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君に届くは竜の声  作者: 月野安積
第一章 麓の村
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俺、村へ帰る

「スゴイ、凄いよ、王竜だ・・・」


男の瞳がキラキラ輝いて、こっちを見ている。リンシェルンがそっと俺と男の間に入った。


「分かったよ、もう見ないって」


『小さいのが君に懐いているので、何とか連れてきて欲しいのだが。頼めるだろうか』


俺は、周りをウロウロしていたチビの首を軽く(くわ)えた。

口が塞がったので、念話で喋ってみる。新たな技を覚えてしまった。


『俺、村に帰る・・・、あの(ひと)。プリシラとアンジェラの?』


おぉ、こんなところに玉池がある。何と言う幸運、リンちゃんちょっと待ってー、リオンの石探すから。

ん、んー原石だから磨いてもらわないとな。麓の村なら何とかなるか。


一人で喋っている・・・。


『あぁ、王族だ。まだ契約竜は居ない、主にリオンという青い竜が面倒を見ているが・・・。気になるのか? 』


『気には障るが・・・、どちらかと言えば避けたい感じだ』


竜力を分けてくれてありがとう、と。俺は軽く頭を下げた。

リンシェルンは軽く首を横にふった。


『帰ったらちゃんと体力を戻そう、先に飛んで』


俺は飛び上がって、先に洞窟を出た。

一体何日ここで過ごしたのだろう、辺りは昼間だったが。うっすらと雪景色になっていて、チラチラと細かい雪が舞っていた。

風が追い風で、あまり体力を使わずに村まで行けそうだ。

チビがキョトンとして辺りを見回している。

初めての、洞窟の外の世界だ。興味深々と言うところか、気持ちは分かる。

首を軽く曲げて、後ろをチラと見ると、赤い竜が追尾してくるのが見えた。

背中には、男が立っている。竜にはああやって乗るのか・・・。


『ソラだよ、空。分かるか? 』


俺は何ともなしにチビに呼びかけた、答えてもらおうとか、喋って欲しいとか思ってはいなかったが・・・。


『ソ、そら、そら』


えっ、俺は思わず口をバカっと開けてチビを一瞬放してしまった。慌てて尻尾を銜える。

内心では(あせ)って、汗ダラダラだ。


後ろの方から、うぉぉぉぉとかヒエェェェェッとか、声が聞こえたような気がしたが・・・。


チビ、喋った? いや念話というやつなんだが、確かに言った。

一番最初の言葉が、空、というのもまぁ竜らしくていいかも知れない。

俺はクタクタだったが、少し楽しくなってきた。


『俺の名前はラギだ、って言っても分かるのかな。恥ずかしいけど、お父さんでもいいぞ。あははは』


恥ずかしい、なんだこの恥ずかしさは。あははは、に力が入らない。

何故かチビが黙ったままなのが、気になったが。麓の村が見えてきてた。

雪景色になった村は、人がほとんど見当たらなかったが。

俺はジジババの家を見つけて、真上で一回旋回して胴体着地のように降り立った。

チビは地面に落ちるギリギリのところで、浅い雪のところに放り投げた。


風の力でここまで来たが、やっぱり体力がかなり落ちていたようだ。

動けない。チビが慌てて近寄ってきた。


家の中からバタバタと人が出てきたのが分かった。


「ラギや!」「ラギ!」「・・・ラギさん!」 ポッポー

何か若干人類以外の物が混じっていたような気がするが・・・。


リンシェルンが真横に降り立った。少し身を低くして男を下ろす。

ガシャン、ガシャンと金属の擦れる音がしたと思うと。赤い髪と瞳の女の子が走りよってきた。


「ユリアン兄様! 」


「詳しい話しは後だ、神山の洞穴で、子竜を一体で育てていた。竜力を酷く消耗しているんだ、プリシラ、お前の服をリンに渡してくれ。アン、お前はそれ以上近づくな、分かってるな・・・」


『人になれるか? 大丈夫だ、私がお前も小さいのも守るから』


リンシェルンは肩にフワリと。プリシラのコートを纏った。

俺は脱力して、人の姿になった。何だか今はこっちの姿の方が違和感がある。

リンシェルンがユリアンの手からコートを乱暴に取り上げた。

そのまま俺に被せられる。


「チビ、お前、俺の真似できるか?」


俺は掠れた声でチビに言うと、小さな風が巻き起こって5才前後の紫色の瞳と髪をした子供が、へにゃりと俺にもたれかかった。


「よし、いい子だ・・・」


俺はチビの頬をそっと撫でた。

思ったより、しっかりしている、もっと赤ちゃんかと思っていたが。


(これなら、・・・・・行ける。)


ばあさんが慌ててチビを毛布で包んで家の中に連れていく。

俺も続いて行こうとしたが、腰が立たない。


リンシェルンが、俺を担いで家の中に入った。

すごい力だ。俺はそのまま部屋に連れて行かれようとしたが、急に心細い、心を振り絞るような泣き声の心話が聞こえた。


『お、・・・おとう、おとう、おとう! 』


『リンシェルン、・・・頼む連れて来てくれ』


俺は寝床に横たえられたが、リンシェルンの腕を掴んで懇願した。


『分かった、すぐに来る』


『おとう! おとう! 』


((チビ)は、・・・声が出せないから、俺が・・・守らないと。・・・聴かないと・・・)


リンシェルンが毛布に包まったままの、チビを連れて来てベットの上に降ろした。

チビが慌てて、俺の髪の毛を掴んだ。


『ここには誰も入らない、しばらく私が一緒に居るから。いや、春になるまで一緒に居よう、我々は生まれながらの家族で兄妹なんだよ。遠慮する事は何もない、・・・・・ラギ、小さいの』


リンシェルンが急に言葉を詰まらせた、少し瞳が潤んでいるように見える。


『この世に、生まれてきてくれて、ありがとう・・・・。体力が戻ったら、たくさん我らの話をしよう。一緒に空も飛ぼう、アルファーやリオン、シオーネにも春になったら逢わせたい・・・』


そう言って、リンシェルンは両手でグッと手を握り。

さあ、お休みと、微笑んだ。




俺が家を出てから、ほぼ二ヵ月後の帰還だった・・・。












簡単王族紹介


帝国 

陛下(国家元首)女性 29才

オウル(海軍大将)男性 27才 契約竜 緑竜 契約式はまだしていない

シャイナ(元帥兼近衛隊長) 26才 契約竜 光竜

ジュリアン(宰相) 25才 契約竜 青竜 

ユリアン(外相) ジュリアンと双子

アンジェラ(内部調査兼親衛隊長) 21才

プリシラ(文部科学筆頭) 19才


レオフレイド大公国

イルナス 17才

後で書き足します、ざっとなので細かい修正はあり。

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