俺、村へ帰る
「スゴイ、凄いよ、王竜だ・・・」
男の瞳がキラキラ輝いて、こっちを見ている。リンシェルンがそっと俺と男の間に入った。
「分かったよ、もう見ないって」
『小さいのが君に懐いているので、何とか連れてきて欲しいのだが。頼めるだろうか』
俺は、周りをウロウロしていたチビの首を軽く銜えた。
口が塞がったので、念話で喋ってみる。新たな技を覚えてしまった。
『俺、村に帰る・・・、あの男。プリシラとアンジェラの?』
おぉ、こんなところに玉池がある。何と言う幸運、リンちゃんちょっと待ってー、リオンの石探すから。
ん、んー原石だから磨いてもらわないとな。麓の村なら何とかなるか。
一人で喋っている・・・。
『あぁ、王族だ。まだ契約竜は居ない、主にリオンという青い竜が面倒を見ているが・・・。気になるのか? 』
『気には障るが・・・、どちらかと言えば避けたい感じだ』
竜力を分けてくれてありがとう、と。俺は軽く頭を下げた。
リンシェルンは軽く首を横にふった。
『帰ったらちゃんと体力を戻そう、先に飛んで』
俺は飛び上がって、先に洞窟を出た。
一体何日ここで過ごしたのだろう、辺りは昼間だったが。うっすらと雪景色になっていて、チラチラと細かい雪が舞っていた。
風が追い風で、あまり体力を使わずに村まで行けそうだ。
チビがキョトンとして辺りを見回している。
初めての、洞窟の外の世界だ。興味深々と言うところか、気持ちは分かる。
首を軽く曲げて、後ろをチラと見ると、赤い竜が追尾してくるのが見えた。
背中には、男が立っている。竜にはああやって乗るのか・・・。
『ソラだよ、空。分かるか? 』
俺は何ともなしにチビに呼びかけた、答えてもらおうとか、喋って欲しいとか思ってはいなかったが・・・。
『ソ、そら、そら』
えっ、俺は思わず口をバカっと開けてチビを一瞬放してしまった。慌てて尻尾を銜える。
内心では焦って、汗ダラダラだ。
後ろの方から、うぉぉぉぉとかヒエェェェェッとか、声が聞こえたような気がしたが・・・。
チビ、喋った? いや念話というやつなんだが、確かに言った。
一番最初の言葉が、空、というのもまぁ竜らしくていいかも知れない。
俺はクタクタだったが、少し楽しくなってきた。
『俺の名前はラギだ、って言っても分かるのかな。恥ずかしいけど、お父さんでもいいぞ。あははは』
恥ずかしい、なんだこの恥ずかしさは。あははは、に力が入らない。
何故かチビが黙ったままなのが、気になったが。麓の村が見えてきてた。
雪景色になった村は、人がほとんど見当たらなかったが。
俺はジジババの家を見つけて、真上で一回旋回して胴体着地のように降り立った。
チビは地面に落ちるギリギリのところで、浅い雪のところに放り投げた。
風の力でここまで来たが、やっぱり体力がかなり落ちていたようだ。
動けない。チビが慌てて近寄ってきた。
家の中からバタバタと人が出てきたのが分かった。
「ラギや!」「ラギ!」「・・・ラギさん!」 ポッポー
何か若干人類以外の物が混じっていたような気がするが・・・。
リンシェルンが真横に降り立った。少し身を低くして男を下ろす。
ガシャン、ガシャンと金属の擦れる音がしたと思うと。赤い髪と瞳の女の子が走りよってきた。
「ユリアン兄様! 」
「詳しい話しは後だ、神山の洞穴で、子竜を一体で育てていた。竜力を酷く消耗しているんだ、プリシラ、お前の服をリンに渡してくれ。アン、お前はそれ以上近づくな、分かってるな・・・」
『人になれるか? 大丈夫だ、私がお前も小さいのも守るから』
リンシェルンは肩にフワリと。プリシラのコートを纏った。
俺は脱力して、人の姿になった。何だか今はこっちの姿の方が違和感がある。
リンシェルンがユリアンの手からコートを乱暴に取り上げた。
そのまま俺に被せられる。
「チビ、お前、俺の真似できるか?」
俺は掠れた声でチビに言うと、小さな風が巻き起こって5才前後の紫色の瞳と髪をした子供が、へにゃりと俺にもたれかかった。
「よし、いい子だ・・・」
俺はチビの頬をそっと撫でた。
思ったより、しっかりしている、もっと赤ちゃんかと思っていたが。
(これなら、・・・・・行ける。)
ばあさんが慌ててチビを毛布で包んで家の中に連れていく。
俺も続いて行こうとしたが、腰が立たない。
リンシェルンが、俺を担いで家の中に入った。
すごい力だ。俺はそのまま部屋に連れて行かれようとしたが、急に心細い、心を振り絞るような泣き声の心話が聞こえた。
『お、・・・おとう、おとう、おとう! 』
『リンシェルン、・・・頼む連れて来てくれ』
俺は寝床に横たえられたが、リンシェルンの腕を掴んで懇願した。
『分かった、すぐに来る』
『おとう! おとう! 』
(竜は、・・・声が出せないから、俺が・・・守らないと。・・・聴かないと・・・)
リンシェルンが毛布に包まったままの、チビを連れて来てベットの上に降ろした。
チビが慌てて、俺の髪の毛を掴んだ。
『ここには誰も入らない、しばらく私が一緒に居るから。いや、春になるまで一緒に居よう、我々は生まれながらの家族で兄妹なんだよ。遠慮する事は何もない、・・・・・ラギ、小さいの』
リンシェルンが急に言葉を詰まらせた、少し瞳が潤んでいるように見える。
『この世に、生まれてきてくれて、ありがとう・・・・。体力が戻ったら、たくさん我らの話をしよう。一緒に空も飛ぼう、アルファーやリオン、シオーネにも春になったら逢わせたい・・・』
そう言って、リンシェルンは両手でグッと手を握り。
さあ、お休みと、微笑んだ。
俺が家を出てから、ほぼ二ヵ月後の帰還だった・・・。
簡単王族紹介
帝国
陛下(国家元首)女性 29才
オウル(海軍大将)男性 27才 契約竜 緑竜 契約式はまだしていない
シャイナ(元帥兼近衛隊長) 26才 契約竜 光竜
ジュリアン(宰相) 25才 契約竜 青竜
ユリアン(外相) ジュリアンと双子
アンジェラ(内部調査兼親衛隊長) 21才
プリシラ(文部科学筆頭) 19才
レオフレイド大公国
イルナス 17才
後で書き足します、ざっとなので細かい修正はあり。




