落にならん!」
ドタドタと下に降りると、
「まなちゃんっ、女の子なんだからドタドタ降りてこないのっ。」
「ごめん、母上。行ってきまーすっ!」
「朝ご飯はーっ?」
「余裕なーいっ!行ってきまーすっ!」
「全く…。誰に似ちゃったのかしら……?」
母のそんな思いを余所に、ダッシュで学校に向かうのだった。
新連載の一回目、如何だったでしょうか?楽しんでいただけたら、幸いです。これから、真夏の活躍(?)にご期待下され〜(笑)