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君に届くは竜の声  作者: 月野安積
第一章 麓の村
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俺、頼まれる

 じいさんとばあさんは、村の相談役だ。


 しかし俺の見るところによると、村人の愚痴を、うんうんと頷いて聞いていているだけで、特に何をしてくれるワケでは無いような気がする。


 話の流れで、村の人が落ち着いたり、冷静になってきたり、頭の中で考えがまとまるようで、自己解決してスッキリした顔で帰って行く。


 その日俺は朝からベッドのシーツを大きなタライに入れて、ジャブジャブ足で踏んで洗っていた。

 白竜亭もやっと、忙しさから開放されて、いつもののんびりとした日常が戻りつつあった。


 俺の部屋の窓は少し開いたままで、閉まらず、家自体が古いのでゆがんでしまっている。

 指3本分くらい開いたままなのだ、それはいい、雪がふる前に大工さんが来るようにじいさんが頼んでくれた。


 問題なのは、その隙間から小動物が入ってくる事だ……。


 そして何故か奴らは俺の寝床の周りを徘徊し、握ったらすぐ潰れそうなカキみたいな小さな果物とか、野原で咲いている花というか、雑草を枕元に置いて行く……。


 大量に……。


 どんなメルヘンなんじゃ……、朝、グルッポーと鳴く土鳩に起こされる俺……。

「──食うぞ」

 と言うと慌てて逃げて、そいつはそれ以降来なくなった。


 今朝もまた、野イチゴみたいなのが、俺の真横に積んであり、寝返りをうったときに敷いてしまった。

 何やら、もうドロドロにシーツがなってしまったし、仕方なくジジババのシーツも合わせて洗っていたのだった。


「ラギやー、ちょっと来ておくれ」


 何だろう、そう言えば先ほどお客さんが来たようだったが。


 居間に顔を出すと、ご近所のおじさんが座っていた。


「こんにちは」

 俺は手をタオルで拭きながら、ペコっと挨拶した。


「村長さんが、ちいと頼み事があるそうなんじゃ、」


 俺は目をむいた、この人村長さんだったのか、3日程前白竜亭で酒に酔って、裸踊りしていた人だぞ。

 村長さんはきまりが悪そうに、苦笑して耳の横をポリポリ掻いた。


「街までの峠の街道の事なんだが、途中落石があって、馬車が立ち往生しとるんじゃ、村総出で復旧するつもりだったんだが、街に駐留している一小隊が遠征訓練を兼ねて手伝ってくれることになった」


 自衛隊の救助活動みたいなものか。


「実は、この足止めされている馬車に、帝都からの大事な物が積んであるみたいで、春までこちらで預ることになったんだ」


 ここだけのヒミツじゃぁと、ジジババがまじめな顔をした。


「わしらは、偉い人のお手紙で知ってはおったんじゃが、今日だったんじゃなぁ」


「へぇ、それで俺何をすればいいの?」


「ウチで預る事になったもんで、持ってきて欲しいんじゃい、とても貴重なものだから帝国の騎士様も一緒じゃが、そちらは届け終わったら陛下のお膝元へ戻られる予定じゃ」


「とりあえず、先にウチに案内して、騎士様方には白竜亭に泊まってもらおうかのぅ」


 なんでウチなのと、突っ込む暇をあたえられず、着々と計画は進行して行く。


「ラギや、後でちゃんと詳しく説明する、行ってくれるか? 道の真ん中でほっといていい物では無いでな」


「分かった、すぐ行ってくるよ街道上って行けば出会えるな、じいちゃん採掘作業用のゴーグル貸して、走ってると目の中に虫が入るんだよ」


「おぉ、もって行きな」


 村長さんが、ほっとしたように椅子にもたれかけた。


「すまんなぁ、ラギさん、以前にデカいガリムを背負って走って山降りたって聞いたの思い出してなぁ」


 ああ、そんな事もありましたっけね……。

 俺はちょっとドギマギしながら答えた、ありゃ竜力使ってたんだよ、この抑えた状態だと、あんなに走れないし力も出ない、人の居ないところでだだもれになって、後は一般人で通すか。


 竜で途中飛ぶ事も考えないでもなかったが、どこで誰が見ているか分からんし、それだったら、だだもれゴーグルスタイルで、山ぶっちぎって走った方がいいだろう、これはこれで怪しいがな。


 ばあちゃんが、先日から俺の冬の外出用に作ってくれていた、黒いレザーの膝丈まである上着を渡してくれた。

 それと、手に30センチほどの同じレザーからとれた皮ひもも渡してくれた、ばあちゃんよく気がつくな。


 じゃ、と行って外へ出ると、もう次のお客さんがポテポテと歩いてくるのが見えた、ジジババの茶飲み友達ご一行だ。

 おぉ、ラギさんその上着カッコいいね、眼福眼福と声をかけられ、ちょっとうれしくなりながら村を出たのであった。








あぁ、騎士様と遭遇できなかった(´・ω・`)

長くなりそうなので、ちょいとここで切ります

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