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君に届くは竜の声  作者: 月野安積
第一章 麓の村
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俺、キノコ狩りをする

 とりあえず、俺、苔の上でくるっと回ってみた自分のデカさ加減が今一分からん、しかし体は自由に動く。

 洞窟の中は、ほんわり明るく、それは壁や地面からニョキニョキ生えている水晶の柱から発光されているようだ。10歩ほど進んだ先に、小さな水溜りが見えた。

 苔エリアから離れ水溜りに行ってみる、少し離れた所からだったけど、水がとても澄んでいるのが分かったし、腹が減っていて水でも飲もうかと思ったからだ。


 そこで初めて、俺は、俺という生き物の全体を確かめた、すぐにでも水に顔突っ込んで飲みたかったけど、水鏡に映った俺は、やっぱり神話やおとぎ話に出てくる竜のようで、それ以外に何でもなく、ただ少しほっとしたのは、それほど気持ち悪くはなく、全身は黒いキラキラ光る鱗で覆われていて、瞳も真っ黒でよく見ると細かい星のような光の粒が煌いていた。


手は使えなかったから、そっと水面に鼻先を入れてたっぷり水を飲むと、腹が膨れたからか、猛烈に眠気が襲ってきた。

 

あぁ、眠ってしまおう、そして起きたらきっと元に戻ってる。


俺は苔エリアにモソモソと帰り、丸くなってそのまま眠ったのだった……。



 ずっと天気が続いた後に降った雨の匂いって、分かるかな、土の上、青々とした木々の中、草っ原、田んぼや畑、チビの頃は田舎に住んでいて、雨が止んだら兄妹で走り回った、その時に嗅いだ匂いが眠っている間ずっとしてて……。

 どれくらい眠ったろうか、高い天上の空の穴から一直線にこぼれ落ちる光が、自分の頭にすっぽりあたっていたのが眩しくて、すっと目が覚めた。




「マジかよ」


 俺はどうやら元には戻らなかったようだ、横になったまま、むんと首を上にあげる。


 大混乱してて、大暴れしたかったのだが、この様な冷めた言葉しか出てこなかった。

マジかよと、人語が喋れていた事にちっとも気がつかず。

 後々これが本当はものすごい貴重な事で、王族がこぞって手に入れようと俺を探し、捕まえ、支配下に置きたがる要因の一つになるとは、まだこの時は露ほど思っちゃいなかった。


 外に出よう、ここに居てもラチが空かない、外へ飛べるかな。俺はうんと首を空へ向け天を睨み、羽を広げ、バサっと一回羽ばたいた。

 きっとまだ夢の中なんだから、きっと願っておもえば空だってとべるはずさ……。とか、まるでどこかの歌の歌詞のようのセリフが頭をよぎったが、以外にあっさりとそれはもう見事に俺の体はふわりと上昇した……。

 天に向かって2、3回羽ばたき、くるっと一回転して外へ出た時俺はやっと、この世界を見た。


 太陽が出ていて眩しかったけれど、その世界は広く雄大で美しく、どことなく懐かしく、風は優しく俺をふわっと持ち上げた。


 待ってたよ、待ってたよ……と何かに抱きしめられたようで、ふいに嬉しいとも、悲しいとも何とも言えない感情に襲われ、瞳に涙が溢れて目前が霞んだ。


 あぁ、俺泣けるんだな、だったら大丈夫だ、何とかやっていくさ。


 しばらく上空を旋回して地上を眺めてから、俺は森の中の少し拓けた場所に降り立った。かっこよく降りれば良かったんだが、下が濡れていたようで、ズルっとずっこけてドシンと上向けに転んでしまった。


「腹減った」


 転んだまんま、誰もいないけどつぶやいてみる。


 そこでやっと色々と気がつく、俺、声が変わってる。低い優しい声になっている、この姿になったからなのかどうなのか、それと、聴覚、視覚、臭覚などがかなり研ぎ澄まされたようだ。季節は秋の様だ、山や森が赤や黄色に燃え空も秋特有の澄んだ青空が広がっている。


 視界には無かったのだが、川の音がやけに大きく聞こえた。


 クンクンと辺りを嗅ぎ、俺はカッと目を見開いた。これは!この香りはアレだ!秋の味覚の大王


 マツタケ!!! 俺は素早く起き上がり、森の中に身をと投じた。


「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 神様ありがとう!! 俺にマツタケをくれて!!


 お前煮るとか、焼くとかしろよという突っ込みは後から聞く、俺は大量に生えてるソレを頭を突っ込んでがむしゃらに食べた。


 これもまた、後々の話になるのだが、この世界の人たちはマツタケを食べる習慣が無く、家畜のエサにするという事だった、何と言う事か、一本日本産だといくらすると思っているのかと、こっちの人たちに訴えても、そんなに好きなら好きなだけ食えばと言われてお終いなのだった……。


 しかし、竜の体と言うのは非常に燃費が悪い、いくら食べても食べてもお腹が一杯にならず、切なさMAXになりかけた頃、俺は初めて、この世界の人の声を遠くに聞いたのだった……。





俺、やっと第一村人発見です、

ちゃんと人型になりますよ、でもちょっと色々と問題が発生です。

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