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君に届くは竜の声  作者: 月野安積
第一章 麓の村
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俺、騎士にビビる

 俺は村はずれまで、徒歩で行き、それから一気に街道を駆け上がった。


 少し道から離れて行く、聴覚が上がっているので、何か近くにあれば聞こえるだろう。

 ばあさんから貰った皮紐で、長くなった髪を結ぶ。

 俺は編み上げるなんて器用な事はできないので、きゅっと頭の上の方で留めた。

 そうすると、髪がちょうど上着と同じ長さになったので、踏んだりからまったりはしないだろう。


 ばあさんに、この髪の毛切りたいんだけどー、と言うと。

「ダメじゃぁぁぁぁぁ!!」

 と絶叫された、あんな必死なばあさんはあれ以来見てはいない……。


 俺は岩や、木の枝を利用して、トトンと飛び移りながら走りぬけた。

 もっと早く走りたいと思うと、風がビュンと後ろから吹いた。


「ふぅ、結構走ったけど、崖崩れってもっと街の方だったのかな」


 腰に手を当ててコーグルを下に下ろし、木の上から周りを見渡した。

 風が冷たい、そろそろ雪が降り始めるのかも知れない。


 風の匂いを嗅いでみる、おや、何か近いな。

 木から飛び降りて道に戻ろうとした、その時。


 後ろから何か硬いもので殴られ、うつ伏せに転倒してしまい、何かに乗りかかられた。


「誰だお前は」


 男の、怒気を含んだ声が耳元で響く。

 片腕を背中に押さえられたが、渾身の力で起き上がり、体の全部のバネを使って後ろに飛びのいた。


 目の前には、二人のローブを頭からすっぽり被った人が、剣を抜いてこちらに向かおうとしている。

 この二人、風下に居たのか、俺はジリジリと後ろに下がりながらどうしようか考えた……。


「アンジェラ様、わたくし一人で大丈夫でございます、先にお進み下さい」


「ルフォー」


 男性とも女性とも分からない、不思議な声がそれに答えた。


「殺す前に聞いておこう、どこの手の者か? 警備師団の兵膜を越えてきたというのか、しつこいな」


「ルフォー、少し、待て」


 不思議な声はひどく落ち着いていて、剣を下にそっと置いた。

 そして、俺はと言うと、何故かその声にひどくドキドキして、情けない事に少し手が震えていた。


「これは、驚いた……こんな精悍できれいな仔……」


 俺は震えて動けない、捕まる、捕まってしまう……。

 その人は、フードを片手で頭から払い、そっと近づいてきた。


 俺より頭半分ほど低い身長で、少年とも青年とも言えない年齢だ、髪は肩までで薄い茶色をしていた。

 瞳の色も同じ茶色で、少し眦が上がっているので、顔立ちがキツイ感じがする。


「アンジェラ様? 危険でございます」


 ルフォーと呼ばれた男は、少し振り返りながら、その人の前に剣を持っていない方の腕を上げた。


 その人は、人差し指を唇に当てて、ちらりとルフォーを睨み、少しずつ歩み寄り、とうとう俺の目と鼻の先まで来て立ち止まった。


 ゆっくりとゴーグルを下ろされ、手で顔を挟まれて、そっと瞳を覗かれる。


「竜星眼」


「ちょっ、ええっ!!」


「怯えてしまうから、もうお前は声を出すな」


「しかし、ええっ!!」


 俺は見つめてくる瞳から目が離せない、バックンバックン自分の心臓の音がする。

 大パニックに陥っていた俺だったが、かろうじて声だけは出せた。


「すっ……すみま……手」


 ちゃんとは震えて喋れなかったけれど。

 その人の目はとたんに、びっくりして見開かれた。


「───王竜なのか……」


 ガランと、ルフォーの持っていた剣が手から落ちて、足元にあった岩にあたった。

 その音で、動けない呪縛が解けて、俺はさっと顔を背けて手を振りほどいた。


「僥倖でございます」


 いきなりルフォーが跪き、俺に頭を下げた。


「あぁあの、もしかして、もしかするんですけど、帝都からいらっしゃった方々でしょうか?」


 もう訳の分からん事はスルーだ、だけど俺はもう確実に、あの穏やかな日々には戻れないなと思ったのだった……。









ジジババが、俺を迎えに行かせたのはちゃんとワケがあります!!

かわいい仔は見捨てませんよ~(笑)

そしてアンジェラが持ってきた物は、村でじゃないと守れないのです、正確にはラギが持っていた方が安心かな、前話と分けたので短めです。

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